18.金輪際
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「——もう、オレを捜さないで。」
アカギが最後にいつもの声で、それも悲しげにそう言う。それから舞美の肩をトンと押し、扉の向こうへと追いやった。舞美はふらりと彼の思うがままに後ろへ下がっていく。
普段の舞美ならそのまま後退していたかもしれないが、舞美はこれ以上ない違和感を無視できるほどやわくなかった。
(ちがう……何がちがう!)
この扉の向こうに追い出されたら、もう二度とアカギには会えない。捜せない。
それはまずい。
舞美は彼からのキスでとろけそうになった頭をようやく稼働させた。悲しんでる場合じゃない。なんとかしないと。
この一瞬で、何か糸口を。
まず、今のアカギの行動と声色で全てが分かった。そう。まだ東雲舞美はアカギに愛されている。ほぼ間違いないと言っていい。
(アカギは、同情心なんかで女に口づけなんかしない。わたしはまだ好かれてる)
それなのに別れを告げられた。その理由が重要だ。彼は「もう捜すな」と言っている。これはたぶん、大きなヒント。
それから不自然なことがいくつか。
アカギがもし舞美を捨てるなら、朝起きたらいない……といった風にしていくのが後腐れなくて楽なはずだ。赤木しげるという人間にもそちらの方が合っている気がする。わざわざ女を外に締め出すような真似をするはずがない。
もしかすると。アカギは、舞美が「自分の足で」ここから去ることを望んでいる? そう言えばさっきそんなことを口にしていた。そしてその理由はたぶん、アカギがただ女の元から消えるだけではいけない理由と同じだ。つまりそうでないと達成されない目的があったはず。だとしたらその理由はきっと——。
(そうか。わたしが)
舞美が、また「アカギを捜してしまう」からだ。そう。何も言われずに消えられれば、舞美はまた何年もかかって、赤木捜しを始めるだろう。彼がわざわざ自分の手で追い出すことにより、アカギに拒否されたと実感した舞美は、彼を捜すなんてことをしなくなる。だって彼が拒否している以上、それは全く無意味なことだから。
あの雨の日、舞美は一瞬にして、チキンランの勝者をどう引き留めるか考えていた。彼女はその時よりも必死に、多くのことを考えている。
違う違う。と喉をごくりと鳴らす。
一番のヒントはタイミングだ。
なんでこんなタイミングで彼は舞美を捨てようとしているのか。そこに答えはある。
きっと鷲巣麻雀中に何かアカギを決心させる出来事があったに違いない。それはきっと、彼にとって今までに経験したことのないもので。
となると、それは“命を賭ける”といった類のものではない。アカギは以前より命を張ってきたのだから。
じゃあ一体、アカギの心情を大きく変えたものは何か。
血液を失ったのもこれが初めてではないので、それがアカギを変えた原因とは思えない。むしろ、血液を失ったアカギは舞美を本能レベルで欲しがっていた。
それに彼は自分で言っていた。
アカギは、自身の死の訪れを自然なものとして受け入れている。
ここまできたら可能性は絞られる。
そしてようやく、舞美はアカギが自分と別れたがった理由にたどり着けた。
アカギが最後にいつもの声で、それも悲しげにそう言う。それから舞美の肩をトンと押し、扉の向こうへと追いやった。舞美はふらりと彼の思うがままに後ろへ下がっていく。
普段の舞美ならそのまま後退していたかもしれないが、舞美はこれ以上ない違和感を無視できるほどやわくなかった。
(ちがう……何がちがう!)
この扉の向こうに追い出されたら、もう二度とアカギには会えない。捜せない。
それはまずい。
舞美は彼からのキスでとろけそうになった頭をようやく稼働させた。悲しんでる場合じゃない。なんとかしないと。
この一瞬で、何か糸口を。
まず、今のアカギの行動と声色で全てが分かった。そう。まだ東雲舞美はアカギに愛されている。ほぼ間違いないと言っていい。
(アカギは、同情心なんかで女に口づけなんかしない。わたしはまだ好かれてる)
それなのに別れを告げられた。その理由が重要だ。彼は「もう捜すな」と言っている。これはたぶん、大きなヒント。
それから不自然なことがいくつか。
アカギがもし舞美を捨てるなら、朝起きたらいない……といった風にしていくのが後腐れなくて楽なはずだ。赤木しげるという人間にもそちらの方が合っている気がする。わざわざ女を外に締め出すような真似をするはずがない。
もしかすると。アカギは、舞美が「自分の足で」ここから去ることを望んでいる? そう言えばさっきそんなことを口にしていた。そしてその理由はたぶん、アカギがただ女の元から消えるだけではいけない理由と同じだ。つまりそうでないと達成されない目的があったはず。だとしたらその理由はきっと——。
(そうか。わたしが)
舞美が、また「アカギを捜してしまう」からだ。そう。何も言われずに消えられれば、舞美はまた何年もかかって、赤木捜しを始めるだろう。彼がわざわざ自分の手で追い出すことにより、アカギに拒否されたと実感した舞美は、彼を捜すなんてことをしなくなる。だって彼が拒否している以上、それは全く無意味なことだから。
あの雨の日、舞美は一瞬にして、チキンランの勝者をどう引き留めるか考えていた。彼女はその時よりも必死に、多くのことを考えている。
違う違う。と喉をごくりと鳴らす。
一番のヒントはタイミングだ。
なんでこんなタイミングで彼は舞美を捨てようとしているのか。そこに答えはある。
きっと鷲巣麻雀中に何かアカギを決心させる出来事があったに違いない。それはきっと、彼にとって今までに経験したことのないもので。
となると、それは“命を賭ける”といった類のものではない。アカギは以前より命を張ってきたのだから。
じゃあ一体、アカギの心情を大きく変えたものは何か。
血液を失ったのもこれが初めてではないので、それがアカギを変えた原因とは思えない。むしろ、血液を失ったアカギは舞美を本能レベルで欲しがっていた。
それに彼は自分で言っていた。
アカギは、自身の死の訪れを自然なものとして受け入れている。
ここまできたら可能性は絞られる。
そしてようやく、舞美はアカギが自分と別れたがった理由にたどり着けた。