5.岐れ道
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
舞美は不意にこわくなって、暗がりの中アカギの背中に尋ねた。
「アカギは、どこに行くの」
「……“どこ”か」
アカギは目を伏せていた。
「さてね」
不審に思った舞美は、眉をひそめた。
「さてねって……?」
アカギは舞美を真っ直ぐ見据え、ふっと息をつく。
「オレにも分からない。もちろん、あんたにもね」
「……そう」
舞美も思わず目を伏せる。
元々どこにいたのかも分からない少年の行き先など、聞いてどうするつもりだったのだろう。
とにかく、そんな言い方をされたということは、もう舞美は彼についていけないということだ。舞美には学校があるし、何より彼がそれを望んでいないような気がした。
だから舞美が言えたのは、
「気が向いたら、わたしのところに遊びにきて」
といった、まるで社交辞令のような言葉。
ただ、社交辞令と違ったのは、舞美は心の底からアカギに来て欲しいと思っているところだ。
「ああ、そうするよ」
彼は答えた。
気が向いたら、ね。
そう付け加えた彼が、舞美の元を訪れたくなる時など来るのだろうか。
きっとこない、そう考えると胸が苦しくなった。
「ねえ、そんな顔されるとオレも参るんだけど」
「え?」
「……送ってくよ。あんたの家、こっちだろ」
「あ、ありがと」
送ってもらえるという事実に、アカギに嫌われてはいないんだな、と舞美は安心した。
もう、それで満足しよう。
家に着くと、もう別れの時間がやってくる。
やはりアカギは中まで入らない。それどころか、そのまま「じゃ」と来た道を戻ろうとしてしまう。
「あ、待って」
舞美は慌てて彼を引き止めた。疑問符を頭に浮かべ振り返るアカギ。舞美はその後に続く言葉を必死に探した。
が、彼を引き止めることのできそうな“なにか”が思い浮かばない。
どうしよう。
焦った舞美は、気がつけばアカギの元へ走っていた。
「どうしたの」
アカギは、舞美を心配するかのように、少しかがんで彼女の顔を覗き込んだ。
彼の瞳が、この瞬間、自分だけに向けられている。舞美はその美しさに酔わされた。
そして、その勢いのままアカギに抱きつき、
「わたし、待ってるから」
と彼の耳元で呟いた。そして一瞬でアカギの元を離れ、振り返ることなく家まで駆け抜けた。
彼の反応を見る余裕なんて、なかった。
アカギの体温を感じたのなんて、一瞬だった。
家の中に入り玄関の扉に背をつけ、はぁはぁと真っ赤な顔で息をする。ちらりとドアの隙間から外を伺い見たが、白い髪の少年はもう、そこにはいなかった。
「アカギは、どこに行くの」
「……“どこ”か」
アカギは目を伏せていた。
「さてね」
不審に思った舞美は、眉をひそめた。
「さてねって……?」
アカギは舞美を真っ直ぐ見据え、ふっと息をつく。
「オレにも分からない。もちろん、あんたにもね」
「……そう」
舞美も思わず目を伏せる。
元々どこにいたのかも分からない少年の行き先など、聞いてどうするつもりだったのだろう。
とにかく、そんな言い方をされたということは、もう舞美は彼についていけないということだ。舞美には学校があるし、何より彼がそれを望んでいないような気がした。
だから舞美が言えたのは、
「気が向いたら、わたしのところに遊びにきて」
といった、まるで社交辞令のような言葉。
ただ、社交辞令と違ったのは、舞美は心の底からアカギに来て欲しいと思っているところだ。
「ああ、そうするよ」
彼は答えた。
気が向いたら、ね。
そう付け加えた彼が、舞美の元を訪れたくなる時など来るのだろうか。
きっとこない、そう考えると胸が苦しくなった。
「ねえ、そんな顔されるとオレも参るんだけど」
「え?」
「……送ってくよ。あんたの家、こっちだろ」
「あ、ありがと」
送ってもらえるという事実に、アカギに嫌われてはいないんだな、と舞美は安心した。
もう、それで満足しよう。
家に着くと、もう別れの時間がやってくる。
やはりアカギは中まで入らない。それどころか、そのまま「じゃ」と来た道を戻ろうとしてしまう。
「あ、待って」
舞美は慌てて彼を引き止めた。疑問符を頭に浮かべ振り返るアカギ。舞美はその後に続く言葉を必死に探した。
が、彼を引き止めることのできそうな“なにか”が思い浮かばない。
どうしよう。
焦った舞美は、気がつけばアカギの元へ走っていた。
「どうしたの」
アカギは、舞美を心配するかのように、少しかがんで彼女の顔を覗き込んだ。
彼の瞳が、この瞬間、自分だけに向けられている。舞美はその美しさに酔わされた。
そして、その勢いのままアカギに抱きつき、
「わたし、待ってるから」
と彼の耳元で呟いた。そして一瞬でアカギの元を離れ、振り返ることなく家まで駆け抜けた。
彼の反応を見る余裕なんて、なかった。
アカギの体温を感じたのなんて、一瞬だった。
家の中に入り玄関の扉に背をつけ、はぁはぁと真っ赤な顔で息をする。ちらりとドアの隙間から外を伺い見たが、白い髪の少年はもう、そこにはいなかった。