10.粋すじ
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「あ、アカギ、その言い方はずるい」
舞美はアカギの服の裾を引っ張ってから、力なくその腕を下ろした。“あったかい”なんて、どんな風にも解釈できてしまうし。
そんな風に誤魔化されるのは、もう御免だった。そうでないと、きっと一生保留してしまう。
「おねがい、はっきり言ってよ……」
アカギの気持ちは、一体どんなものなのか。舞美に抱いているその感情は、彼女のアカギへの想いと一緒なのか。舞美は答えを求める。
「はっきり、か。難しいな」
アカギの言葉に嘘偽りは感じない。
ただ、彼は困惑しているようにも見える。
「オレ自身こんなのは初めてで少し参ってるんだ……。ただ、確かなのは、13の頃あんたと別れてから1人で時を過ごしていた時、ふとした時に思い出すのは、他でもないあんたの名前だったってこと」
東雲舞美、彼の脳裏にその名が浮かぶ時、彼は何を見、何を感じていたのだろう。
空白の時間を共に過ごすことはなかったが、離れ離れであろうとも、互いに互いを想いあう、そんな時間は、きっと存在していた。
アカギは続ける。
「それに、こうやってあんたに触ると、」
アカギは舞美の両頬を手のひらで包むようにして、彼女に顔を俯かせないよう固定する。
「どうにも自制できなくなりそうになる。タチの悪い冗談みたいだ」
それは舞美にも当てはまることだった。この6年間、アカギだけを恋しがっていたのは事実だし、内部でくすぶり続けてきた熱は、こうして肌と肌をくっつけるだけでそこから体が溶け出してしまいそうなほど凄まじい。もちろん、この瞬間でさえも、例外ではない。
「わたしは、その“タチの悪い冗談” に、ひどい目遭わされてるの……あなたと出会ったあの日から」
舞美は縋るようにアカギを見つめる。
「ずっと、よ」
「そんなに前から……オレにお熱なんだ?」
アカギの口調に拒絶の意は感じ取れない。
舞美は頷いた。
「だから、ずっと待ってたでしょ」
「……あんたって変わってる」
「もう何度も言われた気がする」
アカギは「そうかもな」と呟き、舞美を見据える。
その艶やかな目元に舞美は視線を奪われた。
いつか壊れてしまいそうなほど、綺麗な瞳。
彼はそっと舞美に近寄った。
「あ、アカギ」
男女の距離がこれだけ近いと、することは限られているらしい。
もうあとは、ぶつかり合う視線が、そのタイミングを図るだけ。
こんな雰囲気、たまらない。
舞美には瞬きをするのも勿体無く思えた。
「——っとに、タチの悪い冗談。」
アカギは自虐的に笑って、こちらに顔を寄せた。
さらり、と互いの前髪が触れ合う。
(あ、くる……)
それに気がついた時には、舞美はもう反射的に目を瞑っていた。
どうにでもなってしまえばいいんだ。
鼻先が擦れたかと思うと、2人の世界から言葉を消すように、舞美の唇は塞がれた。
微かなリップ音が心地よく耳にこだまする。
信じられない、という思いは、今唇に感じている、彼の柔らかな感触と矛盾した。
ああ、今本当にアカギと——
舞美は距離というものの存在しないこの瞬間を堪能する。
しばらくこのまま離れたくない。
——もうぜんぶ、冗談みたいだ。
舞美はアカギの服の裾を引っ張ってから、力なくその腕を下ろした。“あったかい”なんて、どんな風にも解釈できてしまうし。
そんな風に誤魔化されるのは、もう御免だった。そうでないと、きっと一生保留してしまう。
「おねがい、はっきり言ってよ……」
アカギの気持ちは、一体どんなものなのか。舞美に抱いているその感情は、彼女のアカギへの想いと一緒なのか。舞美は答えを求める。
「はっきり、か。難しいな」
アカギの言葉に嘘偽りは感じない。
ただ、彼は困惑しているようにも見える。
「オレ自身こんなのは初めてで少し参ってるんだ……。ただ、確かなのは、13の頃あんたと別れてから1人で時を過ごしていた時、ふとした時に思い出すのは、他でもないあんたの名前だったってこと」
東雲舞美、彼の脳裏にその名が浮かぶ時、彼は何を見、何を感じていたのだろう。
空白の時間を共に過ごすことはなかったが、離れ離れであろうとも、互いに互いを想いあう、そんな時間は、きっと存在していた。
アカギは続ける。
「それに、こうやってあんたに触ると、」
アカギは舞美の両頬を手のひらで包むようにして、彼女に顔を俯かせないよう固定する。
「どうにも自制できなくなりそうになる。タチの悪い冗談みたいだ」
それは舞美にも当てはまることだった。この6年間、アカギだけを恋しがっていたのは事実だし、内部でくすぶり続けてきた熱は、こうして肌と肌をくっつけるだけでそこから体が溶け出してしまいそうなほど凄まじい。もちろん、この瞬間でさえも、例外ではない。
「わたしは、その“タチの悪い冗談” に、ひどい目遭わされてるの……あなたと出会ったあの日から」
舞美は縋るようにアカギを見つめる。
「ずっと、よ」
「そんなに前から……オレにお熱なんだ?」
アカギの口調に拒絶の意は感じ取れない。
舞美は頷いた。
「だから、ずっと待ってたでしょ」
「……あんたって変わってる」
「もう何度も言われた気がする」
アカギは「そうかもな」と呟き、舞美を見据える。
その艶やかな目元に舞美は視線を奪われた。
いつか壊れてしまいそうなほど、綺麗な瞳。
彼はそっと舞美に近寄った。
「あ、アカギ」
男女の距離がこれだけ近いと、することは限られているらしい。
もうあとは、ぶつかり合う視線が、そのタイミングを図るだけ。
こんな雰囲気、たまらない。
舞美には瞬きをするのも勿体無く思えた。
「——っとに、タチの悪い冗談。」
アカギは自虐的に笑って、こちらに顔を寄せた。
さらり、と互いの前髪が触れ合う。
(あ、くる……)
それに気がついた時には、舞美はもう反射的に目を瞑っていた。
どうにでもなってしまえばいいんだ。
鼻先が擦れたかと思うと、2人の世界から言葉を消すように、舞美の唇は塞がれた。
微かなリップ音が心地よく耳にこだまする。
信じられない、という思いは、今唇に感じている、彼の柔らかな感触と矛盾した。
ああ、今本当にアカギと——
舞美は距離というものの存在しないこの瞬間を堪能する。
しばらくこのまま離れたくない。
——もうぜんぶ、冗談みたいだ。