20.孤立牌
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「帰って呑むか」
「え? ……あ、うん、そうしましょ」
宿に向かう途中、舞美は頭の中のモヤがどんどん濃くなっていくのを感じた。言わずもがな、あの女の捨て台詞である。
“先に出会っただけ” なんてただの負け惜しみだ。そんなことは分かっているし、相手にすることはないはずだ。それでもこんなに印象に残るのは、実は少しだけ——ほんの一瞬だが——彼女の言葉に納得した部分があったからだろう。
だからなんだ? 今は舞美がアカギの女だし、もう欲しいものは手に入れた。アカギは別の女より自分を選んだし、やっぱり自分だけが彼を理解できると信じている。
何も心配することはない、順調だ。
しかし心の中でこうして反論すること自体がおかしい。どこか認めてしまっているような。なんて思考は堂々めぐりだ。最初は一瞬の懐疑だったのに、それが正体の分からない、大きな感情に昇華してしまった。
アカギとの時間に水をさされた、と思う。
そうこう考えているうちに宿に着いた。
一旦寝て明日になればさっぱり忘れてしまうかもしれない。だったらいいけど。
部屋で少し軽装になった2人は、なんだかんだと酒盛りの準備をして、席についた。アカギが口を開く。
「そう言や、そろそろここも潮時らしい」
あ。
さっきの女からもらった情報でしょ、それ!
舞美は一瞬だけ目を見開いた。
いやいや。だからあんな奴の言葉取り合う必要ないんだって。確かに、彼女の主張も分からなくもないけど……。うーん、一瞬でもあの女が自分と似ていると思ってしまったのが不幸だなあ……。
「……ねえ、聞いてるの。」
「えっ! あ、うん。ごめん。聞いてた。ええと……じゃあ、ここもそろそろ移動しないとね」
「……? あんた、さっきから何か様子が変だ」
目ざといアカギがじいっと舞美を見る。
う。
この圧。
何か言わないとまずい。
けど本当のことは言いたくない。
「あのー、ちょっと気になることがあってね」
「へえ。オレをないがしろにするほどに?」
「そうじゃ、なくて。考えてたのはアカギのことなの」
「何? 言いなよ」
「えっとね、」
部屋の麻雀牌がふと目に入り、舞美は言った。
「今日の勝負、アカギの打ち回しでちょっと不思議に思ったことがあって……」
さらっと誤魔化すことができたのは、実は確かに気になった打ち回しがあったからだ。
「え? ……あ、うん、そうしましょ」
宿に向かう途中、舞美は頭の中のモヤがどんどん濃くなっていくのを感じた。言わずもがな、あの女の捨て台詞である。
“先に出会っただけ” なんてただの負け惜しみだ。そんなことは分かっているし、相手にすることはないはずだ。それでもこんなに印象に残るのは、実は少しだけ——ほんの一瞬だが——彼女の言葉に納得した部分があったからだろう。
だからなんだ? 今は舞美がアカギの女だし、もう欲しいものは手に入れた。アカギは別の女より自分を選んだし、やっぱり自分だけが彼を理解できると信じている。
何も心配することはない、順調だ。
しかし心の中でこうして反論すること自体がおかしい。どこか認めてしまっているような。なんて思考は堂々めぐりだ。最初は一瞬の懐疑だったのに、それが正体の分からない、大きな感情に昇華してしまった。
アカギとの時間に水をさされた、と思う。
そうこう考えているうちに宿に着いた。
一旦寝て明日になればさっぱり忘れてしまうかもしれない。だったらいいけど。
部屋で少し軽装になった2人は、なんだかんだと酒盛りの準備をして、席についた。アカギが口を開く。
「そう言や、そろそろここも潮時らしい」
あ。
さっきの女からもらった情報でしょ、それ!
舞美は一瞬だけ目を見開いた。
いやいや。だからあんな奴の言葉取り合う必要ないんだって。確かに、彼女の主張も分からなくもないけど……。うーん、一瞬でもあの女が自分と似ていると思ってしまったのが不幸だなあ……。
「……ねえ、聞いてるの。」
「えっ! あ、うん。ごめん。聞いてた。ええと……じゃあ、ここもそろそろ移動しないとね」
「……? あんた、さっきから何か様子が変だ」
目ざといアカギがじいっと舞美を見る。
う。
この圧。
何か言わないとまずい。
けど本当のことは言いたくない。
「あのー、ちょっと気になることがあってね」
「へえ。オレをないがしろにするほどに?」
「そうじゃ、なくて。考えてたのはアカギのことなの」
「何? 言いなよ」
「えっとね、」
部屋の麻雀牌がふと目に入り、舞美は言った。
「今日の勝負、アカギの打ち回しでちょっと不思議に思ったことがあって……」
さらっと誤魔化すことができたのは、実は確かに気になった打ち回しがあったからだ。