5.岐れ道
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こうして、2人の熾烈な勝負は幕を閉じた。
組の人間は紙袋を持ち出し、その中から札束をガサゴソと取り出してアカギの前へ置いた。
「赤木………800万だ。受け取ってくれ」
舞美は拘束されることもなく金が手に入るようでホッとした。とりあえずアカギは勝ったのだと。しかし、アカギはその金を手でスッと押しのける。
「断わる……倍プッシュだ…!」
「あ、アカギ⁈」
「おっおい赤木…! いいかげんにしろよ…!」
彼は本気だ。舞美はそれに対して何も言わなかったが、安岡と南郷はこれ以上勝負する気はなく、アカギを必死に止めている。
「いつまでも続く強運はねえぞ……。引き際を知らんか……!」
「そうそう…!」
「引き際など最初からない…」
アカギは静かに語った。
「この勝負 もともとどちらかが破滅しなきゃおさまらない、そういうバクチ。そうですよね川田さん」
ああ、彼は心の底から勝負がしたいのだ。
川田は煙草に火をつけ、口を開いた。
「赤木…。そうだ…と言いたいところだが……そうもいかねえよ。まさか市川が破れるなどとこっちは考えてもいねえ。打ち手がいねえんだよ、もう…」
「なに言ってるんです…? 市川さんで再戦してくりゃいいじゃないですか…勝負は五分五分だった」
アカギにとって市川は良い相手だったのだと分かる。しかし、市川はもうアカギに及ばないからと、川田組は降りるという判断を変えはしなかった。アカギはその事実に絶句している。
舞美は安心しながらも同時に、アカギを哀れんだ。誰もアカギの狂気についてこれはしない。そんな相手を、彼がどれだけ渇望しているか。舞美は彼の勝負相手にはなれない。それが舞美には悲しく、そして幸運だとも思った。
「いいじゃねえか赤木。今回はこれくらいにしておいてやろうぜ」
「それに、賭けるとなればまた舞美ちゃんを危険な目に遭わせることになる」
名前を聞いたアカギは、はっとしたように振り返り、舞美を見た。やっと目が合った。
「東雲」
「本当に危ないな。負債を背負うとか、滅多に言うもんじゃないぞ」
「うん……」
南郷に諭され、頷く舞美。アカギは、なぜかそんな舞美を神妙な面持ちで見つめた。
「どうかした?」
「いや……なんでも」
「なら良いけど。でもそれより、おめでとう」
「ああ……」
南郷と安岡は、さっそく自分の取り分を計算し始めた。
そして、
「赤木…!」
という声とともに、パサリ、札が飛んできた。
「それお前の分。中学生には過ぎた額だ」
舞美はそんな大金を今まで見たことがなかったが、それより、金を目の前にしてなんの表情も示さない人間の方がよっぽど珍しいと思った。もちろん、赤木しげるである。
「ああ、あんたさ」
「ん?」
「オレの外馬に乗ったわけでしょ。あんた、自分自身を賭けたんだから」
舞美は首を傾げた。だからなんだと言うのか。もしかして、と思ったが、どうやらその予想は当たっているようで。
「これ。あんたの取り分」
「やだ、そんなに貰えない!」
「とっときなよ」
「違うの。そんなつもりで賭けたんじゃないから」
言うと、今度はアカギが首を傾げた。
「じゃあ、どんなつもりでオレについてきたの?」
組の人間は紙袋を持ち出し、その中から札束をガサゴソと取り出してアカギの前へ置いた。
「赤木………800万だ。受け取ってくれ」
舞美は拘束されることもなく金が手に入るようでホッとした。とりあえずアカギは勝ったのだと。しかし、アカギはその金を手でスッと押しのける。
「断わる……倍プッシュだ…!」
「あ、アカギ⁈」
「おっおい赤木…! いいかげんにしろよ…!」
彼は本気だ。舞美はそれに対して何も言わなかったが、安岡と南郷はこれ以上勝負する気はなく、アカギを必死に止めている。
「いつまでも続く強運はねえぞ……。引き際を知らんか……!」
「そうそう…!」
「引き際など最初からない…」
アカギは静かに語った。
「この勝負 もともとどちらかが破滅しなきゃおさまらない、そういうバクチ。そうですよね川田さん」
ああ、彼は心の底から勝負がしたいのだ。
川田は煙草に火をつけ、口を開いた。
「赤木…。そうだ…と言いたいところだが……そうもいかねえよ。まさか市川が破れるなどとこっちは考えてもいねえ。打ち手がいねえんだよ、もう…」
「なに言ってるんです…? 市川さんで再戦してくりゃいいじゃないですか…勝負は五分五分だった」
アカギにとって市川は良い相手だったのだと分かる。しかし、市川はもうアカギに及ばないからと、川田組は降りるという判断を変えはしなかった。アカギはその事実に絶句している。
舞美は安心しながらも同時に、アカギを哀れんだ。誰もアカギの狂気についてこれはしない。そんな相手を、彼がどれだけ渇望しているか。舞美は彼の勝負相手にはなれない。それが舞美には悲しく、そして幸運だとも思った。
「いいじゃねえか赤木。今回はこれくらいにしておいてやろうぜ」
「それに、賭けるとなればまた舞美ちゃんを危険な目に遭わせることになる」
名前を聞いたアカギは、はっとしたように振り返り、舞美を見た。やっと目が合った。
「東雲」
「本当に危ないな。負債を背負うとか、滅多に言うもんじゃないぞ」
「うん……」
南郷に諭され、頷く舞美。アカギは、なぜかそんな舞美を神妙な面持ちで見つめた。
「どうかした?」
「いや……なんでも」
「なら良いけど。でもそれより、おめでとう」
「ああ……」
南郷と安岡は、さっそく自分の取り分を計算し始めた。
そして、
「赤木…!」
という声とともに、パサリ、札が飛んできた。
「それお前の分。中学生には過ぎた額だ」
舞美はそんな大金を今まで見たことがなかったが、それより、金を目の前にしてなんの表情も示さない人間の方がよっぽど珍しいと思った。もちろん、赤木しげるである。
「ああ、あんたさ」
「ん?」
「オレの外馬に乗ったわけでしょ。あんた、自分自身を賭けたんだから」
舞美は首を傾げた。だからなんだと言うのか。もしかして、と思ったが、どうやらその予想は当たっているようで。
「これ。あんたの取り分」
「やだ、そんなに貰えない!」
「とっときなよ」
「違うの。そんなつもりで賭けたんじゃないから」
言うと、今度はアカギが首を傾げた。
「じゃあ、どんなつもりでオレについてきたの?」