9.単一性*
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
[麻雀描写。飛ばしても可]
これを機に、彼の麻雀は “アカギらしさ” を纏ったものへと変化していった。神かがっている、あるいは狂っている、そんな彼の麻雀。
まずは微妙な配牌。しかし暗刻が重なり、三暗刻から、四暗刻テンパイ。しかしアカギは浦部が張っていると読んだのか、単騎待ちの役満確定ではない待ち、つまり多面待ちのある四暗刻テンパイを選択、そして立直。
いや、正確には違った。
「オープン」
彼はここでオープン立直を選択したのだ。舞美は目を見開く。
(流石にそれは……男気溢れすぎ)
しかしアカギのツモ後、浦部の表情が変わる。当たり前だ、四萬をツモったら役満なのだから。
そして次巡。浦部はオープン立直に振ると役満というルールが存在しないことを確認してから、アカギの待ち牌の1つである二萬を切った。
「なるほど……」
舞美は思わず呟いた。こうして四暗刻を威嚇に使うことで、逆に、それに慄いた差し馬相手からの直撃を取ることができるのか。こんなこと思いつきもしない。裏ドラが乗ればもっと上にもいける。なんてこと。
(アカギ、かっこよすぎ)
「どないした、さっさと裏ドラめくらんかい」
浦部が薄気味悪い笑みを浮かべながら言うと、アカギは即答した。
「寝ぼけるな。続行だ。ケチな点棒拾う気なし」
「えっ」
「あ、アカギ……!」
彼が言うには、浦部は今の差し込みによって手牌を崩した。だからこそ、妥協せず浦部の後退した分だけ進もう、ということだった。
しかし15巡目、アカギはまたもや自らの当たり牌である六萬を捨てた。しかし、これが先ほどと違うのは、それを浦部にロンされてしまったという点だ。つまり、最悪の事態。
だって、これでアカギは浦部に70000点ほどの差をつけられてしまったのだから。
(でも、アカギは冷静そう……何か手があるの? さっき言ってた、後の三巡、ってやつ?)
次局。アカギは安めの手から暗カンをし、乗った新ドラによってドラ4となり盛り返す。そしてテンパイ。ここは三面張で受けるかと思いきや、アカギの選んだ単騎待ちは北。しかも北は既に2枚切れている。いや、違う。確か、これは局の始めに王牌に眠っていることが分かってしまった牌でもあった。
つまり、この立直は空。
……の、はず。
が、なんということだろうか。
舞美から見ると、それは奇跡だった。
急に最後、現物を切り続けていた浦部が暗カンを2回も行い、結果王牌の北をツモり、それをそのままアカギに打ってきたのだ……それも得意げに。
実は、アカギはその偶然をずっと待っていたのだった。安パイをなくした浦部が、局の始まる前に見えてしまった北を求めて二度もカンをする、というそんな偶然を、ずっと。
いくら対子場と読んでいるとは言えども、これはそうした理を大きく超えている。
彼はこうして浦部からかなり高い直撃をとり、親としてオーラスを迎えた。
(本当に、なにこれ……前のアカギとは全然違う。面白すぎる)
舞美はもう興奮して仕方なかった。70000点あった差が一気に縮まったところで、アカギの親。確かにここで浦部がノミ手で和了ってしまい、あっけなく終わる可能性もあるが、アカギがそれを許すだろうか。
が、このオーラス。とうとう舞美はアカギの真意を全くと言っていいほど分からなくなる。
舞美が分かったのは、アカギの暗カンに、またもやドラが爆乗りしたところまでだった。とりあえずこの満貫を和了れば、連荘できるのだが——問題は、役。
舞美は理解に苦しんだ。というのも、こちらから見る限り、彼には役が“ない”のだ。何かを待っているというような手牌でもない。何せ、タンヤオさえも目指していないから。それなのにドラを捨てる。全く筋が通らない。
そしてなぜか、彼は「チー」をした。何の為かも分からない。一体、これになんの利が?
