小話



 ◇◇◇


雨の雫が、葉の先からこぼれ落ちた。

「雨、上がったみたいだな」

リオは事務所の窓を覗き込むと、嬉しそうに言った。

「……雨、お嫌いですか?」

ローレンは、何気ない疑問を投げかけてみる。
しかしリオは首を横に振った。

「そうじゃなくて。雨上がりの空が好きなんだよ、俺」
「雨上がり……」
「ちょうど雲の隙間から光が差し込んで、すっと雨が上がるのがいいなって」

そう語るリオの横顔を、ローレンは静かに見つめていた。
何だか楽しそうに話していてかわいいな、なんて。
年上の男性に対して抱いて良い感情かはわからないけど、ローレンはちょっぴりそんな気持ちになった。
ましてや密やかに慕っているリオになら、なおさら。

「ローレンは、晴れている方が好きか?」
「私は……そう、ですね」

天気に好きや嫌いといったものを向けることがなかったので、この質問には困った。
晴れた日の方が気分がいいのは確かだけど、雨や曇りの日でも感傷に浸る日もある。
だから、天気に対して何も感じてはいなかったのだけど。

「リオさんが眺めていて幸せになれるなら、私はどんな空でも」

これって告白と間違われないだろうかと心配になりながらも、ローレンは言った。
リオは豆鉄砲を食らったような表情をするが、すぐに微笑んで。

「ローレンは気遣い屋さんだな」

言って、慣れた手つきで頭をなでられる。
気遣いじゃなくて、本音なんだけど──な。
ローレンはどこか鈍感なリオに残念そうにするが、それもまた彼の魅力のひとつだ。

リオは窓を開けて、流れくる雨上がりの匂いを堪能する。

「うん、この澄んだ感じもいいんだ」

洒落た内装の事務所の一室で、そんな会話をする二人。
今は団長のアルヴィンも、もう一人の副団長のリンファもいない。
つまりはこの静かな二人の時間を、十分に満喫できる。
ローレンは、それが何よりも嬉しかった。
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