8.単純化

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しばらくして車は料亭で止まった。舞美は名残惜しく思いながらアカギの膝から下り、中へ向かう。
石川の後ろを一列になって歩くアカギたち。
彼はふと、ある部屋の前で足を止めた。

「あ」

舞美も声を上げる。そこでは、平山が別の組の男と麻雀を打っていた。話によると、今のところトップ目らしい。それもずっと。

「この雑魚を蹴散らせば、次はおまえの番だ」

平山は自信満々にそう言う。

「その時は、東雲もしっかり見てろよ。こいつが絶対じゃないってことを見せてやる」
「……うん、楽しみにしてる」

舞美は複雑な気持ちで頷き、アカギの顔を見た。彼は気にもとめていない様子。

「行こうか。控えの部屋、用意してるんだろ」

舞美は去り際、部屋の中をもう一度振り返って見たが、平山の対戦相手もこちらを見ており、目が合いそうだったのですぐ視線を変えた。

控えの部屋に行くと、アカギは煙草を取り出し、しかも寝っ転がった。舞美はその横に腰をおろし、真上からアカギの顔を覗き込む。
なんてステキなお顔立ち。こうして見ると、数年前のアカギの面影が浮かんでくる。

「……なに?」

アカギのもったタバコからゆらゆらと煙が上がり、舞美の顔を掠める。漂うニコチンの香りに、舞美は男らしさを感じ取った。

アカギが口元に煙草を運ぶのを、舞美はじっと見つめる。その色気は19歳なんてものじゃなく、何か深みがあるようで。

「フフ、なんだよ」

言葉を失ってアカギに見惚れる舞美に、アカギは柔らかく微笑んだ。それから、フー、と煙を吐き出し、舞美の顔にそっとかける。

「こほっ」

煙くて目が潤むし、慣れてないから咳き込む。

「なに!」

舞美が怒りっぽく言うと、アカギは楽しそうに煙をのんだ。

「あんまりオレの顔を見られても困る。あんただと特に」
「特にって?」
「さあ……自分で考えな」
「余裕だね。この後勝負なのに」

舞美が言うと、治も賛同した。

「さっきの人、ものすごく強そうだった」

しかしアカギは平山があの男に勝つとは限らない、と言い出した。

「どうして?」

彼は目の前にあった麻雀卓で先ほどの闘牌を再現し、それらしい根拠を見せる。彼が言うには、

「どうやら浦部って男の方が、一、二枚格が上」

らしい。
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