仕方なく対面の浦部に目を向けると、こちらはやはり安パイの連打。向こうもまだ張っていなさそうなのが救いか。
しかしアカギは不気味な打ち回しを続ける……舞美にはアカギの手牌に未来がないように見えた。
このままじゃ折角のドラ4が無駄になってしまう。一体どうしてアカギはこんなことを?
「アカギ……」
「フフ……大丈夫だよ」
(大丈夫? 何が大丈夫なの?)
彼は七筒をポンする。七索をカンしてあるから、ブラフにはなり得る。こんな土壇場の三色同刻のハッタリなど、浦部に通用するかどうかは定かではないが。
それにもう役がない。もしかしてとりあえずただテンパイだけを取りにいっているのだろうか? それも道理が通らないけれど、アカギは次で何か仕掛けを打つのかもしれない。
「ポン」
この終盤のポンについては、舞美は驚かなかった。これで裸単騎テンパイ。当たりさえしなければ連荘できる。
と、ここで舞美もひらめいた。カン、そして今のポンで、ラスヅモは浦部になっている。ここでようやく現れるのだ——テンパイしていれば誰に対しても起こり得る、ある“偶然役”の可能性が。
(もしかしてアカギ、最初からこのホウテイだけを狙って……?)
そう考えると、アカギの変な行動に意味を見出すことができる。こちらからするとアカギのしていることは何の意味も為さないが、浦部の視点に立つと……
(なんてことなの! アカギはこの局、浦部をずっと操っていたんだ)
暗黒カンやドラ切り、タンヤオや三色の匂わせなど全てがアカギが意図して行っていたことだとすると、
(もしかしたら……もしかする、の?)
そして浦部のラスヅモ。
ツモ牌を確認した彼の表情はかなり硬い。
「ここで現物を引けないようじゃ、運も尽きたな」
アカギは嘲笑うかのように、たった一牌のそれをパタンと伏せた。
舞美はその牌がなにかを知っている。
「そこまでだ」
「……えっ?」
舞美は思わず声を上げる。
だって、アカギは席を立ったから。
(どうして? だって、今からでしょ……?)
これを機に、彼の麻雀は “アカギらしさ” を纏ったものへと変化していった。神かがっている、あるいは狂っている、そんな彼の麻雀。
まずは微妙な配牌。しかし暗刻が重なり、三暗刻から、四暗刻テンパイ。しかしアカギは浦部が張っていると読んだのか、単騎待ちの役満確定ではない待ち、つまり多面待ちのある四暗刻テンパイを選択、そして立直。
いや、正確には違った。
「オープン」
彼はここでオープン立直を選択したのだ。舞美は目を見開く。
(流石にそれは……男気溢れすぎ)
しかしアカギのツモ後、浦部の表情が変わる。当たり前だ、四萬をツモったら役満なのだから。
そして次巡。浦部はオープン立直に振ると役満というルールが存在しないことを確認してから、アカギの待ち牌の1つである二萬を切った。
「なるほど……」
舞美は思わず呟いた。こうして四暗刻を威嚇に使うことで、逆に、それに慄いた差し馬相手からの直撃を取ることができるのか。こんなこと思いつきもしない。裏ドラが乗ればもっと上にもいける。なんてこと。
(アカギ、かっこよすぎ)
「どないした、さっさと裏ドラめくらんかい」
浦部が薄気味悪い笑みを浮かべながら言うと、アカギは即答した。
「寝ぼけるな。続行だ。ケチな点棒拾う気なし」
「えっ」
「あ、アカギ……!」
彼が言うには、浦部は今の差し込みによって手牌を崩した。だからこそ、妥協せず浦部の後退した分だけ進もう、ということだった。
しかし15巡目、アカギはまたもや自らの当たり牌である六萬を捨てた。しかし、これが先ほどと違うのは、それを浦部にロンされてしまったという点だ。つまり、最悪の事態。
だって、これでアカギは浦部に70000点ほどの差をつけられてしまったのだから。
(でも、アカギは冷静そう……何か手があるの? さっき言ってた、後の三巡、ってやつ?)
