1.不良娘
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息を潜めて、彼の後ろに立った舞美は、何か新しい冒険が始まるような気がして、胸を躍らせた。少年は雀荘の中へと足を踏み入れた。
「誰だい? そこのドアのところ」
低い男の声がした。彼の肩から顔を出して中を見た舞美は、沢山の男たちがこちらを見ていることに気がついて、何か不安な気持ちになった。歓迎されていないことは明らかだ。
「なんだ てめえらは……?」
見るからに筋者の黒服がこちらを見やる。
「雨やどりなら別にしなっ! ここはガキのくるところじゃねぇっ…! ほら、そこの女もだ!」
彼と舞美は、「さあ…帰った帰った…!」と押しのけられる。
なす術なく、2人は無言でされるがままだ。
が、その時。
「まてっ……!」
ガタイの良い男の声1つで、黒服らはその動きを止めた。
「そのガキはオレが呼んだんだ。深夜12時をまわっても何の連絡もしなかったら人をよこすように言っておいた」
まさかそんなはずはなく、舞美は何が起こっているのかをイマイチ理解できずにいる。
が、やはり雨に打たれた直後ということで、舞美は「くしゅん」と小さくくしゃみをした。
「竜崎さん 珈琲を入れてやっちゃくれないか……? それとタオルだ」
舞美はその男に感謝した。すぐに温かい飲み物が運ばれてきて、舞美と少年は長椅子に座ることが許される。その男は少年の濡れた頭をタオルで拭き始めた。
彼は意外にも、されるがままになっている。
舞美も彼の態度を真似するようにして、水気を取ってもらった。こんな風にわしゃわしゃと頭を撫でられるのは久しぶりで、白い髪の彼に向かってにっと口角を上げてみせた。
「……あんたって、よくわからないな」
彼もつられて少しだけ笑ったので、舞美は「あなたもね」と返した。
雀荘というのは、金を賭けて麻雀を打つ場所だ。
舞美はこの年にして、麻雀というものがどんなゲームなのかをなんとなく理解していた。そして、この男がヤクザ達と勝負をしていたことや、今その勝負の熱が冷めていることをその肌で感じ取れた。
男は雀卓に戻り、また異様な空気の中麻雀を打ち始めた。この麻雀がただの遊びでないことは、舞美にも分かる。それより、隣に座っている彼は今何を考えているのだろう。
と、その時。
それは男が二筒を捨てようとした時だった。
「死ねば助かるのに……」
舞美と男は、はっとしたように少年を見る。舞美の肌には何故か鳥肌が立っていた。
「……おまえ……麻雀がわかるのか……?」
「いや…全然…」
彼はその静かなトーンで、続ける。
「ただ…今 気配が死んでいた……。背中に勝とうという強さがない。ただ助かろうとしている。博打で負けのこんだ人間が最後に陥る思考回路……」
チキンランを生き延びた男は、口の端を上げた。
「あんたはただ怯えている」
舞美は、男が二筒を引っ込め、対面に危険な五筒を捨てるのを見た。
……通った。
舞美を驚かせたのはそれだけではない。なんと、高めの待ちである一筒が溢れたのだ。
「ロン!」
隣の少年をちらりと見るが、彼は平気な顔。
舞美は訳も分からないまま、混乱しそうになる。
麻雀を知らないというのが本当なら、彼は単に男の心理を読んだだけだということだ。
……本当に、そんなことが可能なの?
