3.酔狂者
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アカギの瞳が舞美を射抜く。
「あそこで見ていたあんたになら分かるかな、オレがあのチキンランに生き残った理由 」
舞美は当時の状況を思い出す。
アカギの乗っていた車が速度を落とさず崖に飛び込んでいったことは印象的だった。その時は、頭のおかしい奴が乗っているんだなあ、と思ったものだが、アカギは考えもなしに突っ走る奴じゃない。そう考えると自ずと答えは出た。
「それは……海に向かって、勢いよく飛び出したから?」
「そう。それがみそなんだ」
当たった。心の中で喜ぶとアカギは一瞬だけ舞美の方へ視線を送った。
「えっと、どういうことだ?」
「ていうか、舞美ちゃんはチキンラン見てたのかよ……」
呆れる南郷。アカギは続ける。
「あの断崖はある距離飛ぶと急激に海が深くなっていて、なまじブレーキを踏むよりずっと助かる公算が高いんだ」
そして飛び降りる時機を失った挙句ブレーキを踏んだ相手は岩場にぶつかり典型的自滅。
舞美はもう一台の車のドライバーを想ってぞっとしたが、危うくアカギもそうなるところだったのだ。
それに、有利な勝負をしていたのは間違いなく相手側だったはず。彼らもまさかそれを覆されるとは予想していなかっただろう。
南郷は「冗談じゃない」と拒否した。そう、普通の人間ならそんなブレーキが壊れたような生き方などできるはずがないのだ。
が、
「出来る……!」
とアカギは言い張る。あの時、伍筒切りをしたことで、そのアクセルは踏まれたのだと。
「南郷さん、自分を捨てちゃいなよ……。あと一晩だけ……狂気に魂を預けておけばいい…!」
そんな悪魔の囁きに、南郷は折れてしまう。
舞美はクククと笑うアカギをちらと見てから、いつのまにか空になっていたコップにビールを注いで、くいと飲んだ。
ふと、なんだか体が熱いことに気がつく。視界は微妙にぼやけ、目は乾いたのか、涙が溜まる。それでも体調は悪くなく、むしろ気分は良い。なんだろうこの感じ。ふわふわする。
とりあえず、火照った体を冷やすために、目の前にある水分 を補給した。
それでもこの感じは治らない。頭の中に霧がかかったようにモヤモヤする。
すると、何かに気がついた様子のアカギは、舞美の目を覗き込んできた。
「あんた、大丈夫なの」
「え?」
「顔、赤いけど」
「あそこで見ていたあんたになら分かるかな、オレがあのチキンランに生き残った
舞美は当時の状況を思い出す。
アカギの乗っていた車が速度を落とさず崖に飛び込んでいったことは印象的だった。その時は、頭のおかしい奴が乗っているんだなあ、と思ったものだが、アカギは考えもなしに突っ走る奴じゃない。そう考えると自ずと答えは出た。
「それは……海に向かって、勢いよく飛び出したから?」
「そう。それがみそなんだ」
当たった。心の中で喜ぶとアカギは一瞬だけ舞美の方へ視線を送った。
「えっと、どういうことだ?」
「ていうか、舞美ちゃんはチキンラン見てたのかよ……」
呆れる南郷。アカギは続ける。
「あの断崖はある距離飛ぶと急激に海が深くなっていて、なまじブレーキを踏むよりずっと助かる公算が高いんだ」
そして飛び降りる時機を失った挙句ブレーキを踏んだ相手は岩場にぶつかり典型的自滅。
舞美はもう一台の車のドライバーを想ってぞっとしたが、危うくアカギもそうなるところだったのだ。
それに、有利な勝負をしていたのは間違いなく相手側だったはず。彼らもまさかそれを覆されるとは予想していなかっただろう。
南郷は「冗談じゃない」と拒否した。そう、普通の人間ならそんなブレーキが壊れたような生き方などできるはずがないのだ。
が、
「出来る……!」
とアカギは言い張る。あの時、伍筒切りをしたことで、そのアクセルは踏まれたのだと。
「南郷さん、自分を捨てちゃいなよ……。あと一晩だけ……狂気に魂を預けておけばいい…!」
そんな悪魔の囁きに、南郷は折れてしまう。
舞美はクククと笑うアカギをちらと見てから、いつのまにか空になっていたコップにビールを注いで、くいと飲んだ。
ふと、なんだか体が熱いことに気がつく。視界は微妙にぼやけ、目は乾いたのか、涙が溜まる。それでも体調は悪くなく、むしろ気分は良い。なんだろうこの感じ。ふわふわする。
とりあえず、火照った体を冷やすために、目の前にある
それでもこの感じは治らない。頭の中に霧がかかったようにモヤモヤする。
すると、何かに気がついた様子のアカギは、舞美の目を覗き込んできた。
「あんた、大丈夫なの」
「え?」
「顔、赤いけど」