6.真と偽
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——6年後
待てど暮らせど、赤木しげるは舞美の元に来なかった。彼は本当に実在していたのだろうか。あれは全部、自分が創り出した妄想、あるいは夢だったのではないだろうか。
舞美はもう、アカギに会えるとは思っていなかった。どこかで野垂れ死んでいるのか、もう手の届かない遠くへ行ってしまったのか。
あの頃から幾分か大人になった彼女は、深くため息をつく。彼のこと、好きだったのに。
彼に近づきたくて、あれから麻雀も勉強した。
もちろん舞美は一般人レベルだが、おかげであの時のアカギがどれだけ化け物染みていたのかがよく分かった。そして、彼は自分には絶対に届かない領域にいるってことも。
(それでも、忘れられない)
彼女は、持ち合わせていた度胸のために、中途半端に闇を知ってしまった。
赤木しげるを一度知った女は、彼を忘れられない呪いにかかってしまう。
だから度々、こうして夜散歩をしていた。
(もう、わたしも大人にならなくちゃいけないのかな)
と、そんな時。
それは全くの、偶然だった。
「まさか、あの“アカギ”がねえ」
「な。本当にいたんだな」
ふと聞こえてきた、そんな会話。
「え……?」
聞き逃さなかった舞美は、たった今通り過ぎた2人組の男を慌てて追いかける。
「ま、待って!」
「お、おぉ……⁈ なんだ、どうしたよ」
驚くのも無理はない。若い女がこんな夜に、血相変えて駆け寄ってきたんだから。
「いま……、いま、なんの話してた?」
「え……?」
「あ、アカギって言わなかった?」
確かめるように尋ねると、ちょっとした間の後に揃って頷く男たち。
「ああ、言ったけど……それがどうした?」
「それって、その、もしかして、アカギ……赤木しげるって人?」
心臓がうるさい。こんなことってあるだろうか。頼むからそう言ってほしい、と舞美は心の内で懇願する。
「赤木しげる……、そう、そうだよ」
「ほ、本当に⁈ 麻雀の⁈」
「そ、そうだって」
ど、ど、ど。
舞美は上気して喉を鳴らした。
「どこにいるの?」
男は来た方の道をそっと指差す。
「向こうの雀荘……。派手だから行きゃあすぐ分かると思うが」
「まさか、手ぇ出さないよな? やめとけよ、むしり取られるぜ」
「わ、分かってるよそんなこと」
舞美は「本当にありがとう」と頭を下げ、アカギの居場所を教えてくれた2人に、強引に小銭を渡してからそちらの道へ走った。
(冗談みたい。アカギに会えるなんて)
彼はどう大人になったのか。会ったら何を話そう、でもまずは来てくれなかった文句を言わないと。彼女は色々考えを膨らませながら、勇気を出して雀荘の扉を開けた。
待てど暮らせど、赤木しげるは舞美の元に来なかった。彼は本当に実在していたのだろうか。あれは全部、自分が創り出した妄想、あるいは夢だったのではないだろうか。
舞美はもう、アカギに会えるとは思っていなかった。どこかで野垂れ死んでいるのか、もう手の届かない遠くへ行ってしまったのか。
あの頃から幾分か大人になった彼女は、深くため息をつく。彼のこと、好きだったのに。
彼に近づきたくて、あれから麻雀も勉強した。
もちろん舞美は一般人レベルだが、おかげであの時のアカギがどれだけ化け物染みていたのかがよく分かった。そして、彼は自分には絶対に届かない領域にいるってことも。
(それでも、忘れられない)
彼女は、持ち合わせていた度胸のために、中途半端に闇を知ってしまった。
赤木しげるを一度知った女は、彼を忘れられない呪いにかかってしまう。
だから度々、こうして夜散歩をしていた。
(もう、わたしも大人にならなくちゃいけないのかな)
と、そんな時。
それは全くの、偶然だった。
「まさか、あの“アカギ”がねえ」
「な。本当にいたんだな」
ふと聞こえてきた、そんな会話。
「え……?」
聞き逃さなかった舞美は、たった今通り過ぎた2人組の男を慌てて追いかける。
「ま、待って!」
「お、おぉ……⁈ なんだ、どうしたよ」
驚くのも無理はない。若い女がこんな夜に、血相変えて駆け寄ってきたんだから。
「いま……、いま、なんの話してた?」
「え……?」
「あ、アカギって言わなかった?」
確かめるように尋ねると、ちょっとした間の後に揃って頷く男たち。
「ああ、言ったけど……それがどうした?」
「それって、その、もしかして、アカギ……赤木しげるって人?」
心臓がうるさい。こんなことってあるだろうか。頼むからそう言ってほしい、と舞美は心の内で懇願する。
「赤木しげる……、そう、そうだよ」
「ほ、本当に⁈ 麻雀の⁈」
「そ、そうだって」
ど、ど、ど。
舞美は上気して喉を鳴らした。
「どこにいるの?」
男は来た方の道をそっと指差す。
「向こうの雀荘……。派手だから行きゃあすぐ分かると思うが」
「まさか、手ぇ出さないよな? やめとけよ、むしり取られるぜ」
「わ、分かってるよそんなこと」
舞美は「本当にありがとう」と頭を下げ、アカギの居場所を教えてくれた2人に、強引に小銭を渡してからそちらの道へ走った。
(冗談みたい。アカギに会えるなんて)
彼はどう大人になったのか。会ったら何を話そう、でもまずは来てくれなかった文句を言わないと。彼女は色々考えを膨らませながら、勇気を出して雀荘の扉を開けた。