7.緊張感
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「そうか、読めたぞ。おまえはこの勝負、最初から受ける気はなかったんだ」
平山はそう述べ、卓をドンと叩いた。舞美は感情的な平山に驚きはしたものの、それを表情には出さず、あくまで冷静に眺める。
「女まで引き合いに出しやがって……!」
その時。「まあ、待て」と止めを入れたのは、川田組長その人だった。
「おまえの言い分も分かるが、今は金で測る時代だ」
そのタイミングに合わせて黒服が小包を持ってきた。それを卓の上にそっと置く。
はらりと布をどかせば、そこには札束が現れた。
「200万ある。……それは給料袋のようだな。どうだ、それと取りっこしてみんか。金額の差は確率の差と考えてもらって良い。馬券を買うようなもんじゃ」
一見関係のない舞美は、目を輝かせた。つまり、勝負が始まるんでしょ? だってアカギが断るわけがないんだから。
6年ぶりのアカギの勝負が見られるとは。舞美は高揚する。彼女はギャンブルの熱にうかされていた。
「買いましょう、その馬券」
舞美の見立て通り、アカギは給料袋らしき茶封筒を札束の上にパサリと置いた。
その瞬間、隣から舌打ちが聞こえた。苦々しい顔をした安岡を見れば、その音の主が誰かなど尋ねるまでもない。
「余計なことを」
「え?」
「あの男は別なんだよ」
「別……?」
確かに安岡からすると、アカギはビジネスの邪魔者だろう。全く、アカギの魅力を分かっておいて、彼の勝負を素直に喜べないなんて可哀想な立場だ。
一方アカギは、既に獲物を狩るような鋭い目つきで卓をじっと見つめている。その真剣な顔つきに、舞美の女の部分が反応する。
つまりアカギは女たらしならぬ舞美たらしなのだ。
「何をじっと見つめている? 牌が透けてくるとでも言うのか?」
「そうさ」
(そんな自信満々に言うなんて)
「そのくらいの感覚がなければ、この6年間、とても生き延びれなかった……」
(ほんとうに、アカギに何があったんだろう?)
アカギはキュッ、と人差し指で牌を1つずつ端に寄せ、3つまとめて 手の内に握った。
もう決まったというのか、その3牌が。
アカギは握りこぶしを顔の横まで持ってきて、それはそれは悪戯な笑みを浮かべた。
にっ、と笑ったその口から白い歯が覗く。
もしかして、こちらに笑いかけている?
まるで、“見てな” と言っているみたい。
そして、彼はその手から牌を落とした。
流石アカギ、2牌は指定したものだが、もう1牌は裏を向いてしまっていて分からない。
ドキドキする。アカギには勝ってほしい。
舞美は自分にも牌が透けて見えるような気がした。たぶん、あれは指定の牌なんだろう。
(わたしだって、そのくらいの愛がなければ、とてもあなたを想い続けられなかった)
それに応えるように、アカギはその長い綺麗な人差し指を伸ばし、牌をくるりとひっくり返した。
一萬。
これは指定の牌だ。
「やった!」
南郷が声を上げて喜ぶ。舞美もはしゃぎたい気持ちでいっぱいになった。
アカギは給料袋の乗った200万に手を掛けて懐に入れると、さっと立ち上がる。
「じゃあ組長、また」
「えっ」
背を向けて襖へと向かうので、彼女は腰を上げてアカギを追おうとした。
ちょっと、置いていかないでよ!
そこで声を上げたのは、またもや平山だった。
「待て!」
すると、アカギは意外にも足を止める。
舞美はアカギに惚れ直しながらも、少し拗ねていた。
(どうして先に行こうとするわけ?)
平山はそう述べ、卓をドンと叩いた。舞美は感情的な平山に驚きはしたものの、それを表情には出さず、あくまで冷静に眺める。
「女まで引き合いに出しやがって……!」
その時。「まあ、待て」と止めを入れたのは、川田組長その人だった。
「おまえの言い分も分かるが、今は金で測る時代だ」
そのタイミングに合わせて黒服が小包を持ってきた。それを卓の上にそっと置く。
はらりと布をどかせば、そこには札束が現れた。
「200万ある。……それは給料袋のようだな。どうだ、それと取りっこしてみんか。金額の差は確率の差と考えてもらって良い。馬券を買うようなもんじゃ」
一見関係のない舞美は、目を輝かせた。つまり、勝負が始まるんでしょ? だってアカギが断るわけがないんだから。
6年ぶりのアカギの勝負が見られるとは。舞美は高揚する。彼女はギャンブルの熱にうかされていた。
「買いましょう、その馬券」
舞美の見立て通り、アカギは給料袋らしき茶封筒を札束の上にパサリと置いた。
その瞬間、隣から舌打ちが聞こえた。苦々しい顔をした安岡を見れば、その音の主が誰かなど尋ねるまでもない。
「余計なことを」
「え?」
「あの男は別なんだよ」
「別……?」
確かに安岡からすると、アカギはビジネスの邪魔者だろう。全く、アカギの魅力を分かっておいて、彼の勝負を素直に喜べないなんて可哀想な立場だ。
一方アカギは、既に獲物を狩るような鋭い目つきで卓をじっと見つめている。その真剣な顔つきに、舞美の女の部分が反応する。
つまりアカギは女たらしならぬ舞美たらしなのだ。
「何をじっと見つめている? 牌が透けてくるとでも言うのか?」
「そうさ」
(そんな自信満々に言うなんて)
「そのくらいの感覚がなければ、この6年間、とても生き延びれなかった……」
(ほんとうに、アカギに何があったんだろう?)
アカギはキュッ、と人差し指で牌を1つずつ端に寄せ、3つまとめて 手の内に握った。
もう決まったというのか、その3牌が。
アカギは握りこぶしを顔の横まで持ってきて、それはそれは悪戯な笑みを浮かべた。
にっ、と笑ったその口から白い歯が覗く。
もしかして、こちらに笑いかけている?
まるで、“見てな” と言っているみたい。
そして、彼はその手から牌を落とした。
流石アカギ、2牌は指定したものだが、もう1牌は裏を向いてしまっていて分からない。
ドキドキする。アカギには勝ってほしい。
舞美は自分にも牌が透けて見えるような気がした。たぶん、あれは指定の牌なんだろう。
(わたしだって、そのくらいの愛がなければ、とてもあなたを想い続けられなかった)
それに応えるように、アカギはその長い綺麗な人差し指を伸ばし、牌をくるりとひっくり返した。
一萬。
これは指定の牌だ。
「やった!」
南郷が声を上げて喜ぶ。舞美もはしゃぎたい気持ちでいっぱいになった。
アカギは給料袋の乗った200万に手を掛けて懐に入れると、さっと立ち上がる。
「じゃあ組長、また」
「えっ」
背を向けて襖へと向かうので、彼女は腰を上げてアカギを追おうとした。
ちょっと、置いていかないでよ!
そこで声を上げたのは、またもや平山だった。
「待て!」
すると、アカギは意外にも足を止める。
舞美はアカギに惚れ直しながらも、少し拗ねていた。
(どうして先に行こうとするわけ?)