20.孤立牌
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……まさかアカギがそんな陳腐な女の誘いに乗るとは思っていなかった。思わず拳を握りしめたところへ、更なる追い討ちが襲う。
「きゃっ、アカギさんたら積極的!」
どうやらアカギが女の手に触れたらしい。
気のせいか、頭痛までしてきた。
お手洗いに行くから待っていてと伝えたはずなのに、まさか2人でこのまま行ってしまうのか。
いや、アカギがそんなことするわけない。
分かっていても気分は良くない。
怒るよりも青くなり始めた時、アカギは言った。
「なに勘違いしてるんだよ。証明してくれるんだろ」
「勘違いって……? ううん、私、アカギさんの満足いくまでできますよ」
「そう。でも、オレとあんたはどうやら食い違ってるらしいね」
「えっと……私、違いました?」
舞美からもはっきり見える。
アカギは女の薬指に力を込めていた。
「これ一本だ」
当時、婚約・結婚指輪なるものが一般に広まり始めていた時代。薬指と言えばそれを指すものであったためだろう、女の方は喜びを隠せずにいる。
しかし、この時舞美は既にアカギの真意を悟っていた。
「ほら」
「え?」
「指一本詰めさえすれば、あんたのこと認めてやるよ。
……自信があるんだろ?」
要するに、一本は一本なのである。
頭痛は既に、消えていた。
「え……? 指……詰める……?」
女はきょとんとした後、くすくすと笑い出した。
「やだ、びっくりした。そんな乱暴なこと言うなんて。アカギさん、こわい人みたい」
そう言って笑い続ける女に、舞美は絶句する。
この人は一体アカギの何を見てきたと言うのだろう。赤木しげるという男は、彼女の言う“こわい人 ”からも恐れられているというのに。全くもって的外れである。
アカギの反応も似たようなものだった。
「フフ……案の定、あんたは器 じゃない。やめときな。どうせオレのことなど理解 らない。」
女からすると、突然のことで本当によく分からないだろう。
「え? だってアカギさん……指って、まさか本気じゃないでしょう?」
「いや?」
「な、何を言っているのかわからないですよ……?」
舞美はそろそろ出て行こうかと考える。
もうここから先は何も進まないだろう。
「そもそも、私の指が、一体なんの役に、」
「何言ってる。証明だとか言い出したのはあんたの方だぜ。あいつよりどうのこうのと抜かしてたじゃない」
あ、自分の話をしている、と舞美は思った。
だから、ここぞというタイミングで、“お手洗いから帰ってきましたけど何か?”といったような顔でアカギの方へ姿を現す。
「ごめんアカギ、お待たせして」
言うと、彼はこちらへ顔を向けて、「ん。」と返事(のようなもの)をした。
よく見ると、本当に少しだけ微笑みながら。
さらに舞美は女に目を向け、続ける。
「アカギ、その人は? 知り合い?」
女と目が合った。
「いいや。知り合った覚えはないね」
「なっ……⁈」
アカギのその言葉に、その人の表情が変わる。好意を寄せた相手、それも少し前まで脈アリだと思っていた相手に、知り合いということまで否定されたら、そんな顔にもなるだろう。
「じゃ、悪いけど。」
悪いと思っていない顔でアカギが言うと、女は奥歯を噛み締めてから、舞美に向かって小さく言った。
「先に出会っただけのくせに。」
「きゃっ、アカギさんたら積極的!」
どうやらアカギが女の手に触れたらしい。
気のせいか、頭痛までしてきた。
お手洗いに行くから待っていてと伝えたはずなのに、まさか2人でこのまま行ってしまうのか。
いや、アカギがそんなことするわけない。
分かっていても気分は良くない。
怒るよりも青くなり始めた時、アカギは言った。
「なに勘違いしてるんだよ。証明してくれるんだろ」
「勘違いって……? ううん、私、アカギさんの満足いくまでできますよ」
「そう。でも、オレとあんたはどうやら食い違ってるらしいね」
「えっと……私、違いました?」
舞美からもはっきり見える。
アカギは女の薬指に力を込めていた。
「これ一本だ」
当時、婚約・結婚指輪なるものが一般に広まり始めていた時代。薬指と言えばそれを指すものであったためだろう、女の方は喜びを隠せずにいる。
しかし、この時舞美は既にアカギの真意を悟っていた。
「ほら」
「え?」
「指一本詰めさえすれば、あんたのこと認めてやるよ。
……自信があるんだろ?」
要するに、一本は一本なのである。
頭痛は既に、消えていた。
「え……? 指……詰める……?」
女はきょとんとした後、くすくすと笑い出した。
「やだ、びっくりした。そんな乱暴なこと言うなんて。アカギさん、こわい人みたい」
そう言って笑い続ける女に、舞美は絶句する。
この人は一体アカギの何を見てきたと言うのだろう。赤木しげるという男は、彼女の言う“
アカギの反応も似たようなものだった。
「フフ……案の定、あんたは
女からすると、突然のことで本当によく分からないだろう。
「え? だってアカギさん……指って、まさか本気じゃないでしょう?」
「いや?」
「な、何を言っているのかわからないですよ……?」
舞美はそろそろ出て行こうかと考える。
もうここから先は何も進まないだろう。
「そもそも、私の指が、一体なんの役に、」
「何言ってる。証明だとか言い出したのはあんたの方だぜ。あいつよりどうのこうのと抜かしてたじゃない」
あ、自分の話をしている、と舞美は思った。
だから、ここぞというタイミングで、“お手洗いから帰ってきましたけど何か?”といったような顔でアカギの方へ姿を現す。
「ごめんアカギ、お待たせして」
言うと、彼はこちらへ顔を向けて、「ん。」と返事(のようなもの)をした。
よく見ると、本当に少しだけ微笑みながら。
さらに舞美は女に目を向け、続ける。
「アカギ、その人は? 知り合い?」
女と目が合った。
「いいや。知り合った覚えはないね」
「なっ……⁈」
アカギのその言葉に、その人の表情が変わる。好意を寄せた相手、それも少し前まで脈アリだと思っていた相手に、知り合いということまで否定されたら、そんな顔にもなるだろう。
「じゃ、悪いけど。」
悪いと思っていない顔でアカギが言うと、女は奥歯を噛み締めてから、舞美に向かって小さく言った。
「先に出会っただけのくせに。」