デディケート・デート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
Episode.4 デディケート・デート(前編)
「おはよう、ランス。今日も一段と可愛らしいね」
「……」
爽やかな笑顔でパンサーは挨拶をしてきた。
しかしランスは返事をせず、黙って彼を凝視した。
正直、彼に関してはどうやって接するべきか、今も分からない。
割と常識人なのだろうけど、やっぱり気障な科白は余計だし。
挨拶も普通にすれば良いのだろうけど、それも少し嫌だ。
「どうしんたんだい? 俺の顔をまじまじ見て……」
「君って、何なの?」
「え?」
唐突な、しかも挨拶を無視してのこの問いには、流石のパンサーも目が点になる。後先を考えずに物を言う所は、ランスの悪い癖だ。
「実力があるのは認めるけど、君自身の事はよく分からない」
「おや? それは俺に興味を持ってくれたって事?」
パンサーは嬉しそうに顔を綻ばす。
「違う」
好きだから興味を持ったんじゃなく、気に食わないからこそ、"敵を知り己を知れば百戦危うからず”、というヤツだ。昔レオンが貸してくれた難しい書物に載っていた。敵だからこそ知るべきだ、と。
「なんだ、それは残念」
パンサーは少し考えて、言葉を続ける。
「じゃあ、デートでもする?」
「は?」
「君は疑問に思っている俺の事を知る事が出来る。そして俺も気になる君の事を知れる。お互いに利益はあるだろう?」
確実にデートがしたいのはパンサーだけだ。
しかし、言っている意味としては納得出来なくもない。
良くも悪くも、彼の行動を観察する事が出来る。これは絶好の好機。
でも…………。
初デートを彼に捧げるのはとても気が引けるな。
実はこのランス、幼少期から異性に囲まれた環境であるにも関わらず、恋愛に無縁だった。今日までの約17年間、ずっと。
彼女にとって恋愛は、雑誌で読む『夢物語』くらいに思っている。今の自分には縁遠い話で、よく分からない。
だからこそ軽々しくデートしよう、などというパンサーの存在は新鮮であると同時に違和感でもあった。
「どうする?」
パンサーが訊ねる。
「……ちょっと、考えさせて」
辛うじて、踏み止まった。
言って、彼女はそそくさと共有ルームを退出する。
──やっぱり、初デートは納得出来る相手じゃないと。
そう考えると、思い浮かぶ相手は二人。ウルフとレオンだ。
ランスにとって二人は付き合いも長く、信頼も寄せている。
故に、初デートの相手にはぴったりだと思っていた。
問題は、彼らがちゃんと”デート”をしてくれるかどうか。
何故なら二人共、結構年が離れているせいでランスの事を我が子のようにしか見てくれないのだ。
「真面目に言っても、また冗談と思われるだろうなぁ」
そうは言ってもこのままパンサーと初デート、という訳にも行かない。
初デートは納得する相手と、というのは今までずっと決めていた事だし、そう易々と曲げたくはない。
さて、どうしたものか。