11.道連れ*
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気がつくと、舞美は電車に揺られていた。
真っ直ぐ顔を向けていると、対面の窓の外で景色がゆっくりと通り過ぎて行く。
舞美は鞄をぎゅっと握った。
手荷物は、先ほど家から持ち出してきた最低限必要な物だけ。すぐにこの電車に乗ることを決めたから、初日にして、既に自宅とは遠く離れた地に向かい始めている。
舞美は隣に座っているアカギに目を向ける。
意外なことに、彼は車内で目を瞑っていた。
(大金を抱えてるって言うのに……心地よさそうに寝てる)
どうせ、今所持している金もアカギがパーっと夜遊びに使ってしまうのだろうな。
が、それにしても本当に美形だ。
うっとり見つめていると、眠気が移ってきた。
睡眠欲に任せ目を閉じ、そっと、重くない程度にアカギの肩に寄りかかる。この電車でどこまで行くのか分からないが、これで降りる時には起こしてくれるだろう。
アカギの体にピタリと体をくっ付けると、彼が少しだけ、身じろぎしたような気がした。
構わずに密着作戦を続ける。
その内に、ほのかな温もりと不規則な電車の揺れが、舞美を夢の世界へ落とし込んだ。
***
「……ん?」
ガタン、という大きな揺れで、舞美は驚いて目を覚ました。
暗い……。
窓の外には、月が輝いている。
「夜⁈」
「フフ……やっと起きた」
頭上からアカギの声が降ってくる。
「ごめん、わたしずっともたれっぱなしで……」
「別に」
アカギの口ぶりからすると、彼はとっくの昔に起きていたようだ。
「あんたがあんまり気持ち良さそうに寝てたから、起こしづらかっただけ」
「え、駅は? まだ降りなくて良いの?」
「そうだな。あんたが目を覚ましたついでに、次の駅で降りようか」
「それで良いんだ……」
「うん、決まった行き先なんてねえし」
舞美は頷き、アカギに続いて降りた。
そもそもここは一体どこなのだろう。
そんなに遠くには来てないと思うけれど。
「とりあえず寝床だな。あんたがいるから、流石にその辺で寝るって訳にはいかないし」
「えっ、わたしがいなかったら、その辺で寝るっていうの?」
「もし金もなければ、ね。滅多にないとはいえ、そうなったらどこか屋根のあるところで凌ぐしかないだろ」
「……やっぱり、この6年苦労したんだ」
「追われたりはしたね」
「それは……とっても大変そう」
「フフ、あんたがそれを言うのか」
アカギは目を細めた。
「どういう意味?」
「1番最初にオレを追ってきたのは、紛れもなくあんたなんだぜ」
そう言えばそうだった。
「あんただけだ」
「え?」
急にアカギがそんな口説き文句を言うので、舞美はどきっとしてしまった。
アカギはにやりと笑う。
「あんたは、オレを捕まえることのできた唯一の女」
舞美は今の状態で “自分がアカギを捕まえた” と認識してなかったものだから、言葉に詰まってしまった。
「ま、とりあえず喜んどきなよ」
「そうする……」
本当に、“捕まえた”と言えるのかは分からないが、確かに喜んでも良さそうではある。
(どちらにせよ、アカギは今わたしに “捕まってくれている” 状態)
そしていまは、紛れもなく“夜”だった。
真っ直ぐ顔を向けていると、対面の窓の外で景色がゆっくりと通り過ぎて行く。
舞美は鞄をぎゅっと握った。
手荷物は、先ほど家から持ち出してきた最低限必要な物だけ。すぐにこの電車に乗ることを決めたから、初日にして、既に自宅とは遠く離れた地に向かい始めている。
舞美は隣に座っているアカギに目を向ける。
意外なことに、彼は車内で目を瞑っていた。
(大金を抱えてるって言うのに……心地よさそうに寝てる)
どうせ、今所持している金もアカギがパーっと夜遊びに使ってしまうのだろうな。
が、それにしても本当に美形だ。
うっとり見つめていると、眠気が移ってきた。
睡眠欲に任せ目を閉じ、そっと、重くない程度にアカギの肩に寄りかかる。この電車でどこまで行くのか分からないが、これで降りる時には起こしてくれるだろう。
アカギの体にピタリと体をくっ付けると、彼が少しだけ、身じろぎしたような気がした。
構わずに密着作戦を続ける。
その内に、ほのかな温もりと不規則な電車の揺れが、舞美を夢の世界へ落とし込んだ。
***
「……ん?」
ガタン、という大きな揺れで、舞美は驚いて目を覚ました。
暗い……。
窓の外には、月が輝いている。
「夜⁈」
「フフ……やっと起きた」
頭上からアカギの声が降ってくる。
「ごめん、わたしずっともたれっぱなしで……」
「別に」
アカギの口ぶりからすると、彼はとっくの昔に起きていたようだ。
「あんたがあんまり気持ち良さそうに寝てたから、起こしづらかっただけ」
「え、駅は? まだ降りなくて良いの?」
「そうだな。あんたが目を覚ましたついでに、次の駅で降りようか」
「それで良いんだ……」
「うん、決まった行き先なんてねえし」
舞美は頷き、アカギに続いて降りた。
そもそもここは一体どこなのだろう。
そんなに遠くには来てないと思うけれど。
「とりあえず寝床だな。あんたがいるから、流石にその辺で寝るって訳にはいかないし」
「えっ、わたしがいなかったら、その辺で寝るっていうの?」
「もし金もなければ、ね。滅多にないとはいえ、そうなったらどこか屋根のあるところで凌ぐしかないだろ」
「……やっぱり、この6年苦労したんだ」
「追われたりはしたね」
「それは……とっても大変そう」
「フフ、あんたがそれを言うのか」
アカギは目を細めた。
「どういう意味?」
「1番最初にオレを追ってきたのは、紛れもなくあんたなんだぜ」
そう言えばそうだった。
「あんただけだ」
「え?」
急にアカギがそんな口説き文句を言うので、舞美はどきっとしてしまった。
アカギはにやりと笑う。
「あんたは、オレを捕まえることのできた唯一の女」
舞美は今の状態で “自分がアカギを捕まえた” と認識してなかったものだから、言葉に詰まってしまった。
「ま、とりあえず喜んどきなよ」
「そうする……」
本当に、“捕まえた”と言えるのかは分からないが、確かに喜んでも良さそうではある。
(どちらにせよ、アカギは今わたしに “捕まってくれている” 状態)
そしていまは、紛れもなく“夜”だった。