20.孤立牌
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足元が崩れ落ちていくような感覚を覚えながらも、舞美はどこか冷静だった。
アカギについていきたいからと家を出る。実はそれは、若い女にとってはそれほど難しいことではないかもしれない。
つまりあの女も自分も、それほど特別な人間ではない……のかもしれない。
それでも、アカギは自分を選んでくれた、という確かな価値観が舞美の中にはある。
それがこの瞬間も舞美を支えている。
首飾りが揺れないように、手をやった。
アカギの隣に自分以外の女がいるということに慣れていないので嫉妬に狂いそうになったが、そもそもアカギはこれだけ自分を好いてくれている。舞美はそれを“知っている”。
その点であの女と決定的な差がある。
ぽかり。
アカギの吐いた煙が宙に浮いていく。
あとは、アカギが女の戯れ言を一蹴するのを聞くだけだ。舞美は、彼が断り、そして女が去ったら、何も知らないといった風に出て行くつもりだ。
「ね、いいでしょう、アカギさん」
彼女が答えを促して、ようやくアカギが答える。
「……あんたを連れていくんなら、オレはもう一人の方を捨てなきゃいけない」
「あ……知ってますよ。前、女の人がアカギさんと一緒にいるのを見たことある」
「ふーん。じゃあ話は早いね」
舞美は内心やきもきしながら、アカギが追い払うのを待っていた。彼の“捨てなきゃいけない”という表現。これはどちらにもとれる。文字通り“女を連れていくために舞美を捨てる必要がある”といったものと、“舞美を捨てることが条件となるので無理だ”という解釈がある。
もちろん舞美は後者のつもりでアカギが言っていることを感じ取れるが、女は勝手に前者で受け取るかもしれない。恋をするとなんでも好意的に受け取ってしまう人は少なくない。
そして。
次の女の一言は、アカギの表情を変えることに成功する。
「私、その女の人よりもアカギさんのこと好きな自信ありますよ。……証明、できますよ」
東雲舞美は焦った。というのも、彼女はわざわざ身体の線を強調して言ったからだ。
“証明”なんて何をしでかすつもりなのか。
舞美は同性だからこそ、女の武器の強さと、それを目の前にした男の弱さを知っている。いや、アカギを信じてはいるものの、既にこの状況自体が耐えがたい。
——アカギのこと、何も知らない癖に。
わたしよりアカギを好きなんてあり得ない。
が。そんな舞美とは裏腹に、
「証明? へえ。できるの。」
と、アカギは楽しそうに返答してしまった。
ぐらり、と眩暈がした。
だってそんな、まさか。
アカギについていきたいからと家を出る。実はそれは、若い女にとってはそれほど難しいことではないかもしれない。
つまりあの女も自分も、それほど特別な人間ではない……のかもしれない。
それでも、アカギは自分を選んでくれた、という確かな価値観が舞美の中にはある。
それがこの瞬間も舞美を支えている。
首飾りが揺れないように、手をやった。
アカギの隣に自分以外の女がいるということに慣れていないので嫉妬に狂いそうになったが、そもそもアカギはこれだけ自分を好いてくれている。舞美はそれを“知っている”。
その点であの女と決定的な差がある。
ぽかり。
アカギの吐いた煙が宙に浮いていく。
あとは、アカギが女の戯れ言を一蹴するのを聞くだけだ。舞美は、彼が断り、そして女が去ったら、何も知らないといった風に出て行くつもりだ。
「ね、いいでしょう、アカギさん」
彼女が答えを促して、ようやくアカギが答える。
「……あんたを連れていくんなら、オレはもう一人の方を捨てなきゃいけない」
「あ……知ってますよ。前、女の人がアカギさんと一緒にいるのを見たことある」
「ふーん。じゃあ話は早いね」
舞美は内心やきもきしながら、アカギが追い払うのを待っていた。彼の“捨てなきゃいけない”という表現。これはどちらにもとれる。文字通り“女を連れていくために舞美を捨てる必要がある”といったものと、“舞美を捨てることが条件となるので無理だ”という解釈がある。
もちろん舞美は後者のつもりでアカギが言っていることを感じ取れるが、女は勝手に前者で受け取るかもしれない。恋をするとなんでも好意的に受け取ってしまう人は少なくない。
そして。
次の女の一言は、アカギの表情を変えることに成功する。
「私、その女の人よりもアカギさんのこと好きな自信ありますよ。……証明、できますよ」
東雲舞美は焦った。というのも、彼女はわざわざ身体の線を強調して言ったからだ。
“証明”なんて何をしでかすつもりなのか。
舞美は同性だからこそ、女の武器の強さと、それを目の前にした男の弱さを知っている。いや、アカギを信じてはいるものの、既にこの状況自体が耐えがたい。
——アカギのこと、何も知らない癖に。
わたしよりアカギを好きなんてあり得ない。
が。そんな舞美とは裏腹に、
「証明? へえ。できるの。」
と、アカギは楽しそうに返答してしまった。
ぐらり、と眩暈がした。
だってそんな、まさか。