第一話
夢小説設定
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Episode.1
「ふわあ~ぁ」
大きな欠伸が思わず出てしまった。
というのも、最近は大きな出来事がない。
テレビを付ければ、芸能人の誰かが不倫しただとか政治家が新しい党を結成しただとか、平和ボケした星の小さな出来事ばかり。
一昔前は、このライラットの宇宙も大きな戦争の真っ只中だったというのに。
「平和だねぇ、今は」
このサルガッソーのコロニーは『ならず者の溜まり場』なんて呼ばれていて、堅気の皆さんは寄り付こうとさえ思わない所だけど、ランスにとっては割と居心地の良い場所である。
何しろ保護者がそのならず者達を従わせてる縄張りの主なのだから、彼女に手を出そうものならばどうなるか、想像しただけでも恐ろしい。
だから、誰も邪魔をして来る訳がないのだ。
「──い、おいっ!」
低く怒鳴る声が耳に届いた。
音楽の世界に浸りながら思考を巡らせていたはずが、誰かにイヤホンが外されたのだ。
「……リーダー。僕の至福の一時の邪魔しないでよ?」
くるりと振り向いて『リーダー』と彼女が呼んだのは、ならず者で構成された雇われ遊撃隊・スターウルフのリーダー、ウルフ・オドネルである。
どうやら、暇を持て余しているランスを捜していたらしい。
「こんな所で毎日シャカシャカシャカシャカ、マッ○のポテトかてめぇは」
「ちょっと情報が古いね? シャ○シャ○ポテト」
「るせぇ。そんな事より、暇だからってずっと此処で引きこもってんじゃねぇよ」
「だって、暇でしょ?」
「暇は作るもんじゃねぇ、潰すモンだ」
「えぇ~」
不服そうに頬を膨らますランス。
しかしそんな事はお構いなしに、ウルフは彼女の首根っこをがっちりと掴む。
鼻と鼻が触れそうな位の距離まで顔を近付けるとニタリと笑って言う。
「丁度これから射撃訓練の時間だ。新人相手の教官くらい、長く此処に居るお前なら余裕だろう?」
「新人の子守するくらいなら、この部屋で雑誌読んでる方がよっぽど楽しいね」
「……面白い奴が一人居る。そいつをお前の目で見定めてみろ」
「面白い奴って?」
ランスが訝しげに訊ねる。
ウルフが人に対して面白いと言うのは、正直珍しい。
少しは興味がある。
「口は無駄に達者だが、腕は立つ」
「お喋りな奴は嫌い」
「レオンとの連絡を許可してやる、と言ったら?」
その言葉を聞いた途端、ランスはぴたりと静止した。
レオンとは、スターウルフに所属するレオン・ポワルスキーの事だ。
彼はこのライラットで有名な、冷酷無比の殺し屋である。
一見、口数の少ないクールな性格だが、気心の知れた仲間には意外と世話焼きな所がある。
そういう面に惹かれてなのか、ランスは非常に彼に懐いていた。
そんな彼は今、別の惑星で個人に依頼された仕事を遂行している。
彼女を自由にさせているとすぐにレオンに連絡を取ろうとする為、幼少の頃から連絡をする時はウルフを通さなければならないようにしていたのだった。
その許可が下りる。まさにランスにとっては吉報であった。
「し、仕方ないなあ? まぁ、レオンと連絡が出来るなら? 背に腹は変えられないし? やってあげてもいいよ?」
「……チョロいな、お前」
「レ、レオンと離れてからもう1ヶ月だよ! その間、一瞬さえも声を聞けてない僕のこの気持ち、リーダーなら理解出来るでしょう?!」
「まぁ、予定通りに仕事が進んでいれば、明日には帰るっつってたから、連絡なんてしなくても──」
「ダメ。今日に声が聞きたい。何なら今からでも」
さっきのだらけっぷりは何処へやら。
すっかりお花を咲かせている彼女にウルフは言う。
「お前、本当レオンには盲目だな」
「一応、リーダーにも懐いてるつもりだけど」
「どこがだ、この反抗期」
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