18.金輪際
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「え、あっ、えぇっ?」
「なに、否定しないんだ」
アカギはそのまま自分の服に手をかけ、女より数倍早く身軽になっていく。
きゃあ、と脳内の乙女が黄色い悲鳴をあげる。舞美はアカギの腹筋を凝視した。そうしたらその縦筋から目が離せなくなった。細身だけど、やはり男性の体つきなのだ。
一体彼の色気はどこからやってくるのか……と見ていると。
「……もしかして、脱がされるの待ってんの?」
動かなくなった舞美にアカギが言った。
「へっ、」
目線を上げたらすぐに目が合って怯む。
「手がかかるね」
気がつけば、無意識に無条件降伏のばんざいをしていて、アカギによって服は脱がされていく。下着姿になり、ようやく照れが追いついてきた。そんな舞美を見てアカギは肩をすくめる。
「オレのもいっぱい見てきたでしょ。」
「なっ! 何言ってるの」
彼の言葉に一々取り合っていては心臓がもたない。舞美は入浴剤を発見し、それに感謝し、身を乗り出して湯船に放り投げた。その隙に後ろから下着も剥ぎ取られたので、慌ててかけ湯をして湯船に入る。油断も隙もあったものじゃない。
しばらくしてアカギも入ってきた。もちろん舞美はその時下を向いていた。
この湯船、結構広いのだが、それにしては距離が近い。
「……へんなこと、しようとしてないよね?」
「困るね。なんで?」
「さっきの話、終わってないし」
「なんだ。終わったら良いってわけか」
舞美は少し言葉を詰まらせてから言った。
「とにかく! わたしを無駄に気にしない……ってどういう意味?」
この言葉はどうとでも受け取れる。彼の返答によっては、傷つくことになるかもしれない。
しかし、ここを曖昧にしたまま、流れで彼に抱かれたくはなかった。都合のいい女と思われても良いとはいえ、アカギとはできるだけ対等でいたい。
ため息一つ。それからアカギは話し出した。
「あんたはオレといると、オレはあんたといると。互いに危ないってのは……あんたも身に染みてるでしょ。」
アカギが舞美の髪を一房つまんだ。
舞美は頷く。他の人にも何度か言われたし、そんなことは百も承知だった。
「オレからあんたを解放してやりたくてさ。目覚めの悪い後追いなんて御免だから」
「……」
「けど、あんたが泣いてるのを見て……やめた」
やめた、って。
舞美は驚く。
自分の涙にアカギという者の意見を変える力があるなんて知らなかったから。
「だからもう“無駄に”気にしないことにした。あんたの死に方にも拘らねぇよ。ショック死だってそれもまた一興じゃない。」
死ぬときは死ぬ。
それはアカギの芯であるはずだった。他の誰にも適用されない、アカギだけの信念だったはず。同じような言葉を彼女に投げかけようとも、それは言葉遊びのようなもので、アカギの本心じゃなかったのだろう。
だから今まで舞美への危機は許してこなかった。それなのにその観念をいま、本当の意味で舞美に適用させたという。
ほかの人間がこれを口にするのとは違う意味を含んでいた。命よりも“自分”がいちばん大事だというアカギが、まるで舞美を自分の一部のように扱っているという事実。
文句なしの殺し文句。
「ま、オレが助けられるときは安心してれば良いけどね」
「アカギ……!」
「オレも元通りオレの好きなようにするから」
アカギは肩をすくめた。
「だから逆に……泣こうが喚こうが。もうあんたは逃げられないよ」
18.金輪際〈完〉
「なに、否定しないんだ」
アカギはそのまま自分の服に手をかけ、女より数倍早く身軽になっていく。
きゃあ、と脳内の乙女が黄色い悲鳴をあげる。舞美はアカギの腹筋を凝視した。そうしたらその縦筋から目が離せなくなった。細身だけど、やはり男性の体つきなのだ。
一体彼の色気はどこからやってくるのか……と見ていると。
「……もしかして、脱がされるの待ってんの?」
動かなくなった舞美にアカギが言った。
「へっ、」
目線を上げたらすぐに目が合って怯む。
「手がかかるね」
気がつけば、無意識に無条件降伏のばんざいをしていて、アカギによって服は脱がされていく。下着姿になり、ようやく照れが追いついてきた。そんな舞美を見てアカギは肩をすくめる。
「オレのもいっぱい見てきたでしょ。」
「なっ! 何言ってるの」
彼の言葉に一々取り合っていては心臓がもたない。舞美は入浴剤を発見し、それに感謝し、身を乗り出して湯船に放り投げた。その隙に後ろから下着も剥ぎ取られたので、慌ててかけ湯をして湯船に入る。油断も隙もあったものじゃない。
しばらくしてアカギも入ってきた。もちろん舞美はその時下を向いていた。
この湯船、結構広いのだが、それにしては距離が近い。
「……へんなこと、しようとしてないよね?」
「困るね。なんで?」
「さっきの話、終わってないし」
「なんだ。終わったら良いってわけか」
舞美は少し言葉を詰まらせてから言った。
「とにかく! わたしを無駄に気にしない……ってどういう意味?」
この言葉はどうとでも受け取れる。彼の返答によっては、傷つくことになるかもしれない。
しかし、ここを曖昧にしたまま、流れで彼に抱かれたくはなかった。都合のいい女と思われても良いとはいえ、アカギとはできるだけ対等でいたい。
ため息一つ。それからアカギは話し出した。
「あんたはオレといると、オレはあんたといると。互いに危ないってのは……あんたも身に染みてるでしょ。」
アカギが舞美の髪を一房つまんだ。
舞美は頷く。他の人にも何度か言われたし、そんなことは百も承知だった。
「オレからあんたを解放してやりたくてさ。目覚めの悪い後追いなんて御免だから」
「……」
「けど、あんたが泣いてるのを見て……やめた」
やめた、って。
舞美は驚く。
自分の涙にアカギという者の意見を変える力があるなんて知らなかったから。
「だからもう“無駄に”気にしないことにした。あんたの死に方にも拘らねぇよ。ショック死だってそれもまた一興じゃない。」
死ぬときは死ぬ。
それはアカギの芯であるはずだった。他の誰にも適用されない、アカギだけの信念だったはず。同じような言葉を彼女に投げかけようとも、それは言葉遊びのようなもので、アカギの本心じゃなかったのだろう。
だから今まで舞美への危機は許してこなかった。それなのにその観念をいま、本当の意味で舞美に適用させたという。
ほかの人間がこれを口にするのとは違う意味を含んでいた。命よりも“自分”がいちばん大事だというアカギが、まるで舞美を自分の一部のように扱っているという事実。
文句なしの殺し文句。
「ま、オレが助けられるときは安心してれば良いけどね」
「アカギ……!」
「オレも元通りオレの好きなようにするから」
アカギは肩をすくめた。
「だから逆に……泣こうが喚こうが。もうあんたは逃げられないよ」
18.金輪際〈完〉