18.金輪際
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——雨が降り始める、少し前。
白髪の男は、「聞きたくない!」と悲痛に叫んだ女のことを考えていた。
持っていけと渡した資金をこちら側に投げてよこした、あの女。最後に、こんなもの要らない、と主張して東雲舞美は彼女らしく去っていったのだ。
ただ一点を除いては。
(……泣いてた。)
男は鞄を拾って一旦中に入った。
巷 には聞いていたが、女の涙ってのは確かに堪 えるらしい。
それでも、東雲のことだから行き倒れるなんてことはない。と思った。彼女はいつも強かったから。
とは言えこんな風な形で追い出すことになろうとは。
アカギは小さく息をつく。
煙草を吸うような気分ではなかった。
たぶん東雲のような女は他に現れない。むしろそうでなくては困る。あんなやつが何人もいてたまるか。
実を言うと、東雲が金を受け取らなくても問題はない。その場合は、この金を彼女の家に送りつけてやれば良いだけのこと。
それが終わればもうやることはなく、いとも容易く縁は切れるのだ。
少なくともその予定だった……さっきまでは。
(オレがこんなに鈍るなんて)
せっかく突き放したのに、今にも迎えに行ってしまいそうで困る。
(厄介で、面倒だ……)
アカギが窓の外を眺めていると。
暗雲立ち込めるとはこのことか、空はすぐさま黒色に塗りつぶされていった。
空気が変わったかと思えば、窓に水滴が叩きつけられるのなんてすぐのことだった。
はっ、とアカギは鼻で笑う。
東雲は傘を持っていなかった。
アカギはしばらく様子を見ていたが、稲光が空を割ったところで、腰を上げた。
彼女が素直に雨宿りするとは思えない。
雷鳴の轟きが光を追いかけてアカギの元にたどり着く頃には、アカギは既に、なぜか“散歩”に出かける気分になっていた。
もちろん、傘は持たずして。
白髪の男は、「聞きたくない!」と悲痛に叫んだ女のことを考えていた。
持っていけと渡した資金をこちら側に投げてよこした、あの女。最後に、こんなもの要らない、と主張して東雲舞美は彼女らしく去っていったのだ。
ただ一点を除いては。
(……泣いてた。)
男は鞄を拾って一旦中に入った。
それでも、東雲のことだから行き倒れるなんてことはない。と思った。彼女はいつも強かったから。
とは言えこんな風な形で追い出すことになろうとは。
アカギは小さく息をつく。
煙草を吸うような気分ではなかった。
たぶん東雲のような女は他に現れない。むしろそうでなくては困る。あんなやつが何人もいてたまるか。
実を言うと、東雲が金を受け取らなくても問題はない。その場合は、この金を彼女の家に送りつけてやれば良いだけのこと。
それが終わればもうやることはなく、いとも容易く縁は切れるのだ。
少なくともその予定だった……さっきまでは。
(オレがこんなに鈍るなんて)
せっかく突き放したのに、今にも迎えに行ってしまいそうで困る。
(厄介で、面倒だ……)
アカギが窓の外を眺めていると。
暗雲立ち込めるとはこのことか、空はすぐさま黒色に塗りつぶされていった。
空気が変わったかと思えば、窓に水滴が叩きつけられるのなんてすぐのことだった。
はっ、とアカギは鼻で笑う。
東雲は傘を持っていなかった。
アカギはしばらく様子を見ていたが、稲光が空を割ったところで、腰を上げた。
彼女が素直に雨宿りするとは思えない。
雷鳴の轟きが光を追いかけてアカギの元にたどり着く頃には、アカギは既に、なぜか“散歩”に出かける気分になっていた。
もちろん、傘は持たずして。