7.緊張感
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あれよあれよという間に、治は大敗してしまう。
「じゃ、これは貰ってくぜ」
給料を奪われふるふると震える治。泣きそうな彼に、舞美も同情する。
「悪かったな。オレが打ってりゃ」
アカギの言葉に、治は動きを止めてはっきりと言った。
「いえ。結局、やったのはオレなんですから」
その発言の後、アカギは「フッ」と笑ったような気がする。もしかして、今ので彼は治のことを気に入ったのかもしれない。
「じゃあな。せいぜいそこの女とよろしくやってろよ」
「なっ!」
舞美は男たちの失礼な物言いにむっとする。
と、その時。
「先輩方」
アカギは部屋から出て行こうとする彼らを止めた。
「オレとひと勝負しませんか」
「明日にしろ。もう眠いんだ」
アカギはそんなこと分かってると言ったように、先ほどの200万を卓の上に置いた。
現在の価値にして2000万以上といったところか。
庶民の先輩方は、すぐ目の色を変えた。
「眠気は、覚めましたか」
「おまえ、その金……!」
「あぶく銭ですよ」
「あぶく銭……? 女の前だからって格好つけてんのか」
「まさか。オレとのギャンブルに勝ったら、遠慮なく持ってってください」
「……何をするつもりだ?」
舞美も興味津々の中、アカギは治の手牌を使ったギャンブルを説明した。アカギの敬語はやはりぞくぞくする。
男たちは何やらヒソヒソ話し合ってから、全財産を賭けることにしたらしい。通帳や印鑑を卓に乗せ、参加の意を表明する。
「けっこう。」
「待て。オレらが勝ったら、そのおまえが買った女も頂こうか」
「……は?」
舞美は思わず声を出す。何それ、どういう理屈?
少しの間のあと、舞美は合点した。
(あいつら、アカギが金でわたしを買ったって勘違いしてるんだ)
アカギはやれやれと息をついた。
「それはできませんね」
「どうしてだよ。オレたちは全財産を賭けてるんだぜ。おまえもそうするべきだろ」
「東雲は商品じゃないんですよ」
「え?」
「確かに美人かもしれないが、彼女は素人だ」
「全くだよ。失礼しちゃう」
舞美はフンと鼻を鳴らした。まあ、アカギに買われたら……ついていっちゃう自信あるけど。って、え? 今、わたしのこと美人って言わなかった?
「嘘をつくなよ。おまえ、宿がないから泊めてやる、って言い分が通ると本当に思ってるのか?」
一向に信じようとしない先輩に、アカギは低い声で言った。
「オレの女ですので」
「なっ……」
堂々と言うものだから、彼らはあからさまに怯んだ。一方、舞美も体温を上昇させる。
(お、オレの女だなんて)
その隙に、アカギは「それじゃあ行きますよ」と言って、ドラ表示牌を手に取った。
「お、おい!」
「いけないんですか?」
真顔で言うアカギに、先輩方も正論を叩きつける。アカギは冗談ですよ、と牌を元に戻した。
アカギがそれを元に戻す瞬間。
舞美は卓の下で誰かに手を握られる。
見ると、アカギの左手が自分の手を握っているのが分かった。それは一瞬だけで、牌を戻し終わるとすぐに離したものの、舞美はそれだけで赤面した。
(なんで、こんな、ヒミツみたいに……?)
