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Jealous


リンク「……てなかんじでいきたいと思っているんですけど…って聞いてます?」

スネーク「…ん?あ、あぁ、」

リンク「んもぉー聞いてませんでしたね!?」

スネーク「すまん」

ここは城下町のとある喫茶店。
イロコィ・プリスキンに変装して城下町に煙草を買いに来たスネークは、運悪くリンクとばったり出会ってしまい、こうして喫茶店でリンクの話を聞いてやるハメになってしまった。
無論、リンクはプリスキンの正体を知らない。

リンク「だから、ゼルダ姫とのデートの計画ですよ!まずはスマブラ公園でお花を見ながら歩いてまわって、この喫茶店で軽く昼食をとって、昼からは姫のお買い物に付き合って差し上げるんです。夜は展望台で静かに夜空を眺めるんです、素敵でしょ?」

スネーク「ん、なかなかいいと思うぞ」

リンク「そ、それで、プリスキンさんから何かアドバイスとか聞けたらなぁと思いまして…」

スネーク「知らんね、自分で考えるんだな」

リンク「そんなぁ」

涙目なリンクに溜め息をつきながら、煙草に火をつける。

スネーク「…プレゼント」

リンク「!」

スネーク「展望台で夜空を眺めるんだろう。予め何か贈り物を準備しておいて、最後の最後にそれを渡しながら自分の想いを伝える、とか」

リンク「おぉぉ…!そうか、勉強になります!」

スネーク「贈り物くらいは自分で考えろよ、彼女のことを一番よく知っているのは俺ではなくお前だからな」

リンク「は、はい!ありがとうございます!」

スネーク「頑張れよ、若いの」

メモを必死にとりながらお辞儀するリンクに軽く手を振りながら、スネークは今がチャンスと喫茶店を出た。

スネーク(やれやれ、煙草を買ったらすぐ帰るつもりだったんだがな)

煙を吐きながら、リンクとの会話を思い出す。

スネーク「……デート、か…」


***

さて、スマブラ城に帰宅したスネークはすぐさま変装を解き、自室に戻ってスマブラ界のパンフレットを片っ端から漁っていった。
スマブラに参加してからしばらく経ったが、自分の行動範囲はせいぜい城と城下町一帯程度。この世界にはまだまだ自分の知らない素晴らしい場所が沢山あるハズだ。

スネーク(アイツなら、毎日走り回っているから何でも知ってそうだな)

だが、ソイツに尋ねるわけにはいかない。
リンクのように、偶には自分で計画をたてて自分から誘わなければ意味がないのだ。

パンフレットに書かれた良さそうな場所に赤ペンで印をつけ、別の紙に幾つかのルートを書き込み、書き直し、また別のパターンを考え、再び書き直し、書けなくなれば紙をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に放り込み、また新しい紙に一から書き込み、また書き直し…

気づけばもう三時間位経っていた。
灰皿は何度も沈めた煙草の吸殻でいっぱいになっていて、ゴミ箱にも紙の山がこんもりと出来上がっていた。

スネーク「何をやっているんだ俺は…」

自分が恥ずかしくなってくる。
こんなことならばもう少しリンクの話を真面目に聞いておくべきだった。

新しく煙草に火をつけ、休憩しようと自室を出た。
アイツは何をしているのだろうか。

隣の部屋のドアをノックしてみるが、反応はない。
宛もなくとりあえずリビングに向かってみる。

ソニック「…や、……ら、…いうのは…」

声が聞こえてくる。
スネークの足が無意識に速くなった。


スネーク「ハリネズミ……」

マルス「ほらほら、似合うじゃない!」

リビングに入ったスネークは足を止めた。

ソニック「は、恥ずかしいって…こういうのは…」

マルス「そんなことないって!ねぇ?」

フォックス「そうだよ、めちゃくちゃ似合ってる」

ルカリオ「しゃ、写真を撮ってもいいだろうか?保存用と部屋に飾る用とアーロン様に送る用に」

ソニック「やめてくれ!!!!」

ソニックはメイド服を着ていた。
恐らくタブーのお手製。

フォックス「んじゃ、罰ゲームとして俺達に一回ずつ奉仕してくれよな」

ソニック「おいおいマジでやるのかよ……あ、おっさん!!」

スネークを見つけたソニックが顔を真っ赤に変えた。
スネークは、普段ならこういうソニックを見るとすぐさま携帯を取り出し写真を撮りまくるハズなのだが、今日ばかりはそんなことはなかった。
ただ黙ってじっとソニックとその周りのフォックス達を眺めているだけだった。

フォックス「残念だったなスネーク、もうちょっと来るのが早かったらお前もソニックのご奉仕受けられたのによ」

マルス「いいじゃない、スネークも参加させてあげても」

フォックス「でもスネークはゲームしてないじゃないか」

ソニック「あ、あの、これは…」

ソニックがスネークに歩み寄ろうとした時、履き慣れていないヒールに足をとられ、その場に転びそうになった。

ルカリオ「危ない!」

咄嗟にルカリオがソニックを抱きしめる。

ソニック「あ…」

マルス「あらま…」

フォックス「おぉ」

ルカリオ「大丈夫か?」

ソニック「うん、ありがとう」

ルカリオ「よかった」

マルスが恐る恐るスネークを見ると、スネークはやはり表情を変えていない。ただこちらをじっと見ている。
だがよくよく見てみると、眉間や額の辺りにうっすらと怒筋が確認出来た。

