5.岐れ道
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「しかし…もし…市川の前に山がない…あるいはあっても二つや三つなら、つまり例のすり替えを使えない状況なら」
逆だ、とアカギは呟く。
「逆にオレに分があると考える。天の意志がオレを選んでいる…」
舞美はこくりと頷いた。どうせ自分にできることなんてない。もうあとは、天に任せ、アカギを信じよう。
「ま、そういうわけだから。……オレはもう少し、外にいるよ」
「そ、そうか……」
アカギが目配せをしたのか、安岡と南郷は部屋に戻っていく。
一方舞美は、アカギの元に残った。
無言でアカギと見つめ合う。
「東雲」
「……ん」
「あんたが、ここまでオレについてくるとはね」
舞美は、アカギが話しているのは“賭け事”についてだと分かった。
「うん、ついていきたいの」
遠くから眺めているだけは嫌だから、と舞美は口にした。舞美は物理的な距離でなく、精神的にもアカギに近づきたかったのだ。
「それでどうすんの……オレと一緒に沈んでも良いのかよ」
「うん、アカギとなら良い」
舞美は頑張って、照れずに言った。
アカギはじっと舞美を見つめてから、首をひねる。
「オレはあんたが理解 らない……。オレとは違う」
「アカギって、わたしを分かりたいの? それはわたしに興味があるってこと?」
「さあね」
アカギはふっと笑った。
「けど、あんたはあったかい」
舞美はアカギに好きだとかなんとか告げようと思ったが、それよりも前に行動してしまっていた。
あったかい、と呟いたアカギがなんだか寒そうで。舞美はアカギに距離を詰め、腕を回してぎゅうと抱きついたのだった。
顔をアカギの胸にうずめ、彼の存在を確認するかのように自分を押し付ける。まだ少年の彼の体は、筋肉質でありつつも、少し柔らかかった。数分後には自分はヤクザに捕まっているかもしれない。舞美の中で消しきれなかった不安が、アカギの肌で浄化されていく。
「……なに、」
ふと、アカギの声が頭上から聞こえ、舞美ははっとした。彼は嫌がっているかもしれない。
しかしアカギは舞美に腕を回さないまま、ぽつり、
「やっぱり、あったけえ」
とだけ、呟いた。
何かあたたかい気持ちになったのは、舞美の方だった。例え彼がこちらへ腕を回してくれなくても、舞美にはそれで充分だった。
舞美はすぐに離れ、照れ隠しにアカギの胸板をどんと叩く。
「なんとかしてよね」
この勝負は命のやり取りをしているも同義。
既に負けは確定していて、今この瞬間に破滅は刻一刻と近づいているのかもしれない。
「ああ」
そう言ったきり、アカギはその大きな背中を舞美に見せつけ、勝負の部屋へ入っていった。
舞美がアカギの温もりをまだ忘れないうちに、あのひりついた勝負は再開された。
逆だ、とアカギは呟く。
「逆にオレに分があると考える。天の意志がオレを選んでいる…」
舞美はこくりと頷いた。どうせ自分にできることなんてない。もうあとは、天に任せ、アカギを信じよう。
「ま、そういうわけだから。……オレはもう少し、外にいるよ」
「そ、そうか……」
アカギが目配せをしたのか、安岡と南郷は部屋に戻っていく。
一方舞美は、アカギの元に残った。
無言でアカギと見つめ合う。
「東雲」
「……ん」
「あんたが、ここまでオレについてくるとはね」
舞美は、アカギが話しているのは“賭け事”についてだと分かった。
「うん、ついていきたいの」
遠くから眺めているだけは嫌だから、と舞美は口にした。舞美は物理的な距離でなく、精神的にもアカギに近づきたかったのだ。
「それでどうすんの……オレと一緒に沈んでも良いのかよ」
「うん、アカギとなら良い」
舞美は頑張って、照れずに言った。
アカギはじっと舞美を見つめてから、首をひねる。
「オレはあんたが
「アカギって、わたしを分かりたいの? それはわたしに興味があるってこと?」
「さあね」
アカギはふっと笑った。
「けど、あんたはあったかい」
舞美はアカギに好きだとかなんとか告げようと思ったが、それよりも前に行動してしまっていた。
あったかい、と呟いたアカギがなんだか寒そうで。舞美はアカギに距離を詰め、腕を回してぎゅうと抱きついたのだった。
顔をアカギの胸にうずめ、彼の存在を確認するかのように自分を押し付ける。まだ少年の彼の体は、筋肉質でありつつも、少し柔らかかった。数分後には自分はヤクザに捕まっているかもしれない。舞美の中で消しきれなかった不安が、アカギの肌で浄化されていく。
「……なに、」
ふと、アカギの声が頭上から聞こえ、舞美ははっとした。彼は嫌がっているかもしれない。
しかしアカギは舞美に腕を回さないまま、ぽつり、
「やっぱり、あったけえ」
とだけ、呟いた。
何かあたたかい気持ちになったのは、舞美の方だった。例え彼がこちらへ腕を回してくれなくても、舞美にはそれで充分だった。
舞美はすぐに離れ、照れ隠しにアカギの胸板をどんと叩く。
「なんとかしてよね」
この勝負は命のやり取りをしているも同義。
既に負けは確定していて、今この瞬間に破滅は刻一刻と近づいているのかもしれない。
「ああ」
そう言ったきり、アカギはその大きな背中を舞美に見せつけ、勝負の部屋へ入っていった。
舞美がアカギの温もりをまだ忘れないうちに、あのひりついた勝負は再開された。