1.不良娘
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「来た……」
舞美は思わず呟いていた。
向こうから急に現れた外車。今夜の対決相手であることは間違いない。
それは既に止まっている高級車の隣に並んだ。
2つは互いにエンジン音を立てて威嚇しているように見える。取り巻きたちも何か騒ぎ始めた。勝負に関する取り決めでも話しているのだろうか。
しかし、どう頑張っても、舞美には運転席に座っている相手の姿が見えなかった。どんな人が乗っているのか見たいのに、見えない。
まあ、良い。
舞美は思った。
レースが終われば、彼らは車を降りてくるんだから、その時に顔を拝めば良いだろう、と。
そうこうする内、蜘蛛の子を散らすように人だかりが避け、そこには二台の車だけが残った。
とうとうチキンランが始まる。舞美は興奮しながら、固唾を呑んで見守った。
スタートの合図と共に、猛スピードで断崖に向かって走り出す車。どちらもブレーキをかける様子はなく、むしろどんどん速度を上げていく。舞美は胸に手を当てた。
このまま行くと、車は乗り捨てだろうか?
車が落ちる瞬間に、運転席から飛び降りることで、自分が臆病者ではないと証明するのかもしれない。なるほど。それなら確かに勇者だ。
問題は、左側の車だ。運転席は右にあるのだから、左側の車は乗り捨てができない。
彼は一体、この状況をどのように切り抜けるんだろう?
舞美は勝負の行方を見守った。
が、車が断崖に近づくにつれ、とある疑惑を胸に抱える。その疑惑が確信に変わったのは、事が起きてからだった。
「あっ⁉︎」
聞いたこともないような轟音。それから、波の音。
物陰から飛び出た舞美は、すぐに海の方へパタパタと走った。
あり得ない。馬鹿なの?
まさか、二台とも落ちるなんて。
不良たちは舞美のことなどお構い無しで、仲間を助けようと海に集った。一方の車は大きく破損していた。当たり前だ、あんなに派手な音を立てて落下したんだから。
この様子じゃ、無事ではいられないだろう。
それは右側の車だった。
じゃあ、左側は?
舞美が呼吸を整えながら視線を走らせると、もう片方の車が崖から少し離れた沖の方で浮かんでいるのが見えた。じきに沈み出すだろう。
そちらは勢いよく飛び出していった車だったが、それほど破損してはいないように見える。
これは一体どういうことだろう、と舞美は考えた。なんとか冷静になろうとするも、あまりの興奮に考えがまとまらない。
ただ、彼女には1つだけ、ほとんど確信に近い読みがあった。
それは、左側の「チキンランの勝者」は生きのびたに違いない、ということだ。
舞美は思わず呟いていた。
向こうから急に現れた外車。今夜の対決相手であることは間違いない。
それは既に止まっている高級車の隣に並んだ。
2つは互いにエンジン音を立てて威嚇しているように見える。取り巻きたちも何か騒ぎ始めた。勝負に関する取り決めでも話しているのだろうか。
しかし、どう頑張っても、舞美には運転席に座っている相手の姿が見えなかった。どんな人が乗っているのか見たいのに、見えない。
まあ、良い。
舞美は思った。
レースが終われば、彼らは車を降りてくるんだから、その時に顔を拝めば良いだろう、と。
そうこうする内、蜘蛛の子を散らすように人だかりが避け、そこには二台の車だけが残った。
とうとうチキンランが始まる。舞美は興奮しながら、固唾を呑んで見守った。
スタートの合図と共に、猛スピードで断崖に向かって走り出す車。どちらもブレーキをかける様子はなく、むしろどんどん速度を上げていく。舞美は胸に手を当てた。
このまま行くと、車は乗り捨てだろうか?
車が落ちる瞬間に、運転席から飛び降りることで、自分が臆病者ではないと証明するのかもしれない。なるほど。それなら確かに勇者だ。
問題は、左側の車だ。運転席は右にあるのだから、左側の車は乗り捨てができない。
彼は一体、この状況をどのように切り抜けるんだろう?
舞美は勝負の行方を見守った。
が、車が断崖に近づくにつれ、とある疑惑を胸に抱える。その疑惑が確信に変わったのは、事が起きてからだった。
「あっ⁉︎」
聞いたこともないような轟音。それから、波の音。
物陰から飛び出た舞美は、すぐに海の方へパタパタと走った。
あり得ない。馬鹿なの?
まさか、二台とも落ちるなんて。
不良たちは舞美のことなどお構い無しで、仲間を助けようと海に集った。一方の車は大きく破損していた。当たり前だ、あんなに派手な音を立てて落下したんだから。
この様子じゃ、無事ではいられないだろう。
それは右側の車だった。
じゃあ、左側は?
舞美が呼吸を整えながら視線を走らせると、もう片方の車が崖から少し離れた沖の方で浮かんでいるのが見えた。じきに沈み出すだろう。
そちらは勢いよく飛び出していった車だったが、それほど破損してはいないように見える。
これは一体どういうことだろう、と舞美は考えた。なんとか冷静になろうとするも、あまりの興奮に考えがまとまらない。
ただ、彼女には1つだけ、ほとんど確信に近い読みがあった。
それは、左側の「チキンランの勝者」は生きのびたに違いない、ということだ。