スネークは咥えていた煙草を掴み、煙をゆっくり吐くと、踵を返してリビングを出ていった。

ソニック「スネーク…?」

いつもと違うスネークの様子にソニックが首を傾げる。

マルス「えらいこっちゃ…えらいこっちゃ…!!」

フォックス「どうしたんだよマルス、そんなに慌てて」

マルス「僕らはスネークを怒らせちゃったんだよ!!!!」

フォックス「うぇっ、アイツ怒ってた?」

ルカリオ「何か怒らせるようなこと、したか…?」

マルス「してたよ!!自覚ないかもしれないけどルカリオもしてたよ!!」

ルカリオ「そうなのか!?」

ソニック「……悪い、オレちょっと見てくる」

ソニックはメイド服を着たままスネークを追いかけた。


***

スネークの自室は開いていた。

ソニック「おーい、おっさん…」

ソニックが入ってみると、スネークはソニックを背にベッドに横になっていた。
まるで拗ねている子どものようだ。

ソニックは辺りを見渡した。
床にはぐしゃぐしゃにされたスマブラ界のパンフレットが散らばっている。
テーブルには赤ペンやらボールペンやらが出されたままで、ゴミ箱にはくしゃくしゃに丸められた紙で出来た山。
そして灰皿には沢山の煙草の吸殻。

ソニック(なんだよこの状況…)

ソニックは訳がわからない。

ソニック「…ほ、ほら、こんなに煙草吸いやがって…身体に悪いz」

スネーク「俺の勝手だ口出ししないでもらいたいね」

早口で返された。

ソニック「なんだよ、オレはおっさんの為を思って…」

スネーク「知ってるか、お前の為だお前の為だと言っているやつほど自分のことしか考えていない」

ソニック「は」

スネーク「子どもの為だと勉強を強要している親ほど子どもの頃の自分を子どもに重ねているものだ。あの頃もっと勉強しておけばよかった、だから子どもには今のうちに勉強させておこうとかな。それに子どもがちゃんと勉強して素晴らしい人生を送らないと後々苦しむのは自分達親だと思っている」

ソニック「おっさ、」

スネーク「煙草だって臭い思いをしたり癌になりやすいのは副流煙を吸う周りの奴らだ。だからお前の為だと煙草をやめさせようとする奴らは本当は煙草を吸う奴のことなんかどうでもいいのさ、ただ自分達が癌になりたくないだけだ」

ソニック「…どうしたんだよおっさん、今日なんかおかしいぜ…」

明らかにいつもと違うスネークに、ソニックは困惑する。

スネーク「…脱げよ」

ソニック「ぇ」

スネーク「脱げよそれ、他人に奉仕するメイドのお前なんか見たくない」

ソニック「ぁっ」

スネーク「それか今すぐ出ていけ、何処かの王子や遊撃隊やポケモンがお前の奉仕をお待ちだぞ」

そこで、ソニックはハッとした。

ソニック「…おっさん、もしかして嫉妬してる?」

スネーク「……………………………………ゲボォ」

先程まで早口で喋っていたスネークが急に黙り込んだ。
吐血の音も聞こえた。

都合が悪くなると黙り込むスネークの癖も、図星をつかれると誰でも吐血するというこの世界の設定も、ソニックは承知済みだった。

ソニック「もしかして、オレがマルス達にメイド服着せられたり、楽しそうにしてたり、ルカリオに助けられたりしてたから、嫉妬しちゃったのか?」

スネーク「………………………………グフッ」

ソニックが二ヤァと笑った。
ちょっとだけ嬉しかった。

ソニック「な、なんだよぉ~それならそうと言ってくれれば…そっか~おっさんも嫉妬するんだなぁ~」

スネークが少しだけもぞもぞと動いた。
耳が赤くなっている。

ソニック「ババ抜きやっててさ、負けた人がタブーお手製のメイド服着てみんなに一回ずつ奉仕するっていう罰ゲームをするって約束だったんだ。オレが負けたのも偶然だし、ルカリオがオレを助けてくれたのも、ルカリオが優しくてオレの友達だからっていうだけだよ」

スネーク「……」

ソニック「ったく、手のかかる奴だなぁ」

ソニックはベッドに近づくと、

ソニック「何が御所望ですか?ご主人様」

スネークに囁いた。

スネークはやっと気が済んだのか、上半身を起こすと、ソニックを抱き上げた。

スネーク「疲れた、癒しが欲しい」

そう言ってソニックを抱きしめ、トゲを撫で始めた。

ソニック「はいはい。…疲れたって、おっさん今日乱闘入ってたっけ?」

スネーク「いや、デートの計画を…」

そこまで言って口を噤んだ。
ソニックはきょとんとしていたが、部屋に散らかったパンフレットやらゴミ箱やらを思い出し、顔を真っ赤にした。

ソニック「えっ、おっさん、ウソ、」

スネーク「………」

ソニック「デートって、誰と!?」

スネーク「…お前なぁ…」

溜め息をついて口付けた。

スネーク「お前とに決まってるだろう」





後日、

ピカチュウ「マルス~、ソニック知らない?」

マルス「あぁ、ソニックなら一日いないよ」

ピカチュウ「えぇ~?つまんない」

フォックス「そういやスネークもいないな。どうしたんだ?」

マルス「さぁ?」

マルスがくすくすと笑う。
今日は絶好のデート日和だ。
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