19.棚牡丹*
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嬉しさと気恥ずかしさが混ざって、舞美はアカギに顔を寄せた。こうすると、大抵アカギはいつも欲しがっているものをくれるのだけど。
「……ん、なに?」
アカギはじとりと視線を合わせてくるのみ。
「キス、したいの?」
舞美は恥をしのんで頷く。
「う……うん、したい」
「ふーん」
アカギはまた舞美の頭をよしよしと撫でた。
「そんなにしたいんだ、オレと」
「したい」
「じゃあ、してみなよ。」
「……わかった」
舞美はアカギの挑発に乗ることにした。
目も瞑らずこちらを見据えるアカギの眼光はできるだけ無視して。
それから襟元をこっそりとつまんで。
どきどきしながら、目をぎゅっとつむって。
最後は少しだけ勢いをつけて……重ねた。
しかし、そこまでしてもアカギは何もしてくれない。早く溶かされたいのに、キスでさえ焦らされるなんて。舞美は痺れを切らして、自分から舌をねじ込んだ。
途端、アカギの体温が直に感じられて、それがもっと欲しくなった舞美は、試しに舌を絡めてみた。
しかし彼からの動きはない。
舞美は一旦顔を離し、不機嫌に言った。
「ねえ」
「ん。もう満足?」
「わ、わたしが、これだけで満足できると思うの?」
「フフ……確かにあんた貪欲だもんね」
アカギは不敵に笑っていた。
「オレの方から動かないと不安になっちゃうあんたも面白かったよ」
「な、」
「ほら、目閉じて」
そうやって急かすように言われたら、そのまま言う通りにしてしまう。暗闇に身を任せた瞬間に、腰を引き寄せられ、あとは望んだものがきた。“彼” のキス。
(そう、これ)
彼に奪われると、心地よい最中に少しだけ悪い心を混ぜ込まれ、邪な心を呼び覚まされたのち、背徳的な快楽に身を任せてしまう。
例えば一番簡単なのが罪悪感。彼は普通の人間といてはいけないひとのはずなのに。もはや聖人とも言えるほどの純粋な狂気と、偏った真っ直ぐな思想をもつ彼が。目の前でただの雄になるのだ。自分があの天才をただの生物にしている。この人とでしかこの感情はあり得ない。
そして何者かに対する嫉妬心をも抱いてしまう。それは、もしかしたら自分よりもアカギと対等になれる女がいるかもしれないという疑念。もしかしたら彼と同じ思想をもち、彼のような狂気を孕んだ女がどこかにいるのかも。本当はそいつと出逢った方がアカギにとって幸せなのではないか、とまで考えてしまう。
それらが混ざり合い、それでも縋って、一層深い幸福感に頭がおかしくなりそうになる。
それはアカギが求めているのが東雲舞美だからであって、その事実だけで全てが変わる。
舞美もやみつきになった。
赤木しげるの口づけは、罪の味がする。
「……ん、なに?」
アカギはじとりと視線を合わせてくるのみ。
「キス、したいの?」
舞美は恥をしのんで頷く。
「う……うん、したい」
「ふーん」
アカギはまた舞美の頭をよしよしと撫でた。
「そんなにしたいんだ、オレと」
「したい」
「じゃあ、してみなよ。」
「……わかった」
舞美はアカギの挑発に乗ることにした。
目も瞑らずこちらを見据えるアカギの眼光はできるだけ無視して。
それから襟元をこっそりとつまんで。
どきどきしながら、目をぎゅっとつむって。
最後は少しだけ勢いをつけて……重ねた。
しかし、そこまでしてもアカギは何もしてくれない。早く溶かされたいのに、キスでさえ焦らされるなんて。舞美は痺れを切らして、自分から舌をねじ込んだ。
途端、アカギの体温が直に感じられて、それがもっと欲しくなった舞美は、試しに舌を絡めてみた。
しかし彼からの動きはない。
舞美は一旦顔を離し、不機嫌に言った。
「ねえ」
「ん。もう満足?」
「わ、わたしが、これだけで満足できると思うの?」
「フフ……確かにあんた貪欲だもんね」
アカギは不敵に笑っていた。
「オレの方から動かないと不安になっちゃうあんたも面白かったよ」
「な、」
「ほら、目閉じて」
そうやって急かすように言われたら、そのまま言う通りにしてしまう。暗闇に身を任せた瞬間に、腰を引き寄せられ、あとは望んだものがきた。“彼” のキス。
(そう、これ)
彼に奪われると、心地よい最中に少しだけ悪い心を混ぜ込まれ、邪な心を呼び覚まされたのち、背徳的な快楽に身を任せてしまう。
例えば一番簡単なのが罪悪感。彼は普通の人間といてはいけないひとのはずなのに。もはや聖人とも言えるほどの純粋な狂気と、偏った真っ直ぐな思想をもつ彼が。目の前でただの雄になるのだ。自分があの天才をただの生物にしている。この人とでしかこの感情はあり得ない。
そして何者かに対する嫉妬心をも抱いてしまう。それは、もしかしたら自分よりもアカギと対等になれる女がいるかもしれないという疑念。もしかしたら彼と同じ思想をもち、彼のような狂気を孕んだ女がどこかにいるのかも。本当はそいつと出逢った方がアカギにとって幸せなのではないか、とまで考えてしまう。
それらが混ざり合い、それでも縋って、一層深い幸福感に頭がおかしくなりそうになる。
それはアカギが求めているのが東雲舞美だからであって、その事実だけで全てが変わる。
舞美もやみつきになった。
赤木しげるの口づけは、罪の味がする。