21.入り目*[終]
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やっと余韻がひいてきた頃、アカギが口を開く。
「あんた、吹っ切れてたね。」
舞美は恥ずかしくなりつつ頷いた。
彼は続ける。
「心境の変化ってやつ?」
「うん、そんな感じ。気分爽快」
「そう……あんたは楽しそうにしてるのがいいよ」
言われてみれば、舞美はアカギに出会ってからというもの常に新たな刺激をもらい続けていた。ずっと夜の街に焦がれていたのはこの人に会うためだったのではないかと思うほど、彼といるのは本当に楽しかった。
代わりに自分がつまらない人間だと思ったりもした。
でもさっきの孤立牌の解説でわかった。アカギが側に置いておくのは面白味を感じてるからだってこと。舞美にとって舞美がつまらないと感じたとしても、アカギにとっては違うんだろう。
鷲巣との闘いが終わったあと、アカギの渇きは少しおさまったような気もした。
「ギャンブル以外にも、アカギが面白いと思えるものが増えたらいいな。」
「フフ……まあ、そういうのを増やしたって悪くはない」
アカギは煙草をくわえながら言った。
「ここを出るついでに、釣りでもするかな」
ぼんやり釣竿を垂らすアカギを想像するが、何をやっても彼は画になる。
「いいね。それならわたしも一緒にやれる。そうだ、どっちが釣れるか勝負しよう」
「やる気満々だね。」
舞美は笑った。
「アカギにとって退屈に思えていただろう時間を、わたしが潰してあげる」
このわたしがねー!と、威張ってみせる。
実際、それは他でもない舞美にしかできない芸当だろう。
孤立牌がはじめて隣牌とくっついた時からそれは聴牌になった。いつでも和了れる状態に。
つまらない手だったものがその牌ひとつで面白味を感じさせる刺激的な手になったわけだ。
そして一度テンパったなら、もうその牌を捨てることはない。
彼らが何をもって和了とするかは定かではないが……それが「人生の完成」だとするならまだこの先は続く。
あの日不良娘が少年に出会ったのは無意味じゃなかった。あの出会いが全てを変えた。
あの待ち続けた日々も無駄じゃなかった。
赤木しげるは東雲舞美と共に。
東雲舞美は赤木しげると共に。
舞美の解釈は完了していた。
そしてアカギは全てを見透かしているかのように舞美に微笑んでみせた。
「あんたには ほんとうに敵わないね」
彼の言葉は煙に溶けて彼女に取り巻いた。
惜しいね とアカギは頭の中で呟く。
「——オレがあんたを 手に 入れたのさ。」
21.入り目[完]
…聴牌した際に入ってきた牌のこと。
くっつきテンパイ[完]
「あんた、吹っ切れてたね。」
舞美は恥ずかしくなりつつ頷いた。
彼は続ける。
「心境の変化ってやつ?」
「うん、そんな感じ。気分爽快」
「そう……あんたは楽しそうにしてるのがいいよ」
言われてみれば、舞美はアカギに出会ってからというもの常に新たな刺激をもらい続けていた。ずっと夜の街に焦がれていたのはこの人に会うためだったのではないかと思うほど、彼といるのは本当に楽しかった。
代わりに自分がつまらない人間だと思ったりもした。
でもさっきの孤立牌の解説でわかった。アカギが側に置いておくのは面白味を感じてるからだってこと。舞美にとって舞美がつまらないと感じたとしても、アカギにとっては違うんだろう。
鷲巣との闘いが終わったあと、アカギの渇きは少しおさまったような気もした。
「ギャンブル以外にも、アカギが面白いと思えるものが増えたらいいな。」
「フフ……まあ、そういうのを増やしたって悪くはない」
アカギは煙草をくわえながら言った。
「ここを出るついでに、釣りでもするかな」
ぼんやり釣竿を垂らすアカギを想像するが、何をやっても彼は画になる。
「いいね。それならわたしも一緒にやれる。そうだ、どっちが釣れるか勝負しよう」
「やる気満々だね。」
舞美は笑った。
「アカギにとって退屈に思えていただろう時間を、わたしが潰してあげる」
このわたしがねー!と、威張ってみせる。
実際、それは他でもない舞美にしかできない芸当だろう。
孤立牌がはじめて隣牌とくっついた時からそれは聴牌になった。いつでも和了れる状態に。
つまらない手だったものがその牌ひとつで面白味を感じさせる刺激的な手になったわけだ。
そして一度テンパったなら、もうその牌を捨てることはない。
彼らが何をもって和了とするかは定かではないが……それが「人生の完成」だとするならまだこの先は続く。
あの日不良娘が少年に出会ったのは無意味じゃなかった。あの出会いが全てを変えた。
あの待ち続けた日々も無駄じゃなかった。
赤木しげるは東雲舞美と共に。
東雲舞美は赤木しげると共に。
舞美の解釈は完了していた。
そしてアカギは全てを見透かしているかのように舞美に微笑んでみせた。
「あんたには ほんとうに敵わないね」
彼の言葉は煙に溶けて彼女に取り巻いた。
惜しいね とアカギは頭の中で呟く。
「——オレがあんたを 手に 入れたのさ。」
21.入り目[完]
…聴牌した際に入ってきた牌のこと。
くっつきテンパイ[完]
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