7.緊張感
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「危うく見過ごすところだった」
見過ごす……? そんな言い方をするってことは、それってつまり。
「貴様抜いたな? この牌の中から。本当に選んだ牌は、まだ手の中だ!」
アカギは背を向けていたが、くるりと振り返ってこちらを向いた。
「ふーん。気が付いたか」
その拳の中で、チャッ、と牌のぶつかる音がする。平山の見立ては間違っていなかった。
舞美もアカギの鮮やかな手法に度肝を抜かれる。
(気がつかなかった)
なんて美しいイカサマなんだろう。
「原始的な細工だが、こういう実践ではけっこう効果的なんだよな。少なくともおたくのしち面倒くさい確率の計算よりはさ……」
「黙れ! 金は置いていきな」
「アカギ……」
南郷と舞美は同時にアカギの名を呼んだ。そのハモリに、アカギはフフっと笑う。
「心配すんなって、舞美」
彼は「南郷さんも」と言って、彼の手に牌を3つ落とすと、「じゃ……」と向こうへ行ってしまった。
「おい!」
もう平山の声はアカギを止めることはできない。舞美は走って彼を引き止めようかと思ったが、その前に南郷が声を上げた。
「そ、そろってる……!」
「え?」
「ああ、アカギはすり替えなんか使わなくても、選んでいたんだ……指定の3牌を!」
「そ、そんなバカな。残った牌を調べりゃ分かる」
(冗談じゃない、よね)
舞美は我慢できずにとうとう立ち上がり、南郷の手のひらを覗きに行った。
「南郷さん見せて」
「ほ、ほら」
「……すごい。ほんとだ……」
改めて一萬・一索・四索を目にした舞美は、身震いを1つした。
確率なんてぬるいもの、全部超えちゃってる。どうしよう、くらくらしそう。あ、そうだ。アカギを見失う前に、追いかけないと!
舞美は、「南郷さん、ありがとう」と言ってから、アカギの帰った方へ向かいだす。
「あ、舞美ちゃん⁈」
「組長、失礼します」
挨拶もそぞろに、襖を開けて走り出す。
背後からは、安岡が「あいつとは関わり合うな」と平山に諭している声が聞こえた。
舞美は今からそのアカギに関わりに行くところなので、少しだけむっとする。
(わたしには関係ない。例え危険な目に遭うとしても、わたしはアカギといたいから)
———————————————————————————
「くそっ、なんなんだアイツは……! 東雲も意味分かんねーよ」
「ああ……舞美ちゃんか」
「命を賭けたことがあるって? そうまでして金が欲しかったのか? 気が狂ってるんだよ、あの女も」
「……いや、あの日、あの子はノーリターンで命を賭けたんだ」
「の、ノーリターン?」
「ただアカギと一緒にいたいが為に、アカギが勝負に負けたら自分を“使え”とヤクザに申し立てたんだよ」
「はっ……?」
「そんな顔するなよ。オレにだって分からねえ。が、あの子ならアカギと関われるかもしれないな……」
———————————————————————————
「中々面白かったな、石川」
「はい」
「アカギもそうだが、あの女……、ええと」
「東雲でしょうか」
「そう、東雲。あやつも中々に光ったものを持っておるな。……興味深い」
見過ごす……? そんな言い方をするってことは、それってつまり。
「貴様抜いたな? この牌の中から。本当に選んだ牌は、まだ手の中だ!」
アカギは背を向けていたが、くるりと振り返ってこちらを向いた。
「ふーん。気が付いたか」
その拳の中で、チャッ、と牌のぶつかる音がする。平山の見立ては間違っていなかった。
舞美もアカギの鮮やかな手法に度肝を抜かれる。
(気がつかなかった)
なんて美しいイカサマなんだろう。
「原始的な細工だが、こういう実践ではけっこう効果的なんだよな。少なくともおたくのしち面倒くさい確率の計算よりはさ……」
「黙れ! 金は置いていきな」
「アカギ……」
南郷と舞美は同時にアカギの名を呼んだ。そのハモリに、アカギはフフっと笑う。
「心配すんなって、舞美」
彼は「南郷さんも」と言って、彼の手に牌を3つ落とすと、「じゃ……」と向こうへ行ってしまった。
「おい!」
もう平山の声はアカギを止めることはできない。舞美は走って彼を引き止めようかと思ったが、その前に南郷が声を上げた。
「そ、そろってる……!」
「え?」
「ああ、アカギはすり替えなんか使わなくても、選んでいたんだ……指定の3牌を!」
「そ、そんなバカな。残った牌を調べりゃ分かる」
(冗談じゃない、よね)
舞美は我慢できずにとうとう立ち上がり、南郷の手のひらを覗きに行った。
「南郷さん見せて」
「ほ、ほら」
「……すごい。ほんとだ……」
改めて一萬・一索・四索を目にした舞美は、身震いを1つした。
確率なんてぬるいもの、全部超えちゃってる。どうしよう、くらくらしそう。あ、そうだ。アカギを見失う前に、追いかけないと!
舞美は、「南郷さん、ありがとう」と言ってから、アカギの帰った方へ向かいだす。
「あ、舞美ちゃん⁈」
「組長、失礼します」
挨拶もそぞろに、襖を開けて走り出す。
背後からは、安岡が「あいつとは関わり合うな」と平山に諭している声が聞こえた。
舞美は今からそのアカギに関わりに行くところなので、少しだけむっとする。
(わたしには関係ない。例え危険な目に遭うとしても、わたしはアカギといたいから)
———————————————————————————
「くそっ、なんなんだアイツは……! 東雲も意味分かんねーよ」
「ああ……舞美ちゃんか」
「命を賭けたことがあるって? そうまでして金が欲しかったのか? 気が狂ってるんだよ、あの女も」
「……いや、あの日、あの子はノーリターンで命を賭けたんだ」
「の、ノーリターン?」
「ただアカギと一緒にいたいが為に、アカギが勝負に負けたら自分を“使え”とヤクザに申し立てたんだよ」
「はっ……?」
「そんな顔するなよ。オレにだって分からねえ。が、あの子ならアカギと関われるかもしれないな……」
———————————————————————————
「中々面白かったな、石川」
「はい」
「アカギもそうだが、あの女……、ええと」
「東雲でしょうか」
「そう、東雲。あやつも中々に光ったものを持っておるな。……興味深い」