4.丸い弾
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「勝負に遅れそうなあなたを探しに来たの! それなのに、もう……」
アカギに近寄った舞美は、鉄パイプで殴られたものと思われる数々の傷跡に顔をしかめる。痛そう。ふつふつと怒りが湧いてきた。
わたしのアカギに傷をつけるなんて。
が、彼らは既にアカギの手によって報いは受けた。それを考えると少し冷静になれる。
とりあえず命に別状も無さそうで良かった。
それから、舞美は勇気を出してそっと彼の前髪をかき分け、一番大きな頭の傷を見ようとした。アカギは特に拒まなかったが、舞美はアカギとの至近距離に内心バクバク。
照れを隠すように、たらりと垂れた紅い血を少しだけ拭う。
「大丈夫……?」
「別に支障ないよ。あいつらももう来ないだろうし」
「でも痛いでしょ? とりあえず手当てさせて。そのナリじゃ勝負にも行けないわ」
「オレが入れる場所なんてそうそう無いけど。何か当てがあるの」
「もう、こうなったらわたしの家に行くしかないよ。ここからそう離れてないし」
舞美は空を見上げた。結構暗い。もう大した時間は残されていないだろう。
「それで良い?」
「ああ……任せたよ」
アカギは銃を周りから見えないように隠してからそう言った。アカギに任された、と舞美は密かに興奮する。これは、アカギに頼りにされていると考えて良いのだろうか……。
いやいや。今は余計なことは考えず、自宅に走るべき時だ。煩悩を振り払い、舞美はアカギを連れて一時帰宅した。
「上がって。ここに座ってて」
大急ぎで帰ってきた舞美は、そう言ってアカギを座らせた。それから、ドタドタと誰もいない家を駆け回り、なんとか濡れた布と飲み水を用意する。
2つを手にアカギの正面に正座して向き合った舞美は、何故か緊張してきた。なんとなくアカギの目を見られないような気がする。
「……なに」
アカギはいぶかしげに眉をひそめつつも、舞美の持ってきた水を喉に流し込んだ。コク、コクという喉の動きに舞美は釘付けになる。コップ一杯分を飲み干した彼は、舞美に見せつけるかのように口元を拭う。
「手当て、してくれるんじゃなかったの」
「あ……。うん、ええと」
舞美はそろりと濡らしたタオルをアカギの頭に近づけ、おでこの辺りを拭いた。
布がじんわりと赤く血で染まる。幸運にも、もう新しい血は出ていないらしい。
「……っ」
アカギが一瞬、歯を食いしばって痛みに耐えたような表情をした。
しまった、強く押さえすぎたか。
「ごめん、痛いよね」
「いや……全然。平気」
強がるアカギに、舞美は「ごめんね」と言いながら、これ以上ないほど優しく血を拭っていく。傷に触れるたび、アカギが少しだけ痛そうに顔をしかめるのが色っぽい。
とりあえず喧嘩(あれを喧嘩と呼んで良いものなのか舞美には分からなかった)の痕跡を消せた。
「よし、これで大丈夫」
「ん……どうも」
「うん。これで勝負に行けるね」
「そうか、あんたは来れないんだったか」
アカギは時計を見上げた。舞美もつられて時間を確認する。
もうこんな時間! 急がないと。もしかしたらもう先に勝負を始めているかもしれない。
「アカギ、行って」
懇願するように言うと、アカギは舞美の手首を掴んで立ち上がった。
「え?」
くい、と腕を引かれる。彼はどうやら離す気はないらしい。舞美は目を丸くした。
「どこ。その料亭」
「わ、分からないの?」
分からないかどうか、の質問には答えず、アカギは静かに舞美の瞳を見つめた。
「……あんたが案内してくれない? 詳しいんでしょ」
アカギに近寄った舞美は、鉄パイプで殴られたものと思われる数々の傷跡に顔をしかめる。痛そう。ふつふつと怒りが湧いてきた。
わたしのアカギに傷をつけるなんて。
が、彼らは既にアカギの手によって報いは受けた。それを考えると少し冷静になれる。
とりあえず命に別状も無さそうで良かった。
それから、舞美は勇気を出してそっと彼の前髪をかき分け、一番大きな頭の傷を見ようとした。アカギは特に拒まなかったが、舞美はアカギとの至近距離に内心バクバク。
照れを隠すように、たらりと垂れた紅い血を少しだけ拭う。
「大丈夫……?」
「別に支障ないよ。あいつらももう来ないだろうし」
「でも痛いでしょ? とりあえず手当てさせて。そのナリじゃ勝負にも行けないわ」
「オレが入れる場所なんてそうそう無いけど。何か当てがあるの」
「もう、こうなったらわたしの家に行くしかないよ。ここからそう離れてないし」
舞美は空を見上げた。結構暗い。もう大した時間は残されていないだろう。
「それで良い?」
「ああ……任せたよ」
アカギは銃を周りから見えないように隠してからそう言った。アカギに任された、と舞美は密かに興奮する。これは、アカギに頼りにされていると考えて良いのだろうか……。
いやいや。今は余計なことは考えず、自宅に走るべき時だ。煩悩を振り払い、舞美はアカギを連れて一時帰宅した。
「上がって。ここに座ってて」
大急ぎで帰ってきた舞美は、そう言ってアカギを座らせた。それから、ドタドタと誰もいない家を駆け回り、なんとか濡れた布と飲み水を用意する。
2つを手にアカギの正面に正座して向き合った舞美は、何故か緊張してきた。なんとなくアカギの目を見られないような気がする。
「……なに」
アカギはいぶかしげに眉をひそめつつも、舞美の持ってきた水を喉に流し込んだ。コク、コクという喉の動きに舞美は釘付けになる。コップ一杯分を飲み干した彼は、舞美に見せつけるかのように口元を拭う。
「手当て、してくれるんじゃなかったの」
「あ……。うん、ええと」
舞美はそろりと濡らしたタオルをアカギの頭に近づけ、おでこの辺りを拭いた。
布がじんわりと赤く血で染まる。幸運にも、もう新しい血は出ていないらしい。
「……っ」
アカギが一瞬、歯を食いしばって痛みに耐えたような表情をした。
しまった、強く押さえすぎたか。
「ごめん、痛いよね」
「いや……全然。平気」
強がるアカギに、舞美は「ごめんね」と言いながら、これ以上ないほど優しく血を拭っていく。傷に触れるたび、アカギが少しだけ痛そうに顔をしかめるのが色っぽい。
とりあえず喧嘩(あれを喧嘩と呼んで良いものなのか舞美には分からなかった)の痕跡を消せた。
「よし、これで大丈夫」
「ん……どうも」
「うん。これで勝負に行けるね」
「そうか、あんたは来れないんだったか」
アカギは時計を見上げた。舞美もつられて時間を確認する。
もうこんな時間! 急がないと。もしかしたらもう先に勝負を始めているかもしれない。
「アカギ、行って」
懇願するように言うと、アカギは舞美の手首を掴んで立ち上がった。
「え?」
くい、と腕を引かれる。彼はどうやら離す気はないらしい。舞美は目を丸くした。
「どこ。その料亭」
「わ、分からないの?」
分からないかどうか、の質問には答えず、アカギは静かに舞美の瞳を見つめた。
「……あんたが案内してくれない? 詳しいんでしょ」