10.粋すじ
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「た、狸寝入り……⁈」
舞美は飛び上がって後ろに下がり、目を丸くして彼を見つめた。
「まさか、あんたがこんなに簡単に引っかかるとは思わなかったけど」
アカギは眠そうな気配なく、布団に尻餅をついた舞美にそろりと近づく。猫みたいだ。
「あんた、いま何しようとしてたんだ?」
「べ……別にわたしは何も」
きまりが悪くて舞美は目をそらす。
「ふーん?」
アカギは俯いた舞美の顔を下から覗き込むようにして、顔を近づけた。恥ずかしさに舞美が逃げようと腰を引くと、その分だけこちらに接近してくる。
「さっき、自分でこのくらい顔近づけてたじゃない」
「う……」
言い逃れできないし、アカギは近いし。
目の前のアカギに、体温が上昇する。
彼の瞳はいたずらに光っていた。
「この距離で何かするとしたら——なんだと思う?」
こんな近距離ですること、と言うと。……それは、さっき舞美がしようとしてたこと。
頭の中でその答えは分かっているけれど、口になんてできない。
そんな舞美の混乱を知ってか、アカギは舞美の口元に唇をギリギリまで近づける。
どうしようどうしようどうしよう。
(アカギとキスなんて——)
しかし。彼は唇には全く触れないで、ただ笑った。
「あんたの表情、コロコロ変わって面白い」
「えっ」
「東雲をずっと眺めてるってのも楽しそうだ」
「……か、からかわないでよ」
またアカギとのキスはおあずけ。そう思ってむっとした顔をすると、アカギは「別にからかってるわけじゃないけどね」と口にした。
「オレ、あんたのこと気に入ってるし」
「……そう、なの?」
気に入っているとはどういう意味で? とは聞けなかった。そんな臆病な性格ではなかったはずなのに。……やはり、思春期の恋は人を変えるらしい。
「この6年間、あんたみたいな女はどこにもいなかった。纏わり付いて媚びてくる他のやつと東雲は全然違うし」
アカギの言葉に、舞美は“特別扱い”されたことに内心喜びつつも、疑問を感じずにはいられなかった。
「わたし、他の人とそんなに違うかな」
アカギの言う、“纏わり付いて媚びてくる”人たちっていうのは、多分アカギに惚れてしまった他の女たちも含まれるに違いない。
(わたしも、その人たちと変わらないのに。アカギに纏わり付いているし、見方を変えれば媚びてるとも言える……)
舞美の心中などお構いなしに、アカギはいとも容易く「違うね」と否定した。
「オレは他の女を見ても何も思わないけど——あんたは、見てるだけでもあったけえし」
舞美は飛び上がって後ろに下がり、目を丸くして彼を見つめた。
「まさか、あんたがこんなに簡単に引っかかるとは思わなかったけど」
アカギは眠そうな気配なく、布団に尻餅をついた舞美にそろりと近づく。猫みたいだ。
「あんた、いま何しようとしてたんだ?」
「べ……別にわたしは何も」
きまりが悪くて舞美は目をそらす。
「ふーん?」
アカギは俯いた舞美の顔を下から覗き込むようにして、顔を近づけた。恥ずかしさに舞美が逃げようと腰を引くと、その分だけこちらに接近してくる。
「さっき、自分でこのくらい顔近づけてたじゃない」
「う……」
言い逃れできないし、アカギは近いし。
目の前のアカギに、体温が上昇する。
彼の瞳はいたずらに光っていた。
「この距離で何かするとしたら——なんだと思う?」
こんな近距離ですること、と言うと。……それは、さっき舞美がしようとしてたこと。
頭の中でその答えは分かっているけれど、口になんてできない。
そんな舞美の混乱を知ってか、アカギは舞美の口元に唇をギリギリまで近づける。
どうしようどうしようどうしよう。
(アカギとキスなんて——)
しかし。彼は唇には全く触れないで、ただ笑った。
「あんたの表情、コロコロ変わって面白い」
「えっ」
「東雲をずっと眺めてるってのも楽しそうだ」
「……か、からかわないでよ」
またアカギとのキスはおあずけ。そう思ってむっとした顔をすると、アカギは「別にからかってるわけじゃないけどね」と口にした。
「オレ、あんたのこと気に入ってるし」
「……そう、なの?」
気に入っているとはどういう意味で? とは聞けなかった。そんな臆病な性格ではなかったはずなのに。……やはり、思春期の恋は人を変えるらしい。
「この6年間、あんたみたいな女はどこにもいなかった。纏わり付いて媚びてくる他のやつと東雲は全然違うし」
アカギの言葉に、舞美は“特別扱い”されたことに内心喜びつつも、疑問を感じずにはいられなかった。
「わたし、他の人とそんなに違うかな」
アカギの言う、“纏わり付いて媚びてくる”人たちっていうのは、多分アカギに惚れてしまった他の女たちも含まれるに違いない。
(わたしも、その人たちと変わらないのに。アカギに纏わり付いているし、見方を変えれば媚びてるとも言える……)
舞美の心中などお構いなしに、アカギはいとも容易く「違うね」と否定した。
「オレは他の女を見ても何も思わないけど——あんたは、見てるだけでもあったけえし」