独占欲
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Short Story.03 独占欲
「レオンと一緒にお出掛け出来るなんて。こんな嬉しい事、滅多にないよ」
ランスはご機嫌だった。
何故なら、大好きなレオンと二人で買い物に来ているのだから。
二人きりで。大事な事だから、二回言っておく。
「そんなに喜ぶものなのか?」
「うん。とっても!」
弾けんばかりの彼女の笑顔に、レオンはほんの少し顔を綻ばせる。
「そこまで喜んでくれるのなら、私もわざわざ外へ赴いた甲斐があったというものだ」
「えへへ」
「さぁ、何が欲しい? 私が買ってやる」
「本当? じゃあ僕は──あれが欲しい、な」
「ふむ」
レオンが会計を済ませてくれている間、ランスは外で待つ事にした。
寒空の下。少し手足が震えるけれど、大好きな彼を待つこの時間さえもとても心地がいい。
──ずっと、こんな時間が続けばいいのに。
「おねーさん、こんにちは?」
「……?」
ふと顔を上げると、見知らぬ男性がランスの視界に入ってきた。
もの凄い美形だ。見た感じ、物腰が柔らかそう。
「今、お一人ですか?」
「いや……連れを待ってますけど」
「そうですか。いや、あのですね? もしお暇であれば、ご一緒にお茶でもどうかなぁって」
「あ。それは、無理ですね」
そこはきっぱりと断った。
ランスは中性的な外見から、話し掛けられる事も少なくない。
そして、その対策としてウルフから「そういうのに絡まれた時はきっぱりと断れ」と言われていたのだ。
「そう、ですよね。もし良かったら、と思ったんですけど。あなたみたいに綺麗な方とゆっくりお話出来たらなぁって」
言いながら、男性はランスの手を取っては両手で包み込み、微笑んだ。
「あの」
何だろう。柔和な人のナンパはこうなのだろうか?
よく分からないが、どうやら今自分はナンパに遭っているらしい。
何故ナンパの対象に自分を選んだのか、そこは疑問に思うけど。
「やっぱり、ダメですか?」
少し上目遣いで、男性は問い掛けてくる。
あぁ、これはあれだ。
ダメだったら引きますよ感を出しながらも、実際は半ば強引に連れてかれてしまうヤツ。
きっと自分の外見の良さに気付いている。厄介なのに引っ掛かったかも知れない。
そう思った時だった。
「貴様、其処で何をしている」
「!」
レオンが店から出てきた。
なんと丁度良いタイミングなんだろう。
彼は男性に握られているランスの手に目を凝らし、それから男性を見る。
「彼女に何か御用かな?」
言葉、そして声音こそは丁寧だが、男性を見ているその目は鋭かった。
一般人だから手加減はしているものの、確実に敵視している。
「あ、え、えっと……すみませんでした!」
それに怯えたのか、一目散に去って行く男性。
「行っちゃった」
流石はレオン。目だけで人を脅かすのはお手の物だ。
男性の去って行った方向を見ながら、ランスは呟いた。
「……」
「ありがとう、レオン」
礼を述べる。しかし、レオンは黙ったまま動かない。
「レオン?」
「──行くぞ」
「え?」
ぐっと手首を掴まれ、そのまま連行されるがままになる。
「ちょ、レオン? 何処へ行くの?」
一体、何処へ行くのだろう。その疑問にレオンは答えなかった。