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さよならは言わない


マスター「皆に話がある」

ある日、スマメンをリビングに集めたマスターハンドは、真剣に話し始めた。

マスター「私とクレイジーで、新作の『大乱闘スマッシュブラザーズfor 3DS・WiiU』の本格的な準備にこれから取りかかっていたきたいと思う。だから、『大乱闘スマッシュブラザーズX』は、明後日をもっておひらきにする」

マリオ「・・・そうか・・・」

リュカ「それって・・・どういうことですか?」

リンク「俺達ファイターは自分達の世界に帰って、もとの暮らしに戻るってこと。そして、次に新作スマブラの招待状が送られてきた者だけが、再びこのスマブラ界にやって来ることが出来る。・・・ってわけさ」

カービィ「正式に招待状が送られてこなかった人はリストラなんだよね~」

ネス「ちょっと待ってよ、僕まだ参戦決まってないんだけど!?」

プリン「プリンもプリ!!」

ドンキー「お前達は大丈夫だろ」

マスター「ああ、今の段階で参戦が決まっていない者すべてがリストラとは限らない。正式に招待状が来た者が参戦者だ。今参戦が決まっている者にも、後程ちゃんと招待状を送るから」

ファルコ「俺・・・まだ参戦決まってない」

ウルフ「俺もだ」

フォックス「お前ら、ちゃんと郵便受けチェックしてろよ?」

ナナ「私達・・・大丈夫かしら・・・」

ポポ「うーん・・・」

マスター「突然の知らせで申し訳ない。お前達には明後日までに荷物をまとめておいてほしい。それから、この中からリストラの者も出てくるだろう。明後日までに皆といい思い出をつくっておけよ。後悔のないように」

いつになく大真面目に話すマスターハンド。
俺はただ黙って聞いていた。

ピカチュウ「ソニックはもう続投決まってるよね!」

ソニック「あぁ」

ピカチュウ「しばらくのお別れは寂しいけど、また会えるもんね!僕嬉しい!」

既に続投が決まっているソニックは、ピカチュウの頭を撫でてやっている。
このピカチュウもソニックも、初めて出逢った時は驚いたものだ。
馴れ、というのは恐ろしい。
ちなみに、俺の続投の報告は未だにない。

スネーク「・・・ハリネズミ」

ソニック「ん?なんだいおっさん」

スネーク「明日、俺に付き合え」

ソニック「・・・え!?」

スネーク「出かけるぞ」

誘ってやれば、ソニックは顔を赤らめながら俯いて「OK」と呟いた。


きっとこれが、最後のデートだ。


***


次の日。


ソニック「・・・」

スネーク「・・・どうした」

ソニック「いや、・・・プリスキンに変装してないからさ」

スネーク「別に。きまぐれだ」

最後くらい、ソリッド・スネークとしてコイツとデートしたかった。

ソニックはミニスカートの下に黒いスパッツを履いている。
彼女なりのオシャレなのだろうか。
普段は乱闘のためか、ジャージ姿ばかりだったな。

スネーク「なかなか似合ってるじゃないか」

ソニック「そ、そうか?サンキュー」

二人で城下町を歩く。
周りの人々が俺達を見てはざわざわと騒いでいる。
今日はそんなこと気にしない。

ソニック「ここにいる人達ってさ、みんなマスターハンドが創り出したエキストラなんだよな」

スネーク「そうだな」

ソニック「やっぱりすげぇよ、スマブラは」

スネーク「そうだな」

ソニック「・・・おっさん?」

スネーク「ハリネズミ、何か欲しい物はあるか」

ソニック「へ?」

スネーク「言ってみろ。プレゼントしてやる」

お店を歩きながら見てまわる。
ソニックは何が欲しいのだろう。
チリドックだろうか、新しい靴だろうか、アクセサリーだろうか。

ソニック「なんだよおっさん、ヤケに気前いいじゃん」

スネーク「きまぐれだ」

ソニック「うーん・・・でもなぁ、これといって・・・」

スネーク「何でもいい。言ってみろ」

ソニック「・・・オレは・・・・・・おっさんが一緒なら、それでいいよ」

ソニックが頬を赤く染めた。
可愛い。でも、

スネーク「・・・それでは駄目だ」

無理なんだ。

ソニック「Why?」

スネーク「早く言え。俺の気が変わる前に」

ソニック「・・・オレはお前から、沢山のものを貰ったよ。今はそれで十分幸せなんだ。これからもお前と一緒にいることが、オレの望みなんだよ」

スネーク「・・・」

ソニック「だから、今は何もいらないんだ。おっさんが一緒にいてくれるから」

スネーク「・・・そうか」

照れ笑いを浮かべるソニックに、思わず微笑んでしまった。
こんなはずではなかったのだがな。
最後くらいお前の喜ぶ品を贈って、嬉しそうに笑うお前を見たかった。



スネーク「楽しいか?ハリネズミ」

ソニック「楽しいぜ、すっごく!!」

喫茶店でお茶して、ゲームセンターで遊んで、誰もいない公園で子どものように走りまわって。
ソニックは笑顔だった。







ソニック「なあ、おっさん」

日が暮れて、二人で城に戻る帰り道、ソニックが口を開いた。
手を繋いで並んで歩く二つの影は、もう少し近づけばくっついて一つになりそうだ。

ソニック「自分の世界に戻ったら、ちゃんと郵便受け毎日チェックしろよ?」

フォックスと同じことを言いだした。

スネーク「・・・・・・あぁ」

ソニック「新しいスマブラではさ、ロックマンやパックマンも参戦するんだ!楽しみだよな!」

スネーク「そうだな」

ソニック「・・・おっさん」

スネーク「なんだ、」

ソニック「オレ、スマブラに参戦出来て本当によかった。・・・スネークに、逢えたから」

スネーク「・・・奇遇だな。俺もだ」

瞬間、ソニックは繋いでいた手を解くと、俺に抱きついた。
ゆっくりしゃがんで抱きしめ返してやる。
小さな身体が震えていた。

ソニック「・・・さよならは、言わないからな・・・」

スネーク「・・・・・・あぁ」



二つの影は一つになっていた。


***

次の日。
長い間共に過ごしてきた仲間達は次々と別れを惜しみながら、それぞれの世界へ帰っていく。

マリオ「みんな、元気でな!」

ピカチュウ「また会おうね、ソニック!」

ソニック「マリオもピカチュウも元気でなー!」

俺はソニックのもとへ歩み寄った。

スネーク「ハリネズミ」

手渡したのは、いつも俺が使用していた無限バンダナ。

ソニック「こ、これ・・・」

スネーク「ちゃんと綺麗に洗濯しているから心配するな」

ソニック「いや、そういう問題じゃなくて・・・」

スネーク「同じ物ならいくらでもあるから大丈夫だ。受け取ってくれ」

ソニックはバンダナを受け取ると、胸元でぎゅっと握りしめた。

スネーク「俺達はずっと一緒だ」

どんなに離れていても、
どんなに遠い世界にいても、
俺はお前のそばにいる。

ソニック「うん・・・・・・うん、」

何度も何度も頷いて、ソニックは顔を腕でごしごし拭った。
そうして嬉しそうに笑ってみせた。

ソニック「おっさん、煙草の吸い過ぎには気をつけろよな!」

マスターハンドにすすめられ、ソニックはワープホールに乗った。
ソニックの身体が徐々に薄れていく。

ソニック「またな!!」

スネーク「ああ、元気でな」


・・・さよならだ。
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