5.岐れ道
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「見張り交代の時に、それを向こう側にも伝えて。そうしたら、縁側で観戦するくらい許してくれるでしょ」
「……わかった、掛け合ってみよう。良いんだな?」
「うん。構わない」
そして、舞美はその機を待ち続けた。アカギの近くに行ける機会を。既に、自分の運命はアカギに懸かっているのだ。いや、自分で賭けたんだ。絶対この賭けを後悔してなるものかと、舞美は自分自身を奮い立たせる。
その間、アカギは様々な戦法をとって市川からアガリを取ろうとしていた。しかし、なかなか上手くいかない。舞美もそんな不穏な空気をどことなく感じとる。それでも、彼女は心の中で応援をすることしかできない。
かなりの時間が経った頃、「フー」というアカギのため声が聞こえた。
「……まいったな……もうやめようぜ、こんなこと………」
(え?)
舞美は驚いたが、アカギは続ける。
「きりがなかろうぜ、市川さん。お互いこんなバブルのような点棒をただかき集めてもしょうがない…」
アカギが市川に提案したのは、今の点数をお互い10分の1にするというもの。しかし、あっさり市川にそれを断られた。そりゃそうだよね、と舞美もがっかりする。
しかし、その次の局、何やら2人が大きく立ち回った挙句、とうとう市川がアカギに振り込んだ。舞美にはピンとくる。断言はできないが、アカギはサマを使ったんだ、と。
「どうです市川さん……? 互いに10分の1にして短期決戦、受けてくれませんか……?」
彼の敬語に、なぜか舞美はぞくぞくする。まるでアカギが猫を被ったかのように感じるからだろうか。
「いいだろう……」
ああ、やっぱり今の局に何かアカギがイカサマをしたんだ。そうでなくては市川がこれを受け入れるはずないから。とは言え、次にアカギが負けて終わる可能性もある。舞美は危険なギャンブルに恐怖しつつも興奮してきた。同時にアカギの勝ち目も見えてきたからだ。
点数を変え、仕切り直しをする。
と、このタイミングで、舞美のいる部屋に黒服がもう1人やってきた。
「交代の時間だ」
きた。とりあえず、今まで見張っていた黒服がアカギのいる部屋に行き、舞美が自身を払う覚悟を示したことと、縁側で勝負を見たがっていることを報告しに行く。
しばらくして、黒服は舞美の部屋に戻ってきた。
「どうだった?」
「……ああ、おまえの男気に免じて、許可がおりた」
「えっ、本当に⁉︎」
舞美は思わず、胸の前で手を組んで勢いよく立ち上がった。
「アカギの元に行って良いの?」
「まあ、とりあえず付いて来い」
「もちろん!」
舞美は2人の黒服に挟まれるようにして、部屋の外へ出て行き、隣へ向かった。アカギは丁度、縁側を背にして麻雀を打っていたので、その縁側部分に座って観戦することができる。
舞美には、すぐそこに彼の後ろ姿が見えた。今は小休止中のようだ。
「アカギ!」
「……え、東雲?」
呼びかけると、アカギはくるりと振り向いてこちらを見た。その顔は、「どうして」といった疑問符を浮かべている。
「舞美ちゃん⁈ どういうことだ……」
南郷と安岡も混乱している。そこで、取り仕切り役のお偉いさんが口を出した。
「どうやらアカギが負けた時にその負債の一部をこの東雲舞美も背負うと口にしたらしい。その覚悟を買って、部屋には入らないという条件で観戦を許した」
「本当にありがとうございます」
舞美はそう言ってから、アカギに笑いかけた。アカギは舞美の方へ近づいたものの、眉をひそめる。
「あんた、何考えてんの」
「え?」
「負債。あんたが背負う必要は全くないでしょ」
「うん……でも、どうしてもここでアカギの闘いを見たかったから」
「舞美ちゃん、そんな危険なこと」
南郷と安岡も舞美を案じるが、アカギに熱心な彼女にはピンときていない。
アカギは半分呆れたように、しかし舞美を鋭く見つめながら言った。
「あんたを守りきれない可能性だってあるんだぜ」
あれ、もしかして、ちょっと怒ってる……?
