10.粋すじ
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「っ……」
ただ唇を塞がれただけで、それ以上の動きなど何もなかった。それでもアカギからの口づけは、舞美には十分すぎる代物。もしこれが本当に彼の冗談なら、この世で1番キツいジョークを体験してしまったことになるだろう。
アカギが身を引き、夢の時間は終わりを迎える。舞美は恐る恐る目を開いた。
否、夢の時間は終わってなどいない。
目の前には、目元に微笑をたたえたアカギがいた。まだ固まって動けない。
逆にぼーっとしてしまう。一体、なんだったのだろう。
「なにその顔」
アカギはくすりと笑った。
「いつもはあんたがベタベタしてたくせに」
「だっ……て、それは……っ」
舞美は、ふるふると指先で唇を覆った。“アカギにキスをされた”という揺るがない事実をもう一度確かめるかのように。
「……その反応、わざと?」
「え?」
「煽ってるつもりなら襲うけど」
「え、ちが……!」
舞美は否定してから、ああやっぱり肯定したら良かったのかと考えてまた挙動不審になる。そんな様子を見たアカギは、ガリ、と困ったように頭をかいた。そして、「風呂」とだけ言い残し、脱衣所の方へ歩いていった。
「あ、うん……」
アカギは朝風呂派なのだろうか。
舞美は部屋からアカギが居なくなった後、少ししてすぐ、その場に丸くうずくまった。もちろん、具合が悪くなってのことではない。
彼女はようやく、爆発したかのように真っ赤になった。枕に頭を押し付けたり足をバタつかせたりして、ひとり感情を表現する。
アカギとのキス。
このフレーズを、今日は何度頭に思い浮かべるのだろう。
(アカギと恋人になったみたい……!)
***
しばらく声にならない叫びを上げてから、なんとか気持ちを切り替え、簡単なご飯の準備をしようと台所に立つと、「ねえ」とアカギに声をかけられた。
「ん……?」
振り向くと、彼が腰にタオル1枚の状態で立っていた。
「きゃっ!」
彼女が思うより、時間は長く経っていたようだ。
男の入浴は短いと相場は決まっている。
「そこの鞄取って。着替えが入ってるから」
「わ、わかった」
舞美は足元の鞄を両手で持ち上げ、アカギの元に運ぶ。近くに寄ると、彼の体は引き締まっていて、やっぱり目のやり場に困った。
ぺたんと濡れた髪の毛は会った日のことを彷彿とさせる。違っているのは、ホカホカと体から湯気が出ているところ。それに、なんだかいい匂いがする。
アカギは不思議そうにこちらを見た。
「あんた、オレの着替えがそんなに見たいのか」
ただ唇を塞がれただけで、それ以上の動きなど何もなかった。それでもアカギからの口づけは、舞美には十分すぎる代物。もしこれが本当に彼の冗談なら、この世で1番キツいジョークを体験してしまったことになるだろう。
アカギが身を引き、夢の時間は終わりを迎える。舞美は恐る恐る目を開いた。
否、夢の時間は終わってなどいない。
目の前には、目元に微笑をたたえたアカギがいた。まだ固まって動けない。
逆にぼーっとしてしまう。一体、なんだったのだろう。
「なにその顔」
アカギはくすりと笑った。
「いつもはあんたがベタベタしてたくせに」
「だっ……て、それは……っ」
舞美は、ふるふると指先で唇を覆った。“アカギにキスをされた”という揺るがない事実をもう一度確かめるかのように。
「……その反応、わざと?」
「え?」
「煽ってるつもりなら襲うけど」
「え、ちが……!」
舞美は否定してから、ああやっぱり肯定したら良かったのかと考えてまた挙動不審になる。そんな様子を見たアカギは、ガリ、と困ったように頭をかいた。そして、「風呂」とだけ言い残し、脱衣所の方へ歩いていった。
「あ、うん……」
アカギは朝風呂派なのだろうか。
舞美は部屋からアカギが居なくなった後、少ししてすぐ、その場に丸くうずくまった。もちろん、具合が悪くなってのことではない。
彼女はようやく、爆発したかのように真っ赤になった。枕に頭を押し付けたり足をバタつかせたりして、ひとり感情を表現する。
アカギとのキス。
このフレーズを、今日は何度頭に思い浮かべるのだろう。
(アカギと恋人になったみたい……!)
***
しばらく声にならない叫びを上げてから、なんとか気持ちを切り替え、簡単なご飯の準備をしようと台所に立つと、「ねえ」とアカギに声をかけられた。
「ん……?」
振り向くと、彼が腰にタオル1枚の状態で立っていた。
「きゃっ!」
彼女が思うより、時間は長く経っていたようだ。
男の入浴は短いと相場は決まっている。
「そこの鞄取って。着替えが入ってるから」
「わ、わかった」
舞美は足元の鞄を両手で持ち上げ、アカギの元に運ぶ。近くに寄ると、彼の体は引き締まっていて、やっぱり目のやり場に困った。
ぺたんと濡れた髪の毛は会った日のことを彷彿とさせる。違っているのは、ホカホカと体から湯気が出ているところ。それに、なんだかいい匂いがする。
アカギは不思議そうにこちらを見た。
「あんた、オレの着替えがそんなに見たいのか」