9.単一性*
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アカギが打ち始めるまで、ひとりで月を見ていると、突如、向こうの部屋から「アカギ!」と彼の名を呼ぶ声が聞こえた。
(とうとう動き出したってわけね!)
舞美はゆっくりと彼のいる場所へ向かった。6年ぶりのアカギの麻雀。どんな闘牌を見せてくれるのだろう?
外から様子を伺うと、石川と組長の背中が見えた。舞美はそろそろと近づいて、彼らの少し後ろあたりに腰を下ろした。
本来なら部外者がこうして入ってくることはできないが、今は相手がとんでもないレートを吹っかけてきている状態。こちらに文句を言うことはできないと踏んでのことだ。
「あ、東雲さん」
比較的前方にいる治が舞美に気づいた。アカギは麻雀牌を混ぜる手を止め、こちらを振り返る。急に目が合ってしまい、舞美は不覚にもどきっとした。
「来たんだ」
彼は目元を緩め、また洗牌の作業に戻った。
舞美は頰に顔を当てる。
(今日は特に……思わせぶりっていうか、なんていうか)
もしかして弄ばれているのではないかと思うほどだ。でも、本音を言ってしまえば、舞美はアカギに遊ばれたかった。
とは言え、今は麻雀に集中。
(平山さんの仇打ち、よね)
そう思って気迫を込めて彼の背中を見るけれども、彼の勝負中のギラついた表情は、どうにも色っぽい。犯罪級、悪魔的だ。
はじめ、アカギは大した動きもなく、手なりの麻雀を打っていた。至って平凡、とも言える。
こうして、舞美がしっかりと初めからアカギの麻雀を見るのは初めてだったので、これは意外だった。しかしまあ、考えてみればそれもそうかと思い直す。
事件が起きたのは、少し経ってからだった。
立直をしているのに浦部の捨て牌を見逃し、挙句流局時「ノーテンだった」と言い張るのだ。
もちろん本当はノーテンではない。舞美もその手牌は見えているし、浦部もそう感じている。罰符として8000点を払うアカギに、舞美は驚きを隠せない。そもそも浦部とはかなりの差があるっていうのに。
(これに一体、なんの意味があるの?)
その場にいる全員が分かっていないだろう。
ただ、アカギは余裕そうに言った。
「これで後の三巡を買う」
……とにかく、これはアカギの作戦なんだろうけど。舞美はそう信じて彼を見守った。
そしてこの彼の奇妙な行動が、舞美のスイッチを入れた。あの頃みたいに、またもや彼は舞美を魅了するのだ。
(どうしよう、アカギが勝負してる。——興奮してきた)
(とうとう動き出したってわけね!)
舞美はゆっくりと彼のいる場所へ向かった。6年ぶりのアカギの麻雀。どんな闘牌を見せてくれるのだろう?
外から様子を伺うと、石川と組長の背中が見えた。舞美はそろそろと近づいて、彼らの少し後ろあたりに腰を下ろした。
本来なら部外者がこうして入ってくることはできないが、今は相手がとんでもないレートを吹っかけてきている状態。こちらに文句を言うことはできないと踏んでのことだ。
「あ、東雲さん」
比較的前方にいる治が舞美に気づいた。アカギは麻雀牌を混ぜる手を止め、こちらを振り返る。急に目が合ってしまい、舞美は不覚にもどきっとした。
「来たんだ」
彼は目元を緩め、また洗牌の作業に戻った。
舞美は頰に顔を当てる。
(今日は特に……思わせぶりっていうか、なんていうか)
もしかして弄ばれているのではないかと思うほどだ。でも、本音を言ってしまえば、舞美はアカギに遊ばれたかった。
とは言え、今は麻雀に集中。
(平山さんの仇打ち、よね)
そう思って気迫を込めて彼の背中を見るけれども、彼の勝負中のギラついた表情は、どうにも色っぽい。犯罪級、悪魔的だ。
はじめ、アカギは大した動きもなく、手なりの麻雀を打っていた。至って平凡、とも言える。
こうして、舞美がしっかりと初めからアカギの麻雀を見るのは初めてだったので、これは意外だった。しかしまあ、考えてみればそれもそうかと思い直す。
事件が起きたのは、少し経ってからだった。
立直をしているのに浦部の捨て牌を見逃し、挙句流局時「ノーテンだった」と言い張るのだ。
もちろん本当はノーテンではない。舞美もその手牌は見えているし、浦部もそう感じている。罰符として8000点を払うアカギに、舞美は驚きを隠せない。そもそも浦部とはかなりの差があるっていうのに。
(これに一体、なんの意味があるの?)
その場にいる全員が分かっていないだろう。
ただ、アカギは余裕そうに言った。
「これで後の三巡を買う」
……とにかく、これはアカギの作戦なんだろうけど。舞美はそう信じて彼を見守った。
そしてこの彼の奇妙な行動が、舞美のスイッチを入れた。あの頃みたいに、またもや彼は舞美を魅了するのだ。
(どうしよう、アカギが勝負してる。——興奮してきた)