次局。アカギは安めの手から暗カンをし、乗った新ドラによってドラ4となり盛り返す。そしてテンパイ。ここは三面張で受けるかと思いきや、アカギの選んだ単騎待ちは北。しかも北は既に2枚切れている。いや、違う。確か、これは局の始めに王牌に眠っていることが分かってしまった牌でもあった。
つまり、この立直は空。
……の、はず。
が、なんということだろうか。
舞美から見ると、それは奇跡だった。
急に最後、現物を切り続けていた浦部が暗カンを2回も行い、結果王牌の北をツモり、それをそのままアカギに打ってきたのだ……それも得意げに。
実は、アカギはその偶然をずっと待っていたのだった。安パイをなくした浦部が、局の始まる前に見えてしまった北を求めて二度もカンをする、というそんな偶然を、ずっと。
いくら対子場と読んでいるとは言えども、これはそうした理を大きく超えている。
彼はこうして浦部からかなり高い直撃をとり、親としてオーラスを迎えた。
(本当に、なにこれ……前のアカギとは全然違う。面白すぎる)
舞美はもう興奮して仕方なかった。70000点あった差が一気に縮まったところで、アカギの親。確かにここで浦部がノミ手で和了ってしまい、あっけなく終わる可能性もあるが、アカギがそれを許すだろうか。
が、このオーラス。とうとう舞美はアカギの真意を全くと言っていいほど分からなくなる。
舞美が分かったのは、アカギの暗カンに、またもやドラが爆乗りしたところまでだった。とりあえずこの満貫を和了れば、連荘できるのだが——問題は、役。
舞美は理解に苦しんだ。というのも、こちらから見る限り、彼には役が“ない”のだ。何かを待っているというような手牌でもない。何せ、タンヤオさえも目指していないから。それなのにドラを捨てる。全く筋が通らない。
そしてなぜか、彼は「チー」をした。何の為かも分からない。一体、これになんの利が?
仕方なく対面の浦部に目を向けると、こちらはやはり安パイの連打。向こうもまだ張っていなさそうなのが救いか。
しかしアカギは不気味な打ち回しを続ける……舞美にはアカギの手牌に未来がないように見えた。
このままじゃ折角のドラ4が無駄になってしまう。一体どうしてアカギはこんなことを?
「アカギ……」
「フフ……大丈夫だよ」
(大丈夫? 何が大丈夫なの?)
彼は七筒をポンする。七索をカンしてあるから、ブラフにはなり得る。こんな土壇場の三色同刻のハッタリなど、浦部に通用するかどうかは定かではないが。
それにもう役がない。もしかしてとりあえずただテンパイだけを取りにいっているのだろうか? それも道理が通らないけれど、アカギは次で何か仕掛けを打つのかもしれない。
「ポン」
この終盤のポンについては、舞美は驚かなかった。これで裸単騎テンパイ。当たりさえしなければ連荘できる。
と、ここで舞美もひらめいた。カン、そして今のポンで、ラスヅモは浦部になっている。ここでようやく現れるのだ——テンパイしていれば誰に対しても起こり得る、ある“偶然役”の可能性が。
(もしかしてアカギ、最初からこのホウテイだけを狙って……?)
そう考えると、アカギの変な行動に意味を見出すことができる。こちらからするとアカギのしていることは何の意味も為さないが、浦部の視点に立つと……
(なんてことなの! アカギはこの局、浦部をずっと操っていたんだ)
暗黒カンやドラ切り、タンヤオや三色の匂わせなど全てがアカギが意図して行っていたことだとすると、
(もしかしたら……もしかする、の?)
そして浦部のラスヅモ。
ツモ牌を確認した彼の表情はかなり硬い。
「ここで現物を引けないようじゃ、運も尽きたな」
アカギは嘲笑うかのように、たった一牌のそれをパタンと伏せた。
舞美はその牌がなにかを知っている。
「そこまでだ」
「……えっ?」
舞美は思わず声を上げる。
だって、アカギは席を立ったから。
(どうして? だって、今からでしょ……?)