それをきっかけに、男は逆転トップに躍り出た。
マッチで煙草に火をつけ、後ろの舞美たちを見る。
「本当に、よく分からない子どもたちだな……。女の子なのに、こんなところへ来るなんて。それに、オレはおまえに救われたよ」
男は彼に尋ねた。
「ぼうず、齢は…?」
彼は、その数字を告げた。
「……13……」
舞美と変わらない。
「……へー、見えねえな。名前は?」
男が彼の名を聞くので、舞美も身を乗り出して、耳を傾けた。
「……赤木…」
赤木しげる…
「誰だい? そこのドアのところ」
低い男の声がした。彼の肩から顔を出して中を見た舞美は、沢山の男たちがこちらを見ていることに気がついて、何か不安な気持ちになった。歓迎されていないことは明らかだ。
「なんだ てめえらは……?」
見るからに筋者の黒服がこちらを見やる。
「雨やどりなら別にしなっ! ここはガキのくるところじゃねぇっ…! ほら、そこの女もだ!」
彼と舞美は、「さあ…帰った帰った…!」と押しのけられる。
なす術なく、2人は無言でされるがままだ。
が、その時。
「まてっ……!」
ガタイの良い男の声1つで、黒服らはその動きを止めた。
「そのガキはオレが呼んだんだ。深夜12時をまわっても何の連絡もしなかったら人をよこすように言っておいた」
まさかそんなはずはなく、舞美は何が起こっているのかをイマイチ理解できずにいる。
が、やはり雨に打たれた直後ということで、舞美は「くしゅん」と小さくくしゃみをした。
「竜崎さん 珈琲を入れてやっちゃくれないか……? それとタオルだ」
舞美はその男に感謝した。すぐに温かい飲み物が運ばれてきて、舞美と少年は長椅子に座ることが許される。その男は少年の濡れた頭をタオルで拭き始めた。
彼は意外にも、されるがままになっている。
舞美も彼の態度を真似するようにして、水気を取ってもらった。こんな風にわしゃわしゃと頭を撫でられるのは久しぶりで、白い髪の彼に向かってにっと口角を上げてみせた。
「……あんたって、よくわからないな」
彼もつられて少しだけ笑ったので、舞美は「あなたもね」と返した。
雀荘というのは、金を賭けて麻雀を打つ場所だ。
舞美はこの年にして、麻雀というものがどんなゲームなのかをなんとなく理解していた。そして、この男がヤクザ達と勝負をしていたことや、今その勝負の熱が冷めていることをその肌で感じ取れた。
男は雀卓に戻り、また異様な空気の中麻雀を打ち始めた。この麻雀がただの遊びでないことは、舞美にも分かる。それより、隣に座っている彼は今何を考えているのだろう。
と、その時。
それは男が二筒を捨てようとした時だった。
「死ねば助かるのに……」
舞美と男は、はっとしたように少年を見る。舞美の肌には何故か鳥肌が立っていた。
「……おまえ……麻雀がわかるのか……?」
「いや…全然…」
彼はその静かなトーンで、続ける。
「ただ…今 気配が死んでいた……。背中に勝とうという強さがない。ただ助かろうとしている。博打で負けのこんだ人間が最後に陥る思考回路……」
チキンランを生き延びた男は、口の端を上げた。
「あんたはただ怯えている」
舞美は、男が二筒を引っ込め、対面に危険な五筒を捨てるのを見た。
……通った。
舞美を驚かせたのはそれだけではない。なんと、高めの待ちである一筒が溢れたのだ。
「ロン!」
隣の少年をちらりと見るが、彼は平気な顔。
舞美は訳も分からないまま、混乱しそうになる。
麻雀を知らないというのが本当なら、彼は単に男の心理を読んだだけだということだ。
……本当に、そんなことが可能なの?
それをきっかけに、男は逆転トップに躍り出た。
マッチで煙草に火をつけ、後ろの舞美たちを見る。
「本当に、よく分からない子どもたちだな……。女の子なのに、こんなところへ来るなんて。それに、オレはおまえに救われたよ」
男は彼に尋ねた。
「ぼうず、齢は…?」
彼は、その数字を告げた。
「……13……」
舞美と変わらない。
「……へー、見えねえな。名前は?」
男が彼の名を聞くので、舞美も身を乗り出して、耳を傾けた。
「……赤木…」
赤木しげる…
