10.粋すじ
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「えっ、全然いやじゃない」
舞美は顔を明るくさせて、「いやむしろ、」とその先を続けようとしたが、やはり今は言わないことにした。
「じゃあ、問題はないね」
電気を消し、小さな灯りを枕元に付けた後、アカギは本当に普通に、布団に横になった。
しかし枕は1つしかない。
アカギは舞美にその枕を使わせてくれるらしいが、気後れした舞美はその隣に並べずにいる。それに気がついたアカギはこちらへ顔を向けた。
「あんたは? まだ寝ないの」
「ん、寝る……」
「じゃあ、そうしなよ」
「けど、わたし1人枕使うのは悪い気がして」
「変なところで律儀だな。あんたのものなんだから、そんな風に思う必要はないだろ」
「うーん。でも、アカギ代わりに使ってよ」
「……あんたが使いにくいってんなら、オレが寝かせてもらうけど」
そう言ってアカギは枕を自分の頭の下に入れた。
そして、「ほら」……と、掛け布団を片手で上に持ち上げるようにして隙間を作った。どうやらここに入れ、という意味らしい。まるで「おいで」と言っているようなその仕草。
……これにときめかなかったら女じゃない。
素直にその隙間に収まろうとするが、舞美の寝転がる位置にアカギの腕があった。
「ん、……と?」
意味が理解できず首をかしげると、アカギはことも投げに言う。
「枕」
つまり腕まくらをしてくれる……と。
あの赤木しげるが、舞美の為に。
舞美はにやにやしそうなのをぐっと堪えて、照れ隠しに「アカギの腕一本、もーらい」と冗談を飛ばし、その暖かい空間に潜り込んだ。
寝息が聞こえてきそうなほど近い、アカギとの距離。ふと目線を横に合わせれば、アカギの端整な横顔がそこにある。
一体どれほどの女が赤木しげるに恋をし、彼を取り逃がしてきたのだろう。今この瞬間、アカギは舞美だけのものになっている。
(し、しあわせすぎるかも)
本当はもっと胸元にすり寄って、ぎゅっと抱き締められたまま、彼の体温の中で眠りにつきたい。もっと肌と肌を重ねたいけど、
(今はこれでじゅうぶん……!)
十分というか、精一杯というか。
近いけれど、そこまでは近すぎない、この微妙な距離がもどかしく、じれったい。
どきどきしながら彼の顔を眺めていると、舞美側の片目がパチリと開いた。
「そんなにオレの寝顔見てどうするの?」
見つめていたことが、バレてしまった。
舞美は誤魔化すように「なんでもない」と「おやすみなさい」を口にし、慌てて目を瞑った。彼は挨拶を返してくれ、その時一瞬だけ足元が触れ合った。舞美は中途半端にアカギに可愛がられた体の疼きを思い出す。
(触りたい——)
でも、我慢。
中々寝付けなかった舞美も、アカギの静かな寝息に耳をすます内、いつの間にか夢の世界へ誘われていった。
彼女が安眠できた理由の1つは、彼の腕まくらである。アカギの腕が舞美の頭の下にある以上、寝ている間に彼が勝手に立ち去って雲隠れしてしまうことはないから。
舞美にとってこの腕まくらはアカギが翌朝も居てくれるという保証そのものであり、これこそが、舞美を心から安堵させる為にかけた、アカギの魔法に違いなかった。
舞美は顔を明るくさせて、「いやむしろ、」とその先を続けようとしたが、やはり今は言わないことにした。
「じゃあ、問題はないね」
電気を消し、小さな灯りを枕元に付けた後、アカギは本当に普通に、布団に横になった。
しかし枕は1つしかない。
アカギは舞美にその枕を使わせてくれるらしいが、気後れした舞美はその隣に並べずにいる。それに気がついたアカギはこちらへ顔を向けた。
「あんたは? まだ寝ないの」
「ん、寝る……」
「じゃあ、そうしなよ」
「けど、わたし1人枕使うのは悪い気がして」
「変なところで律儀だな。あんたのものなんだから、そんな風に思う必要はないだろ」
「うーん。でも、アカギ代わりに使ってよ」
「……あんたが使いにくいってんなら、オレが寝かせてもらうけど」
そう言ってアカギは枕を自分の頭の下に入れた。
そして、「ほら」……と、掛け布団を片手で上に持ち上げるようにして隙間を作った。どうやらここに入れ、という意味らしい。まるで「おいで」と言っているようなその仕草。
……これにときめかなかったら女じゃない。
素直にその隙間に収まろうとするが、舞美の寝転がる位置にアカギの腕があった。
「ん、……と?」
意味が理解できず首をかしげると、アカギはことも投げに言う。
「枕」
つまり腕まくらをしてくれる……と。
あの赤木しげるが、舞美の為に。
舞美はにやにやしそうなのをぐっと堪えて、照れ隠しに「アカギの腕一本、もーらい」と冗談を飛ばし、その暖かい空間に潜り込んだ。
寝息が聞こえてきそうなほど近い、アカギとの距離。ふと目線を横に合わせれば、アカギの端整な横顔がそこにある。
一体どれほどの女が赤木しげるに恋をし、彼を取り逃がしてきたのだろう。今この瞬間、アカギは舞美だけのものになっている。
(し、しあわせすぎるかも)
本当はもっと胸元にすり寄って、ぎゅっと抱き締められたまま、彼の体温の中で眠りにつきたい。もっと肌と肌を重ねたいけど、
(今はこれでじゅうぶん……!)
十分というか、精一杯というか。
近いけれど、そこまでは近すぎない、この微妙な距離がもどかしく、じれったい。
どきどきしながら彼の顔を眺めていると、舞美側の片目がパチリと開いた。
「そんなにオレの寝顔見てどうするの?」
見つめていたことが、バレてしまった。
舞美は誤魔化すように「なんでもない」と「おやすみなさい」を口にし、慌てて目を瞑った。彼は挨拶を返してくれ、その時一瞬だけ足元が触れ合った。舞美は中途半端にアカギに可愛がられた体の疼きを思い出す。
(触りたい——)
でも、我慢。
中々寝付けなかった舞美も、アカギの静かな寝息に耳をすます内、いつの間にか夢の世界へ誘われていった。
彼女が安眠できた理由の1つは、彼の腕まくらである。アカギの腕が舞美の頭の下にある以上、寝ている間に彼が勝手に立ち去って雲隠れしてしまうことはないから。
舞美にとってこの腕まくらはアカギが翌朝も居てくれるという保証そのものであり、これこそが、舞美を心から安堵させる為にかけた、アカギの魔法に違いなかった。