20.孤立牌
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その夜、アカギが小さな勝負を終えたところで、2人は街の賭博場を出た。夜道にアカギが一息ついたところで、舞美はお手洗いに行きたくなった。緊張が解けたからだろう。
「ごめんアカギ……ちょっと待ってて」
「ん、いいぜ。ここにいる」
うん、と返事してそこへ向かう。
ちらと振り返ってみると、アカギはライターで煙草に火をつけるところだった。
今回の賭博場は危険な鉄火場などではなく、ただ呑んだくれ達のためにある一般人向けの娯楽場と表す方が合っていたような気がする。街中には一般人 が普通に歩いている。だから、舞美はひとりでも安心して用を足しに行けた。
***
そして、なんの問題もなくアカギの元に戻ると——お待たせ、と言おうとしたんだけど——舞美は咄嗟に物陰に隠れた。出て行こうとは思わなかった。
だって、アカギと、見知らぬ女の人が喋っていたから。
いや、アカギが魅力的なのは分かっている。だから、女の人に声をかけられること自体はそんなに不思議なことではないけれど……。
相手の人は、夜の仕事をしているようにも、男漁りに長けているようにも見えなかった。それがなんとも引っかかる。自分と年齢はそう変わらないと思う。舞美は会話に耳を傾けた。
「アカギさん、今日も勝ったんですよね」
「ん……まぁね」
「きゃあ! すごーーい!!」
女の方から話しかけてアカギが対応しているという状況なのは分かる。アカギは舞美をこの場所で待っているのだから動けないし、それで焼きもちなんて焼くつもりはない。
しかし、“今日も” 勝ったと女は言った。
なに、普段のアカギを知ってるわけ?
この感じだと何回か話したことありそうだけど?
どうしよう、出て行ってアカギの隣に並ぶか……、それとも珍しい光景なのでもう少し見てからにするか。決断を下さないということは、必然的に後者を選択することになるわけで。
ああ、盗み聞きなんてはしたないのに。
「アカギさん、結構有名になってますよっ。かっこよくて、男前な勝負師がこの辺りにさすらってきたって……。ねえ、それって、アカギさんのことですよねえ?」
「……かもね。そろそろ潮時だな、ここも」
「えっと……どこか別の場所に行くんですか?」
「そう」
「ふーん……そうなんだぁ……」
舞美はその瞬間、ぞくりとした。
あの女の目を見たことがある。
同じだ……鏡に映った、自分の瞳と同じ。
アカギが唯一無二だとしても、自分は果たしてどうだろうか?
上目遣いの“ソイツ”は続けた。
「私も、そこに連れて行ってくれませんか……?」
「ごめんアカギ……ちょっと待ってて」
「ん、いいぜ。ここにいる」
うん、と返事してそこへ向かう。
ちらと振り返ってみると、アカギはライターで煙草に火をつけるところだった。
今回の賭博場は危険な鉄火場などではなく、ただ呑んだくれ達のためにある一般人向けの娯楽場と表す方が合っていたような気がする。街中には
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そして、なんの問題もなくアカギの元に戻ると——お待たせ、と言おうとしたんだけど——舞美は咄嗟に物陰に隠れた。出て行こうとは思わなかった。
だって、アカギと、見知らぬ女の人が喋っていたから。
いや、アカギが魅力的なのは分かっている。だから、女の人に声をかけられること自体はそんなに不思議なことではないけれど……。
相手の人は、夜の仕事をしているようにも、男漁りに長けているようにも見えなかった。それがなんとも引っかかる。自分と年齢はそう変わらないと思う。舞美は会話に耳を傾けた。
「アカギさん、今日も勝ったんですよね」
「ん……まぁね」
「きゃあ! すごーーい!!」
女の方から話しかけてアカギが対応しているという状況なのは分かる。アカギは舞美をこの場所で待っているのだから動けないし、それで焼きもちなんて焼くつもりはない。
しかし、“今日も” 勝ったと女は言った。
なに、普段のアカギを知ってるわけ?
この感じだと何回か話したことありそうだけど?
どうしよう、出て行ってアカギの隣に並ぶか……、それとも珍しい光景なのでもう少し見てからにするか。決断を下さないということは、必然的に後者を選択することになるわけで。
ああ、盗み聞きなんてはしたないのに。
「アカギさん、結構有名になってますよっ。かっこよくて、男前な勝負師がこの辺りにさすらってきたって……。ねえ、それって、アカギさんのことですよねえ?」
「……かもね。そろそろ潮時だな、ここも」
「えっと……どこか別の場所に行くんですか?」
「そう」
「ふーん……そうなんだぁ……」
舞美はその瞬間、ぞくりとした。
あの女の目を見たことがある。
同じだ……鏡に映った、自分の瞳と同じ。
アカギが唯一無二だとしても、自分は果たしてどうだろうか?
上目遣いの“ソイツ”は続けた。
「私も、そこに連れて行ってくれませんか……?」