ドルあんlog
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「メリークリスマス! あんずちゃん!」
そう言って、日和先輩はクリスマスがモチーフだというジャケット衣装で私の家にやって来た。
──赤と白のサンタ衣装で来るのかと思ってちょっぴりドキドキしていた、というのは内緒にして。
あまりにも似合いすぎた着こなしにぼーっとしてしまっている私に、日和先輩はどう?似合ってる?と訊いてくる。
「はい。とっても、似合っています」
「ううん、違うね。その言い方では50点だね?」
「……はい?」
50点。可も不可も無い点数。だけど。
何か変な言い方をしたのだろうか。私は口をへの字にして、首を傾げる。
すると日和先輩はその褒め方も嬉しいんだけど、と言うと、そっと耳許に寄り添い。
「格好いいって言ってくれないと、来た意味が無いね?」
「え……!?」
耳許に届く先輩の吐息と甘い声が、私の心を一気に融かしていく。
そんな事も露と知らず、日和先輩はほら、と色を帯びた声で囁く。
「あ、えと。その衣装、すごく格好いいです……」
「衣装が格好いいの? それは悪い日和」
本当はちゃんと分かっているのに、意地悪をしてくる日和先輩。
私はもう恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「違います……その衣装を着た日和先輩が!」
「が、何かな?」
「~~~~!!」
分かっているくせに、分かっていない訳がないくせに!
私の沸点は臨界点を超えそうになっている。このまま、融けて無くなってしまいたい……。
「ふふ。あんずちゃんは何でも鵜呑みにしちゃうから可愛いね」
「だ、誰のせいだと思っているんですか……」
拗ねる私をふわり、と日和先輩が優しく抱き締める。
「分かっているよ、あんずちゃん。でも、答えはその可愛らしい口から聞きたいね?」
黙り込む私を日和先輩は覗き込む。そして、そっと私の髪を梳いてくれる。
人に触ってもらうのは好きなのだけれど、先輩に触ってもらうのはその何十倍も好き。
こういった何気ないスキンシップを取ってくれるのが心から嬉しい。
「ん。あんずちゃん、シャンプー変えた?」
「あ、クリスマス限定の香りがするっていうのを試してみたんです」
「ふぅん。……この匂い、好きかも」
その時の微笑みがすごく華やかで、色気のあるものだった。私はそれにまたしてもときめいてしまう。
「さて。準備は出来たかな」
静かに日和先輩が言う。私は大きく深呼吸をして、意を決する。
「先輩はいつでも格好良いです、けど。今日は特別、格好良く見えます」
「ふふ、よく出来ました」
言って、日和先輩は私に優しくキスをしてくれる。私もそっと目を閉じて、身を任せる。
クリスマス。サンタがプレゼントを届けにやって来る頃。私は甘い愛情に融かされていた。