20.孤立牌
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「待ってた……って、牌がくっつくのを?」
あっさりと言ってのけたアカギに、思わず訝しげな表情をしてしまう。
「まあ……あんたから見ればそういうことになるね。」
「えっ、どういう意味?」
案の定、すぐに理解させてはもらえない。
毎度のことながら、ひと癖もふた癖もある。
「そうだな……あんたの言う通り、この孤立牌は自分の隣に何かがくっつくのをずっと待ってたわけだ。けど、オレが言いたいのは、待ってたのは向こうも同じ……つまり、山にいる方も、こいつの隣へ配置されるのを待ってたってこと」
「え……と、その言い方だと、アカギは山に隣牌があることを知ってたってこと? 必ずツモると分かってたの?」
舞美は、説明を受けてなお、自分はアカギの言いたいことを掴めていない気がした。
「別に知ってたわけじゃない。オレは今まで散々リーチだのなんだのしてきたが、毎回毎回、必ず和了ることを知ってて立直してるわけじゃないでしょ。それと同じ」
それはそうだ。アカギは百発百中に近いからこそ、後ろから見ていると、勝つ方法をあらかじめ“知っている”ように思えてくる。しかし実はそうではなく、彼は毎回己に従って“賭けている”だけなのだ。
「オレは“くっつくかもしれない”という可能性を見て執着したわけじゃない。いずれ手元に隣牌がくる、とオレは思っていた。そもそも、そこを疑う理由はオレにはない」
ようやく、舞美は自分の認識を改めた。そして、さっきのアカギのリーチの例えを理解した。
千点棒を出してリーチした後に、牌をツモり和了れたとする。その際、「なぜ必ず和了れると知っていたの?」という質問はてんで的外れだろう。誰であれ、和了るつもりじゃなければ立直はしない。自分の賭けを疑うことなど、なおさらアカギはしない。
そしてもちろん、それはたまたま和了ったとは言わない。
これは今までも分かってたことだ。想定外なのは、普通は決まった勝負所でこういった種類の賭けというものが発生するのに対して、アカギは全ての所作でそれを発生させるということだ。……たとえ小物相手だとしても。
「じゃあ——山に隣牌があると思った理由はないってこと?」
「理由? 言おうと思えばいくらでもあるよ。他家の捨て方を見れば待ちが死んでないことは分かる。でも……あんたが聞きたいことはそういうことじゃないんだろうね」
舞美は久しぶりに目を泳がせた。
「わ、わかるの? 私が聞きたいこと」
「多分ね。心当たりなら、ある」
あっさりと言ってのけたアカギに、思わず訝しげな表情をしてしまう。
「まあ……あんたから見ればそういうことになるね。」
「えっ、どういう意味?」
案の定、すぐに理解させてはもらえない。
毎度のことながら、ひと癖もふた癖もある。
「そうだな……あんたの言う通り、この孤立牌は自分の隣に何かがくっつくのをずっと待ってたわけだ。けど、オレが言いたいのは、待ってたのは向こうも同じ……つまり、山にいる方も、こいつの隣へ配置されるのを待ってたってこと」
「え……と、その言い方だと、アカギは山に隣牌があることを知ってたってこと? 必ずツモると分かってたの?」
舞美は、説明を受けてなお、自分はアカギの言いたいことを掴めていない気がした。
「別に知ってたわけじゃない。オレは今まで散々リーチだのなんだのしてきたが、毎回毎回、必ず和了ることを知ってて立直してるわけじゃないでしょ。それと同じ」
それはそうだ。アカギは百発百中に近いからこそ、後ろから見ていると、勝つ方法をあらかじめ“知っている”ように思えてくる。しかし実はそうではなく、彼は毎回己に従って“賭けている”だけなのだ。
「オレは“くっつくかもしれない”という可能性を見て執着したわけじゃない。いずれ手元に隣牌がくる、とオレは思っていた。そもそも、そこを疑う理由はオレにはない」
ようやく、舞美は自分の認識を改めた。そして、さっきのアカギのリーチの例えを理解した。
千点棒を出してリーチした後に、牌をツモり和了れたとする。その際、「なぜ必ず和了れると知っていたの?」という質問はてんで的外れだろう。誰であれ、和了るつもりじゃなければ立直はしない。自分の賭けを疑うことなど、なおさらアカギはしない。
そしてもちろん、それはたまたま和了ったとは言わない。
これは今までも分かってたことだ。想定外なのは、普通は決まった勝負所でこういった種類の賭けというものが発生するのに対して、アカギは全ての所作でそれを発生させるということだ。……たとえ小物相手だとしても。
「じゃあ——山に隣牌があると思った理由はないってこと?」
「理由? 言おうと思えばいくらでもあるよ。他家の捨て方を見れば待ちが死んでないことは分かる。でも……あんたが聞きたいことはそういうことじゃないんだろうね」
舞美は久しぶりに目を泳がせた。
「わ、わかるの? 私が聞きたいこと」
「多分ね。心当たりなら、ある」