18.金輪際
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アカギはもう、扉を閉めつつある。
彼は舞美との関係を終わらせようとしている。
永遠に。
舞美は咄嗟に、思いついた“答え”を発した。
「死にたかったんじゃなくて、生きたかったの!」
その瞬間、アカギが戸締りをふと止めた。舞美はやっぱり、と思った。アカギが舞美と離れたがる理由は、やっぱり舞美が原因だった。
アカギは昔から、自分の死に関しては寛容だった。それだけでなく、自身の死後に舞美が絶望し、彼女が自ら命を投げ出す可能性も見据えていた。
それでいて彼は、自ら命を賭けたはずなのだ。
舞美は答えをもう一度辿る。
でも、彼には誤算があった。
舞美が自分の意志で死を選ぶのは舞美の勝手だが、舞美が“アカギの死”によって無意識に“死にたい”と感じてしまい、あろうことかアカギの死を直視しないまま、自分を保てずに死ぬなんてことを、アカギは望んでいなかったのだ。
赤木しげるは自分の“意志”や自分そのものを人一倍大切にする人間だった。だからこそアカギにとって、舞美が意志なく死ぬことや、自分が舞美を“殺しかけた”ことを無視できはしない。
そこで玄関の外に追い出された舞美は、アカギが動きを止めている間に言葉を繋いだ。もう一度中に入れて欲しいという一心で。
「だから、わたしは、アカギがいなくなったから死のうとして死んだわけではなくて」
この先を口に出して良いのか分からないが、舞美はもう自分の願いを言うことしかできなかった。
「アカギと——ずっと生きたかったから、それがわたしの夢だから——」
「だから、死ぬの? ……そうは見えなかったね」
舞美は口を開いたまま、固まった。
「オレの言動だけでそこまで辿り着いたのは流石だけど。でも、あの時あんたはショックで倒れたんだ」
そんな素晴らしい理由で倒れたわけじゃない、とアカギは冷たく言った。舞美は首を振る。
「でもわたしは死んでない……! わたしが言いたかったのはそうじゃなくて——」
(そうじゃなくて、アカギと生きたかったから、死ぬこともなく、ちゃんと自分の意志で戻ってこれた)
だから、アカギによって殺されてなどいない。
と訂正したかったのだが。
舞美は、本来言いたかったことと別のことを先に口走ってしまう。
「ううん。わたしはアカギがすきで、アカギもわたしがすき。それだけで、一緒にいていい理由になるはずよ!」
しかし。この発言が、流れを大きく変えてしまう。アカギは言った。
「本当にそう? オレが、あんたをすきだって?」
「……え?」
彼は何を言わんとしているのか。
え、まさか。
大金の入った鞄をもつ手が震えそうになる。
舞美は「アカギ、」と怯えた顔を見せた。
「じゃあ言おうか?」
「アカギ、いや」
「どうやら、あんたには言わなきゃ分からないらしいから」
「やめて、お願い」
「悪いけど。」
舞美は首を振った。
ああ、どこで間違えたんだろう。
「オレは、別にあんたのこと——」
「聞きたくない!」
舞美は叫ぶと、アカギに鞄をぶつけるようにして投げ、涙をこぼしながらその場から走り去った。
どこをどう走ったかなんて分からない。
アカギという人間を間違えていたのはこっちだったのか。
ああ、それでも嫌いになれやしない。
やっぱりアカギって非道い。舞美はそう思って走った。
彼は舞美との関係を終わらせようとしている。
永遠に。
舞美は咄嗟に、思いついた“答え”を発した。
「死にたかったんじゃなくて、生きたかったの!」
その瞬間、アカギが戸締りをふと止めた。舞美はやっぱり、と思った。アカギが舞美と離れたがる理由は、やっぱり舞美が原因だった。
アカギは昔から、自分の死に関しては寛容だった。それだけでなく、自身の死後に舞美が絶望し、彼女が自ら命を投げ出す可能性も見据えていた。
それでいて彼は、自ら命を賭けたはずなのだ。
舞美は答えをもう一度辿る。
でも、彼には誤算があった。
舞美が自分の意志で死を選ぶのは舞美の勝手だが、舞美が“アカギの死”によって無意識に“死にたい”と感じてしまい、あろうことかアカギの死を直視しないまま、自分を保てずに死ぬなんてことを、アカギは望んでいなかったのだ。
赤木しげるは自分の“意志”や自分そのものを人一倍大切にする人間だった。だからこそアカギにとって、舞美が意志なく死ぬことや、自分が舞美を“殺しかけた”ことを無視できはしない。
そこで玄関の外に追い出された舞美は、アカギが動きを止めている間に言葉を繋いだ。もう一度中に入れて欲しいという一心で。
「だから、わたしは、アカギがいなくなったから死のうとして死んだわけではなくて」
この先を口に出して良いのか分からないが、舞美はもう自分の願いを言うことしかできなかった。
「アカギと——ずっと生きたかったから、それがわたしの夢だから——」
「だから、死ぬの? ……そうは見えなかったね」
舞美は口を開いたまま、固まった。
「オレの言動だけでそこまで辿り着いたのは流石だけど。でも、あの時あんたはショックで倒れたんだ」
そんな素晴らしい理由で倒れたわけじゃない、とアカギは冷たく言った。舞美は首を振る。
「でもわたしは死んでない……! わたしが言いたかったのはそうじゃなくて——」
(そうじゃなくて、アカギと生きたかったから、死ぬこともなく、ちゃんと自分の意志で戻ってこれた)
だから、アカギによって殺されてなどいない。
と訂正したかったのだが。
舞美は、本来言いたかったことと別のことを先に口走ってしまう。
「ううん。わたしはアカギがすきで、アカギもわたしがすき。それだけで、一緒にいていい理由になるはずよ!」
しかし。この発言が、流れを大きく変えてしまう。アカギは言った。
「本当にそう? オレが、あんたをすきだって?」
「……え?」
彼は何を言わんとしているのか。
え、まさか。
大金の入った鞄をもつ手が震えそうになる。
舞美は「アカギ、」と怯えた顔を見せた。
「じゃあ言おうか?」
「アカギ、いや」
「どうやら、あんたには言わなきゃ分からないらしいから」
「やめて、お願い」
「悪いけど。」
舞美は首を振った。
ああ、どこで間違えたんだろう。
「オレは、別にあんたのこと——」
「聞きたくない!」
舞美は叫ぶと、アカギに鞄をぶつけるようにして投げ、涙をこぼしながらその場から走り去った。
どこをどう走ったかなんて分からない。
アカギという人間を間違えていたのはこっちだったのか。
ああ、それでも嫌いになれやしない。
やっぱりアカギって非道い。舞美はそう思って走った。