20.孤立牌
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「……ま、とりあえず言ってみな。」
誤魔化し切れていない雰囲気を肌で感じつつ、舞美はこの話題を逃してなるものかと麻雀牌を取り出した。
「最後の方の……。帽子被ってた人が対面に来た時に打ってた時のもので……」
カチャカチャと牌を並べる。アカギがじっと見ているので少し緊張していた。
「確か、こういう手牌だったと思う」
一応、彼がテンパイする少し前の状況を大まかに再現できた。これで話が続けられる、と一安心する。アカギもそれを見て思い出したようだ。
「ああ、上家の手出しから和了ったときの?」
「そう、その時の」
舞美は酒をひと口飲んだ。アカギは話の続きを急かすことなく待っている。
「わたしが不思議に思ったのはね。これ。この牌。これに結構固執していたでしょう?」
ある一牌を指して言う。
アカギはこの時、一向聴の時点で浮き牌をひとつ抱えた状態だった。つまり雀頭1つ、ノベタンの形を1つ含んだ面子が3つあった。
頭頭 ○○○ ◇◇◇ ◎◎◎◎ ●
この孤立牌に隣牌がくっつけば良形テンパイも望める。これは中々良い状況である。別段、どこかおかしいところがあるわけでもない。
問題は、こうなる前だ。この形に持っていくまでに、その浮き牌を捨ててもいいような場面が何度もあったのだ。ただ彼が浮かせ打ちをしていたと言われればそうなのだが、どうも腑に落ちない。浮き牌を忍ばせておくことによって三色などの高い役を狙っていたわけでも、安牌だったわけでもないからだ。
そしてさらに。その牌はなんと、序盤から彼の手の内にあった。つまり、いくらかツモを重ねる中一度もその周辺の牌は来ず、孤立牌は孤立牌のまま“ずっとそこに有った”のだ。
しかし牌の状況を問わず、彼はそれを河に流そうとはしなかった。当たり前だが、鳴けるように待っているわけでもなかった。
それなのに場が整った途端、急に最高のタイミングでその隣牌をツモり、一番良い形でテンパイし、そのまま相手から和了をとったのである。
そうなってくると、それまでの一連の動きはただの気まぐれには思えなかった。しかしこれは麻雀。数打ちゃそういう局面にもなるだろうと思い、その場ではアカギに尋ねなかった。
一々彼の行動を追っていくなんて野暮というものだろう、と。アカギは序盤にあったものを残しておいた、その結果和了った。たったそれだけ。それが今回の彼の麻雀なのだろうと思った。
しかし今考えてみると、固執というイメージはアカギにはない。にも関わらず、アカギはまるでその一牌に固執しているように“見えた”。
やはり、なぜ他のものと同じように捨てないのかが気になってくる。
全ては舞美の勘違いで、固執なんてしておらず、実はただの遊び、手慰みだったという可能性もあるが、雰囲気からいってそれはない。彼は無駄なことはしないから。
だとすると、孤立牌ならなんでもよかったのか。それともその牌に何かを感じたのか。持っていればいずれ得すると分かっていたから抱えただけに過ぎないのか。
アカギの返答は、随分とあっさりしていた。
「まあね。待ってたから。」
誤魔化し切れていない雰囲気を肌で感じつつ、舞美はこの話題を逃してなるものかと麻雀牌を取り出した。
「最後の方の……。帽子被ってた人が対面に来た時に打ってた時のもので……」
カチャカチャと牌を並べる。アカギがじっと見ているので少し緊張していた。
「確か、こういう手牌だったと思う」
一応、彼がテンパイする少し前の状況を大まかに再現できた。これで話が続けられる、と一安心する。アカギもそれを見て思い出したようだ。
「ああ、上家の手出しから和了ったときの?」
「そう、その時の」
舞美は酒をひと口飲んだ。アカギは話の続きを急かすことなく待っている。
「わたしが不思議に思ったのはね。これ。この牌。これに結構固執していたでしょう?」
ある一牌を指して言う。
アカギはこの時、一向聴の時点で浮き牌をひとつ抱えた状態だった。つまり雀頭1つ、ノベタンの形を1つ含んだ面子が3つあった。
頭頭 ○○○ ◇◇◇ ◎◎◎◎ ●
この孤立牌に隣牌がくっつけば良形テンパイも望める。これは中々良い状況である。別段、どこかおかしいところがあるわけでもない。
問題は、こうなる前だ。この形に持っていくまでに、その浮き牌を捨ててもいいような場面が何度もあったのだ。ただ彼が浮かせ打ちをしていたと言われればそうなのだが、どうも腑に落ちない。浮き牌を忍ばせておくことによって三色などの高い役を狙っていたわけでも、安牌だったわけでもないからだ。
そしてさらに。その牌はなんと、序盤から彼の手の内にあった。つまり、いくらかツモを重ねる中一度もその周辺の牌は来ず、孤立牌は孤立牌のまま“ずっとそこに有った”のだ。
しかし牌の状況を問わず、彼はそれを河に流そうとはしなかった。当たり前だが、鳴けるように待っているわけでもなかった。
それなのに場が整った途端、急に最高のタイミングでその隣牌をツモり、一番良い形でテンパイし、そのまま相手から和了をとったのである。
そうなってくると、それまでの一連の動きはただの気まぐれには思えなかった。しかしこれは麻雀。数打ちゃそういう局面にもなるだろうと思い、その場ではアカギに尋ねなかった。
一々彼の行動を追っていくなんて野暮というものだろう、と。アカギは序盤にあったものを残しておいた、その結果和了った。たったそれだけ。それが今回の彼の麻雀なのだろうと思った。
しかし今考えてみると、固執というイメージはアカギにはない。にも関わらず、アカギはまるでその一牌に固執しているように“見えた”。
やはり、なぜ他のものと同じように捨てないのかが気になってくる。
全ては舞美の勘違いで、固執なんてしておらず、実はただの遊び、手慰みだったという可能性もあるが、雰囲気からいってそれはない。彼は無駄なことはしないから。
だとすると、孤立牌ならなんでもよかったのか。それともその牌に何かを感じたのか。持っていればいずれ得すると分かっていたから抱えただけに過ぎないのか。
アカギの返答は、随分とあっさりしていた。
「まあね。待ってたから。」