18.金輪際
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急に、ぐいと腕がひかれた。
ぱっと顔を上げると、同じようにずぶ濡れになったアカギがこちらに顔を向けている。
「——」
舞美は何かを言いかけて——それから口を閉じた。舞美の立ち上がる気配が無いと分かると、アカギは再び彼女の腕を強く引いた。
それに任せてちゃんと二本の足で立つと、空が近くなった気がした。天候は相変わらずだが、もうさっきほどの恐怖は感じない。
無表情でアカギを見つめると、彼は強引に、唇を押しつけてきた。キスは雨の味がした。ただ冷え切った体の中で、一点だけが熱く燃えているように感じた。このキスの意味を考える余裕なんてなかった。でも、こうされることはとても自然だと舞美には思えた。
ゆっくりと離れたアカギは、やはり何も言わないまま、舞美を引っ張っていく。絶対に連れて帰るという意志が感じられるほど強かった。痛みは全く感じなかったけれど。
***
しばらく歩き、舞美はぽつりと、「傘は。」と呟いた。何も2人してずぶ濡れになる必要はない。なのになぜあなたは傘を差してこなかったのか、と。するとアカギは前を向いたまま、そっけなく言った。
「もうあんたは濡れてるだろうから……意味ないと思った」
ああなんだ、知らなかった。
普通の人にとって、傘は “雨を防ぐためもの” だけど、アカギにとっては “舞美が雨を防ぐためのもの” だったのだ。自分だけ濡れずにいるなんて選択肢は初めからなかったわけで。
そう言えばあの傘も舞美が買って与えたものだったなと考えて、舞美はまた小さくぼやく。
「馬鹿じゃないの」
アカギからの返答はない。
舞美も返事を必要としていなかった。
雷は一度も落ちないまま、その光源は遠く向こうへと離れていった。
ぱっと顔を上げると、同じようにずぶ濡れになったアカギがこちらに顔を向けている。
「——」
舞美は何かを言いかけて——それから口を閉じた。舞美の立ち上がる気配が無いと分かると、アカギは再び彼女の腕を強く引いた。
それに任せてちゃんと二本の足で立つと、空が近くなった気がした。天候は相変わらずだが、もうさっきほどの恐怖は感じない。
無表情でアカギを見つめると、彼は強引に、唇を押しつけてきた。キスは雨の味がした。ただ冷え切った体の中で、一点だけが熱く燃えているように感じた。このキスの意味を考える余裕なんてなかった。でも、こうされることはとても自然だと舞美には思えた。
ゆっくりと離れたアカギは、やはり何も言わないまま、舞美を引っ張っていく。絶対に連れて帰るという意志が感じられるほど強かった。痛みは全く感じなかったけれど。
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しばらく歩き、舞美はぽつりと、「傘は。」と呟いた。何も2人してずぶ濡れになる必要はない。なのになぜあなたは傘を差してこなかったのか、と。するとアカギは前を向いたまま、そっけなく言った。
「もうあんたは濡れてるだろうから……意味ないと思った」
ああなんだ、知らなかった。
普通の人にとって、傘は “雨を防ぐためもの” だけど、アカギにとっては “舞美が雨を防ぐためのもの” だったのだ。自分だけ濡れずにいるなんて選択肢は初めからなかったわけで。
そう言えばあの傘も舞美が買って与えたものだったなと考えて、舞美はまた小さくぼやく。
「馬鹿じゃないの」
アカギからの返答はない。
舞美も返事を必要としていなかった。
雷は一度も落ちないまま、その光源は遠く向こうへと離れていった。