10.粋すじ
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「わたし?」
「この娘 、借りてもよか?」
アカギに許可を取る仲井。
そこまでして伝えたいこととは一体。
「別に構わないけど……人のツレってこと、忘れるなよ」
アカギは仲井を軽く睨んでから、舞美に向かって言う。
「東雲、外で待ってるぜ」
「うん、わかった……」
アカギが出て行くと、部屋には、仲井と治、そして舞美だけが残った。
アカギを待たせたくない舞美は、自分から切り出すことにした。腕を組みながら、不機嫌そうに。
「わたしに何か、用?」
仲井はこちらを真っ直ぐ見上げている。
「……もう、あの男について行くのはやめた方がよか」
「……なんなの、急に? それに、あなたには関係ないでしょ」
舞美がむっとして答えると、仲井は治にも目を向け、「あんたにも言っとくばい」と言った。
「あん人は……おいやあんたと住む世界の違う人間…見えとるものも生き方も違う…。雑魚が取り巻いちゃ迷惑たい……」
「迷惑?」
「……いうなら、あん人は海底深く潜む深海魚…通常の魚のおいたちにはあん人の“深さ”が耐えられん…。あん人の深さに耐えられるのは、異形の魚…異形の感性をもつ者だけ…」
確かに、舞美も今までそういったことを感じなかったわけではない。が、他人からこうして改めて言われるのも、厳しいものがある。
「とにかく、あんたはきっとあん人にとっちゃ邪魔たい」
仲井は、治を指差していた。
「え、俺ですか? ……じゃあ、東雲さんは?」
「こん人は、まだ分からん……」
「分からない? だってあなた、さっきついていかない方が良いって言ってたのに」
舞美は首を傾げる。
「それは、あんた自身を思ったからたい。あん人について行くと間違いなく苦労する。あん人にとってあんたは、いつか邪魔になるかもしれんばい」
「……でも、わたしは、苦労なんて感じたりしない。だってあの人のことが、好きだから。だから命だって賭けられる、アカギに対してならね。だから、邪魔に思われるまでは、側にいたって良いでしょ」
アカギのいない場所で、素直にアカギへの気持ちを吐き出す。その覚悟が伝わったのか、仲井は軽く頷いた。
「そこまでなら、好きにしたらよか」
「うん……そうさせてもらう」
舞美は思った。家を捨ててでも、生まれ育ち、アカギと出会ったこの地を離れてでも、あの人についていこう、と。
「忠告ありがとう。おかげで決心が鈍らなくて済むよ」
舞美は仲井と治に別れを告げ、雀荘を出た。
今の話で、治はこちらへついてくるのをやめることにしたようだった。
***
「東雲」
外に出るとすぐにアカギは見つかった。たった今まで煙草を吸っていたようで、こちらに気がつくとそれを足元で踏み潰す。
「あいつ、なんだって?」
「なんでもない」
舞美は言った。
「決めたよ。わたし、あなたについて行く」
***
「どうして、東雲さんはアカギさんに邪魔と思われないんだ?」
雀荘に残った者は、ふと言葉を漏らしていた。
「女だから。それに、もしかしたら、あの女も異形なのかもしれんたい」
もう1人が遠い目をして言う。
男は、それに賛同してからため息をついた。
「ってことは、東雲さんだけか。アカギさんに唯一ついて行ける可能性のある人は」
「……かもしれんね」
まあとにかく、と男は息をつく。
「羨ましいこった……」
***
10.粋すじ〈完〉
「この
アカギに許可を取る仲井。
そこまでして伝えたいこととは一体。
「別に構わないけど……人のツレってこと、忘れるなよ」
アカギは仲井を軽く睨んでから、舞美に向かって言う。
「東雲、外で待ってるぜ」
「うん、わかった……」
アカギが出て行くと、部屋には、仲井と治、そして舞美だけが残った。
アカギを待たせたくない舞美は、自分から切り出すことにした。腕を組みながら、不機嫌そうに。
「わたしに何か、用?」
仲井はこちらを真っ直ぐ見上げている。
「……もう、あの男について行くのはやめた方がよか」
「……なんなの、急に? それに、あなたには関係ないでしょ」
舞美がむっとして答えると、仲井は治にも目を向け、「あんたにも言っとくばい」と言った。
「あん人は……おいやあんたと住む世界の違う人間…見えとるものも生き方も違う…。雑魚が取り巻いちゃ迷惑たい……」
「迷惑?」
「……いうなら、あん人は海底深く潜む深海魚…通常の魚のおいたちにはあん人の“深さ”が耐えられん…。あん人の深さに耐えられるのは、異形の魚…異形の感性をもつ者だけ…」
確かに、舞美も今までそういったことを感じなかったわけではない。が、他人からこうして改めて言われるのも、厳しいものがある。
「とにかく、あんたはきっとあん人にとっちゃ邪魔たい」
仲井は、治を指差していた。
「え、俺ですか? ……じゃあ、東雲さんは?」
「こん人は、まだ分からん……」
「分からない? だってあなた、さっきついていかない方が良いって言ってたのに」
舞美は首を傾げる。
「それは、あんた自身を思ったからたい。あん人について行くと間違いなく苦労する。あん人にとってあんたは、いつか邪魔になるかもしれんばい」
「……でも、わたしは、苦労なんて感じたりしない。だってあの人のことが、好きだから。だから命だって賭けられる、アカギに対してならね。だから、邪魔に思われるまでは、側にいたって良いでしょ」
アカギのいない場所で、素直にアカギへの気持ちを吐き出す。その覚悟が伝わったのか、仲井は軽く頷いた。
「そこまでなら、好きにしたらよか」
「うん……そうさせてもらう」
舞美は思った。家を捨ててでも、生まれ育ち、アカギと出会ったこの地を離れてでも、あの人についていこう、と。
「忠告ありがとう。おかげで決心が鈍らなくて済むよ」
舞美は仲井と治に別れを告げ、雀荘を出た。
今の話で、治はこちらへついてくるのをやめることにしたようだった。
***
「東雲」
外に出るとすぐにアカギは見つかった。たった今まで煙草を吸っていたようで、こちらに気がつくとそれを足元で踏み潰す。
「あいつ、なんだって?」
「なんでもない」
舞美は言った。
「決めたよ。わたし、あなたについて行く」
***
「どうして、東雲さんはアカギさんに邪魔と思われないんだ?」
雀荘に残った者は、ふと言葉を漏らしていた。
「女だから。それに、もしかしたら、あの女も異形なのかもしれんたい」
もう1人が遠い目をして言う。
男は、それに賛同してからため息をついた。
「ってことは、東雲さんだけか。アカギさんに唯一ついて行ける可能性のある人は」
「……かもしれんね」
まあとにかく、と男は息をつく。
「羨ましいこった……」
***
10.粋すじ〈完〉