3.酔狂者
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そしてなんとか退屈な2日を乗り切った舞美。
約束の日、当日。
またアカギに会えると思うと楽しみで仕方ない。この辺りを知り尽くしている舞美は、特に迷うこともなくそこへたどり着き、時間通りに例のバーへ顔を見せた。
「あ、舞美ちゃん! こっちだ」
「南郷さん!」
南郷と刑事が席についている。
しかし彼の姿は見えない。
「あれ、アカギは?」
「うーん、まだみたいだな」
「そっか。何か飲み物頼んで良い? 刑事さん」
「構わないよ。それはそうと、まだ自己紹介してなかったな。オレは刑事の安岡だ」
「了解、安岡さん。わたしは東雲舞美」
舞美は注文した烏龍茶を飲みながら、入口の方をチラチラと見る。
アカギ、遅い。ちゃんと来るのか不安だ。
しかしそれは杞憂だった。カランコロンと音が鳴ったので見れば、ポケットに手を突っ込んだ白い髪の学生が堂々と入ってくる。
相変わらず目立つ風貌。逆になぜ今まで彼に出会わなかったのか疑問に思うほどだ。
「アカギ! こっち」
「……ああ、ちゃんとあんたも来たんだ」
アカギはゆっくり席につき、安岡が開けたビールを黙って受け取った。そんな風に何事もなくビールを飲むことを承諾されると、烏龍茶なんて飲んでいるこっちが恥ずかしくなる。
それに、舞美にはアカギに言いたいことが色々あった。
しかし最重要事項は安岡の事務連絡。彼は決まったことをそのまま話してくれた。
日時、場所、立会人。それから当日行われる作戦会議の待ち合わせについて。
その情報を全て、舞美は頭の中にそっとメモする。
連絡を終えた安岡が乾杯の音頭をとろうとすると、アカギは「その前に……」と話を切り出した。
「調子いいことばか言ってねえで、もうひとつの条件の方も言いなよ」
「! フフ…」
すぐに分配の話に入る男たち。舞美には関係ない話だが、アカギの顔をじっと見つめる。
アカギはどうやら、安岡がノーリスクで得をするということが気に食わないらしい。
「オレが提示する条件はひとつ。初っぱな800からいこう!」
アカギは笑みを浮かべつつ、衝撃的な発言をする。要は、足りない200を安岡に背負わせるというもの。「のめなきゃオレが降りるだけのこと」と追い詰めるアカギに安岡は折れ、グラス内のビールをくいと飲み干してから、
「わかったよのみゃあいいんだろ…!」
とアカギを見た。舞美はそんなアカギの手法にただ感心するばかり……。
とうとうこの中でリスクを背負っていないのは舞美だけになってしまったが、取り分もなく、当日は対局を見届けるわけでもないのでそれはどうでも良いようだ。
「それでこそ悪徳刑事 ですよ…!」
アカギが安岡に酌をする。舞美は、ちょうど飲み終わった烏龍茶の入っていたジョッキを差し出す。
「え?」
「わたしも、それ飲む」
「ああ……でも、あんた、飲めるの?」
「……うん」
嘘だ。
今までそんな風にビールを飲んだことはない。
でも、アカギと酒を酌み交わしてみたい。
舞美はアカギの注いだ酒をこくりと喉に通した。
苦い……が、表情を変えないように気をつけつつ、また彼らの話に耳をそばだてる。
なるほど、南郷は賭け金を下げたいようだ。
それは納得できる。が、アカギは「その理にかなってないところがいい」とのたまう。
「奴らが恐れているのはオレたちの狂気。ブレーキを踏まない心……」
ブレーキ。
「あの夜もブレーキを踏まないから助かった……」
それが連想するものはただ一つ。
「ね、東雲」
急に目が合ったので、舞美はこほんと咳払いする。
「ほんと、見事なチキンランだったよね」
約束の日、当日。
またアカギに会えると思うと楽しみで仕方ない。この辺りを知り尽くしている舞美は、特に迷うこともなくそこへたどり着き、時間通りに例のバーへ顔を見せた。
「あ、舞美ちゃん! こっちだ」
「南郷さん!」
南郷と刑事が席についている。
しかし彼の姿は見えない。
「あれ、アカギは?」
「うーん、まだみたいだな」
「そっか。何か飲み物頼んで良い? 刑事さん」
「構わないよ。それはそうと、まだ自己紹介してなかったな。オレは刑事の安岡だ」
「了解、安岡さん。わたしは東雲舞美」
舞美は注文した烏龍茶を飲みながら、入口の方をチラチラと見る。
アカギ、遅い。ちゃんと来るのか不安だ。
しかしそれは杞憂だった。カランコロンと音が鳴ったので見れば、ポケットに手を突っ込んだ白い髪の学生が堂々と入ってくる。
相変わらず目立つ風貌。逆になぜ今まで彼に出会わなかったのか疑問に思うほどだ。
「アカギ! こっち」
「……ああ、ちゃんとあんたも来たんだ」
アカギはゆっくり席につき、安岡が開けたビールを黙って受け取った。そんな風に何事もなくビールを飲むことを承諾されると、烏龍茶なんて飲んでいるこっちが恥ずかしくなる。
それに、舞美にはアカギに言いたいことが色々あった。
しかし最重要事項は安岡の事務連絡。彼は決まったことをそのまま話してくれた。
日時、場所、立会人。それから当日行われる作戦会議の待ち合わせについて。
その情報を全て、舞美は頭の中にそっとメモする。
連絡を終えた安岡が乾杯の音頭をとろうとすると、アカギは「その前に……」と話を切り出した。
「調子いいことばか言ってねえで、もうひとつの条件の方も言いなよ」
「! フフ…」
すぐに分配の話に入る男たち。舞美には関係ない話だが、アカギの顔をじっと見つめる。
アカギはどうやら、安岡がノーリスクで得をするということが気に食わないらしい。
「オレが提示する条件はひとつ。初っぱな800からいこう!」
アカギは笑みを浮かべつつ、衝撃的な発言をする。要は、足りない200を安岡に背負わせるというもの。「のめなきゃオレが降りるだけのこと」と追い詰めるアカギに安岡は折れ、グラス内のビールをくいと飲み干してから、
「わかったよのみゃあいいんだろ…!」
とアカギを見た。舞美はそんなアカギの手法にただ感心するばかり……。
とうとうこの中でリスクを背負っていないのは舞美だけになってしまったが、取り分もなく、当日は対局を見届けるわけでもないのでそれはどうでも良いようだ。
「それでこそ悪徳
アカギが安岡に酌をする。舞美は、ちょうど飲み終わった烏龍茶の入っていたジョッキを差し出す。
「え?」
「わたしも、それ飲む」
「ああ……でも、あんた、飲めるの?」
「……うん」
嘘だ。
今までそんな風にビールを飲んだことはない。
でも、アカギと酒を酌み交わしてみたい。
舞美はアカギの注いだ酒をこくりと喉に通した。
苦い……が、表情を変えないように気をつけつつ、また彼らの話に耳をそばだてる。
なるほど、南郷は賭け金を下げたいようだ。
それは納得できる。が、アカギは「その理にかなってないところがいい」とのたまう。
「奴らが恐れているのはオレたちの狂気。ブレーキを踏まない心……」
ブレーキ。
「あの夜もブレーキを踏まないから助かった……」
それが連想するものはただ一つ。
「ね、東雲」
急に目が合ったので、舞美はこほんと咳払いする。
「ほんと、見事なチキンランだったよね」