18.金輪際
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舞美は大した金額も持たないまま、ひとりぼっちになってしまった。ふとポケットに手を入れると、くしゃくしゃになった紙幣が数枚。
つい最近まで自分が手にしていたものを思うと、「こんなもの!」と投げ捨てたくなってしまう。しかしそういうわけにもいかない。もう自分の他に頼れる人はいないのだから。
舞美は電灯もない空き地で止まった。とても静かだ。時計を探すまでもない、空はまだ暗い。まだ電車が発車するような時刻ではなかった。タクシーを捕まえるようなお金もない。
だから、まだ、家には帰れない。
舞美は隣に誰もいない寂しさをじっくりと味わう。何度も、何度も何度も経験しているはずなのに、まだ慣れない。
でも、これからはこれが当たり前になる。
ううん、何を弱気になってるの、と舞美は喝を入れる。なんてことないわ、だって、“元々わたしはずっとひとりだった”。
(そう、わたしはそもそも、ひとりで夜に散歩をするのが好きなただの女の子だったんだよ。)
公園はぬかるんでいた。まだ暗い時間に足を踏み入れるような場所ではない。だったら、と、舞美はかつて自分が好きだった場所に足を踏み入れる。かつての舞美の庭は、どこにだってある。野良猫がいれば、その先は路地裏。
(なつかしい。チキンランの情報を手に入れたのも、アカギを見つけたのも裏道だった)
地元の路地裏とは地理的環境が違っていても、だいたいの構造は見れば分かる。舞美はまるで遊び場ではしゃぐ子供みたく、隙間道を縫って歩いた。こうしてナワバリを広げるのが好きだった。
しかし。
びゅう、と嫌な風が吹いてきて、舞美は恨めしそうに空を見上げた。せっかく、さっき止んだってのに。
気がついてからは早かった。
鷲巣邸であれだけ降っていた、それの続きと言えば分かりやすいだろうか。望まない豪雨の訪れに、舞美は脱力してしまう。
(大事な日にはいつだって、雨が降っている)
舞美は力なく、裏道に出されていた椅子に腰掛ける。申し訳程度に突き出ていた屋根なんて、なんの役にも立たない。激しい滴が服を濡らしていく。史上、もっとも寒い夜。
電車が出るまでここで凌ぐのか。
これだけ降っていて電車はそもそも発車するのか。
ああもう、難しいことなんか考えたくない。
雨とも涙とも分からないそれは、舞美の頬を伝って顎からポタポタと垂れていった。
つい最近まで自分が手にしていたものを思うと、「こんなもの!」と投げ捨てたくなってしまう。しかしそういうわけにもいかない。もう自分の他に頼れる人はいないのだから。
舞美は電灯もない空き地で止まった。とても静かだ。時計を探すまでもない、空はまだ暗い。まだ電車が発車するような時刻ではなかった。タクシーを捕まえるようなお金もない。
だから、まだ、家には帰れない。
舞美は隣に誰もいない寂しさをじっくりと味わう。何度も、何度も何度も経験しているはずなのに、まだ慣れない。
でも、これからはこれが当たり前になる。
ううん、何を弱気になってるの、と舞美は喝を入れる。なんてことないわ、だって、“元々わたしはずっとひとりだった”。
(そう、わたしはそもそも、ひとりで夜に散歩をするのが好きなただの女の子だったんだよ。)
公園はぬかるんでいた。まだ暗い時間に足を踏み入れるような場所ではない。だったら、と、舞美はかつて自分が好きだった場所に足を踏み入れる。かつての舞美の庭は、どこにだってある。野良猫がいれば、その先は路地裏。
(なつかしい。チキンランの情報を手に入れたのも、アカギを見つけたのも裏道だった)
地元の路地裏とは地理的環境が違っていても、だいたいの構造は見れば分かる。舞美はまるで遊び場ではしゃぐ子供みたく、隙間道を縫って歩いた。こうしてナワバリを広げるのが好きだった。
しかし。
びゅう、と嫌な風が吹いてきて、舞美は恨めしそうに空を見上げた。せっかく、さっき止んだってのに。
気がついてからは早かった。
鷲巣邸であれだけ降っていた、それの続きと言えば分かりやすいだろうか。望まない豪雨の訪れに、舞美は脱力してしまう。
(大事な日にはいつだって、雨が降っている)
舞美は力なく、裏道に出されていた椅子に腰掛ける。申し訳程度に突き出ていた屋根なんて、なんの役にも立たない。激しい滴が服を濡らしていく。史上、もっとも寒い夜。
電車が出るまでここで凌ぐのか。
これだけ降っていて電車はそもそも発車するのか。
ああもう、難しいことなんか考えたくない。
雨とも涙とも分からないそれは、舞美の頬を伝って顎からポタポタと垂れていった。