アカギの横顔を盗み見るものの、彼は平然とした顔をしてまた別の牌を取った。
舞美はできるだけアカギ本人よりもアカギの手元に集中するよう努力する。
だって、心臓が持ちそうにない。
アカギは持ってきた牌を手牌に加え、不要なものを切り返した。
「なっ……⁈」
「これは譲れない。どうせ待ち牌はあんたが握りつぶしてるんだろ」
「うっ」
それでも、12分の1がアカギに引けないとタカをくくったのか、続行する彼ら。可哀想に、アカギの実力を知らないからこうなるんだ。
彼は平山とのシャンテン数勝負でそれよりもっと低い確率を潜り抜けてきたばかり。
こんなもの朝飯前だろう。
「アガリだ」
彼は待ちである“西”を難なくツモり、見事和了した。
「では遠慮なく」
そう言って彼らの全財産を懐に仕舞い、また部屋を出るアカギ。
「ついてきな」
振り返らずに呼びかけられ、舞美はうっとりと彼の背中を追った。しかし、アカギに続いたのは舞美だけではない。
あの治も舞美にくっついて出てきたのだった。
「じゃ、これは貰ってくぜ」
給料を奪われふるふると震える治。泣きそうな彼に、舞美も同情する。
「悪かったな。オレが打ってりゃ」
アカギの言葉に、治は動きを止めてはっきりと言った。
「いえ。結局、やったのはオレなんですから」
その発言の後、アカギは「フッ」と笑ったような気がする。もしかして、今ので彼は治のことを気に入ったのかもしれない。
「じゃあな。せいぜいそこの女とよろしくやってろよ」
「なっ!」
舞美は男たちの失礼な物言いにむっとする。
と、その時。
「先輩方」
アカギは部屋から出て行こうとする彼らを止めた。
「オレとひと勝負しませんか」
「明日にしろ。もう眠いんだ」
アカギはそんなこと分かってると言ったように、先ほどの200万を卓の上に置いた。
現在の価値にして2000万以上といったところか。
庶民の先輩方は、すぐ目の色を変えた。
「眠気は、覚めましたか」
「おまえ、その金……!」
「あぶく銭ですよ」
「あぶく銭……? 女の前だからって格好つけてんのか」
「まさか。オレとのギャンブルに勝ったら、遠慮なく持ってってください」
「……何をするつもりだ?」
舞美も興味津々の中、アカギは治の手牌を使ったギャンブルを説明した。アカギの敬語はやはりぞくぞくする。
男たちは何やらヒソヒソ話し合ってから、全財産を賭けることにしたらしい。通帳や印鑑を卓に乗せ、参加の意を表明する。
「けっこう。」
「待て。オレらが勝ったら、そのおまえが買った女も頂こうか」
「……は?」
舞美は思わず声を出す。何それ、どういう理屈?
少しの間のあと、舞美は合点した。
(あいつら、アカギが金でわたしを買ったって勘違いしてるんだ)
アカギはやれやれと息をついた。
「それはできませんね」
「どうしてだよ。オレたちは全財産を賭けてるんだぜ。おまえもそうするべきだろ」
「東雲は商品じゃないんですよ」
「え?」
「確かに美人かもしれないが、彼女は素人だ」
「全くだよ。失礼しちゃう」
舞美はフンと鼻を鳴らした。まあ、アカギに買われたら……ついていっちゃう自信あるけど。って、え? 今、わたしのこと美人って言わなかった?
「嘘をつくなよ。おまえ、宿がないから泊めてやる、って言い分が通ると本当に思ってるのか?」
一向に信じようとしない先輩に、アカギは低い声で言った。
「オレの女ですので」
「なっ……」
堂々と言うものだから、彼らはあからさまに怯んだ。一方、舞美も体温を上昇させる。
(お、オレの女だなんて)
その隙に、アカギは「それじゃあ行きますよ」と言って、ドラ表示牌を手に取った。
「お、おい!」
「いけないんですか?」
真顔で言うアカギに、先輩方も正論を叩きつける。アカギは冗談ですよ、と牌を元に戻した。
アカギがそれを元に戻す瞬間。
舞美は卓の下で誰かに手を握られる。
見ると、アカギの左手が自分の手を握っているのが分かった。それは一瞬だけで、牌を戻し終わるとすぐに離したものの、舞美はそれだけで赤面した。
(なんで、こんな、ヒミツみたいに……?)
アカギの横顔を盗み見るものの、彼は平然とした顔をしてまた別の牌を取った。
舞美はできるだけアカギ本人よりもアカギの手元に集中するよう努力する。
だって、心臓が持ちそうにない。
アカギは持ってきた牌を手牌に加え、不要なものを切り返した。
「なっ……⁈」
「これは譲れない。どうせ待ち牌はあんたが握りつぶしてるんだろ」
「うっ」
それでも、12分の1がアカギに引けないとタカをくくったのか、続行する彼ら。可哀想に、アカギの実力を知らないからこうなるんだ。
彼は平山とのシャンテン数勝負でそれよりもっと低い確率を潜り抜けてきたばかり。
こんなもの朝飯前だろう。
「アガリだ」
彼は待ちである“西”を難なくツモり、見事和了した。
「では遠慮なく」
そう言って彼らの全財産を懐に仕舞い、また部屋を出るアカギ。
「ついてきな」
振り返らずに呼びかけられ、舞美はうっとりと彼の背中を追った。しかし、アカギに続いたのは舞美だけではない。
あの治も舞美にくっついて出てきたのだった。