8.単純化
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お手洗いから戻ってきた舞美は、目を疑った。アカギと治が消えている。
(油断した……!)
慌てて外に出ると、黒塗りの車が停まっているのが見えた。そこに駆け寄ると、扉が開いた。
後ろの席にはアカギと治が座っている。
「ちょっと! わたしを置いてくなんて!」
「ああ……悪い。あんたには、途中で迎えをやろうと思った」
「どうして? わたしも乗せていってよ」
「この車、2人までしか乗れないらしい」
なにそれ。そんなわけないでしょ。ヤクザにはそういう決まりでもあるのだろうか。
「とにかく、」
強引に乗り込めばこっちの勝ちよ。
石川は驚いてどうしようもなく舞美の動きを見つめる。もちろん、引き下がる気はさらさらない。
舞美はアカギの膝の上に腰を下ろした。
「ちょっと、あんた」
アカギの両手が行き場を失い、珍しく反応に困っている。舞美は「問題ないでしょ」と言い放つ。誰も文句は言えず、扉が閉まって、車は進み始めた。苦笑する石川がミラー越しで見えたので、少し恥ずかしくなった。
アカギは両足を開き、股の間に舞美を座らせるようにした。彼とこんなにも密着できるなんて。すぐ後ろから彼のやれやれといったため息が聞こえ、その距離感にぞくぞくする。
しかし、運転中彼女の姿勢は安定せず、もちろんシートベルトなんかも付けないので、舞美は大きく揺れた。それを見かねてか、とうとう、お腹のあたりにアカギの腕が回された。
「わ、」
「……嫌なら言いな」
耳元でぼそっと囁かれ、舞美は耳を赤くする。ふるふると首を振り、なんとか嫌じゃないことを伝える。それよりも心臓がうるさい。
「大丈夫か?」
何か様子がおかしいと思われたに違いない。アカギに顔を覗き込まれ、舞美は「だ、だいじょうぶだから」となんとか声を発する。
「そう」
アカギは安心したように背もたれに背をつけ、舞美を自分の方へ寄せた。アカギに包まれている舞美は「なんでもない」といった顔をして窓の外から景色を眺めるフリをする。
別に車内を見てたって良いのだが、この状態で治や石川と目を合わせると気まずいし。
でも今どこを走っているかなんて全然頭に入ってこない。アカギがこんなに近くにいる。それだけで脳みそはもう限界を迎えてしまいそう。
彼女は静かに息を吐く。今日ほど赤信号を求める日はこの先そうそうないだろう。
(油断した……!)
慌てて外に出ると、黒塗りの車が停まっているのが見えた。そこに駆け寄ると、扉が開いた。
後ろの席にはアカギと治が座っている。
「ちょっと! わたしを置いてくなんて!」
「ああ……悪い。あんたには、途中で迎えをやろうと思った」
「どうして? わたしも乗せていってよ」
「この車、2人までしか乗れないらしい」
なにそれ。そんなわけないでしょ。ヤクザにはそういう決まりでもあるのだろうか。
「とにかく、」
強引に乗り込めばこっちの勝ちよ。
石川は驚いてどうしようもなく舞美の動きを見つめる。もちろん、引き下がる気はさらさらない。
舞美はアカギの膝の上に腰を下ろした。
「ちょっと、あんた」
アカギの両手が行き場を失い、珍しく反応に困っている。舞美は「問題ないでしょ」と言い放つ。誰も文句は言えず、扉が閉まって、車は進み始めた。苦笑する石川がミラー越しで見えたので、少し恥ずかしくなった。
アカギは両足を開き、股の間に舞美を座らせるようにした。彼とこんなにも密着できるなんて。すぐ後ろから彼のやれやれといったため息が聞こえ、その距離感にぞくぞくする。
しかし、運転中彼女の姿勢は安定せず、もちろんシートベルトなんかも付けないので、舞美は大きく揺れた。それを見かねてか、とうとう、お腹のあたりにアカギの腕が回された。
「わ、」
「……嫌なら言いな」
耳元でぼそっと囁かれ、舞美は耳を赤くする。ふるふると首を振り、なんとか嫌じゃないことを伝える。それよりも心臓がうるさい。
「大丈夫か?」
何か様子がおかしいと思われたに違いない。アカギに顔を覗き込まれ、舞美は「だ、だいじょうぶだから」となんとか声を発する。
「そう」
アカギは安心したように背もたれに背をつけ、舞美を自分の方へ寄せた。アカギに包まれている舞美は「なんでもない」といった顔をして窓の外から景色を眺めるフリをする。
別に車内を見てたって良いのだが、この状態で治や石川と目を合わせると気まずいし。
でも今どこを走っているかなんて全然頭に入ってこない。アカギがこんなに近くにいる。それだけで脳みそはもう限界を迎えてしまいそう。
彼女は静かに息を吐く。今日ほど赤信号を求める日はこの先そうそうないだろう。