「わたしがいると、打ちづらい?」
「違う、そうじゃねえって。あんたごときでオレは鈍らないけど……」
アカギはそこまで言ってから、ふっと息をついた。
「……ま、もう何を言っても仕方がない。戻れねえところまで来てるんだろ」
そう。もう後はない。
舞美はこくりと頷いた。
「じゃあ、そこでちゃんとオレを見てなよ」
アカギはそれだけ告げると、何事もなかったかのように卓についた。舞美はアカギの言葉に返事もできない。“見てな”なんて……。顔が熱くなる。
「さあ、始めようぜ」
舞美の目に、彼の頼もしい背中が映った。
「……わかった、掛け合ってみよう。良いんだな?」
「うん。構わない」
そして、舞美はその機を待ち続けた。アカギの近くに行ける機会を。既に、自分の運命はアカギに懸かっているのだ。いや、自分で賭けたんだ。絶対この賭けを後悔してなるものかと、舞美は自分自身を奮い立たせる。
その間、アカギは様々な戦法をとって市川からアガリを取ろうとしていた。しかし、なかなか上手くいかない。舞美もそんな不穏な空気をどことなく感じとる。それでも、彼女は心の中で応援をすることしかできない。
かなりの時間が経った頃、「フー」というアカギのため声が聞こえた。
「……まいったな……もうやめようぜ、こんなこと………」
(え?)
舞美は驚いたが、アカギは続ける。
「きりがなかろうぜ、市川さん。お互いこんなバブルのような点棒をただかき集めてもしょうがない…」
アカギが市川に提案したのは、今の点数をお互い10分の1にするというもの。しかし、あっさり市川にそれを断られた。そりゃそうだよね、と舞美もがっかりする。
しかし、その次の局、何やら2人が大きく立ち回った挙句、とうとう市川がアカギに振り込んだ。舞美にはピンとくる。断言はできないが、アカギはサマを使ったんだ、と。
「どうです市川さん……? 互いに10分の1にして短期決戦、受けてくれませんか……?」
彼の敬語に、なぜか舞美はぞくぞくする。まるでアカギが猫を被ったかのように感じるからだろうか。
「いいだろう……」
ああ、やっぱり今の局に何かアカギがイカサマをしたんだ。そうでなくては市川がこれを受け入れるはずないから。とは言え、次にアカギが負けて終わる可能性もある。舞美は危険なギャンブルに恐怖しつつも興奮してきた。同時にアカギの勝ち目も見えてきたからだ。
点数を変え、仕切り直しをする。
と、このタイミングで、舞美のいる部屋に黒服がもう1人やってきた。
「交代の時間だ」
きた。とりあえず、今まで見張っていた黒服がアカギのいる部屋に行き、舞美が自身を払う覚悟を示したことと、縁側で勝負を見たがっていることを報告しに行く。
しばらくして、黒服は舞美の部屋に戻ってきた。
「どうだった?」
「……ああ、おまえの男気に免じて、許可がおりた」
「えっ、本当に⁉︎」
舞美は思わず、胸の前で手を組んで勢いよく立ち上がった。
「アカギの元に行って良いの?」
「まあ、とりあえず付いて来い」
「もちろん!」
舞美は2人の黒服に挟まれるようにして、部屋の外へ出て行き、隣へ向かった。アカギは丁度、縁側を背にして麻雀を打っていたので、その縁側部分に座って観戦することができる。
舞美には、すぐそこに彼の後ろ姿が見えた。今は小休止中のようだ。
「アカギ!」
「……え、東雲?」
呼びかけると、アカギはくるりと振り向いてこちらを見た。その顔は、「どうして」といった疑問符を浮かべている。
「舞美ちゃん⁈ どういうことだ……」
南郷と安岡も混乱している。そこで、取り仕切り役のお偉いさんが口を出した。
「どうやらアカギが負けた時にその負債の一部をこの東雲舞美も背負うと口にしたらしい。その覚悟を買って、部屋には入らないという条件で観戦を許した」
「本当にありがとうございます」
舞美はそう言ってから、アカギに笑いかけた。アカギは舞美の方へ近づいたものの、眉をひそめる。
「あんた、何考えてんの」
「え?」
「負債。あんたが背負う必要は全くないでしょ」
「うん……でも、どうしてもここでアカギの闘いを見たかったから」
「舞美ちゃん、そんな危険なこと」
南郷と安岡も舞美を案じるが、アカギに熱心な彼女にはピンときていない。
アカギは半分呆れたように、しかし舞美を鋭く見つめながら言った。
「あんたを守りきれない可能性だってあるんだぜ」
あれ、もしかして、ちょっと怒ってる……?
「わたしがいると、打ちづらい?」
「違う、そうじゃねえって。あんたごときでオレは鈍らないけど……」
アカギはそこまで言ってから、ふっと息をついた。
「……ま、もう何を言っても仕方がない。戻れねえところまで来てるんだろ」
そう。もう後はない。
舞美はこくりと頷いた。
「じゃあ、そこでちゃんとオレを見てなよ」
アカギはそれだけ告げると、何事もなかったかのように卓についた。舞美はアカギの言葉に返事もできない。“見てな”なんて……。顔が熱くなる。
「さあ、始めようぜ」
舞美の目に、彼の頼もしい背中が映った。