17.海岸線
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「なっ……!」
別れよう、とアカギは発したものの、それはいわゆる男女の別れを表すというより、別々に別れて生きよう、といった意味での言葉に聞こえた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 急に何? わたし何かした?」
冗談でもそんな言葉、聞きたくなかった。
舞美は一旦落ち着こうと首を振る。
「……アカギ、今日はもう寝た方が良いよ。ごめんすぐ気づかなくて。疲れてるんだよね」
笑いかけると、アカギは首を振った。
「あんたがいなくなってからゆっくり寝るよ」
「……え」
瞬間、頭が真っ白になった。
「アカギ、あの、わたし」
「オレは、あんたを置いて消えるなんてことはしない。ちゃんと自分の足で出て行きな」
「……えっ、えっ? わたし、……。わたしただあなたの側にいるだけで……」
「悪いけど、“そういうの”、もうできねえ」
「えっ」
冷たいどころか、急に出ていけなんて。
「ひどい……」
自分にだけは優しくしてくれてると思ったのに。勝負の熱が冷めたと同時に、舞美への気持ちも無くなったのか。それとも、気持ちなんてとっくになくて、これほどの大金を得るまでは舞美を追い出せなかったのか。
急に態度が変わったわけじゃなくて、元々舞美への気持ちなんてなかったのか。もう、そうとしか考えられなくなってきた。
「アカギの嘘つき……。あなた、わたしのことオレの女だ、ってさっき……」
舞美はアカギを軽く睨んだが、それでもやっぱり赤木しげるが好きで仕方がないので、憎みきれず、それどころか大人しく彼の言うことに従うことしかできなかった。これだけの金を出され、アカギから「出て行け」と言われれば、もう他の選択肢など選びようがない。
舞美も極限状態を切り抜けてきた直後だった。そんな人間に、冷静な判断は下せない。既に軽いパニック状態に陥っていた。
ここで泣き喚いてますますアカギに嫌われるくらいなら、もう、綺麗に出て行って、それから——。
「アカギが優しくするから、わたしはもう捨てられないんだ、って……勘違いしちゃったじゃない」
舞美は鞄を引っ掴んだ。
アカギに冷たくされることが耐えられず、あとはもう衝動的に動いていた。
本当は出て行きたくなんかないのに。
舞美は外へ続く扉の前でアカギの方を向き、最後は綺麗に終わろうと思って、今までありがとうだの、なんだの言おうとしたのだが。
アカギが冷淡な目のままスタスタとこちらへやってきて、舞美を威圧する。
「……アカギ」
あまりの悲しさに眉を下げると、アカギは素早くこちらへ体を寄せ、驚く舞美の顔を両手で固定した。
「なっ、」
アカギの顔を間近で見ることになった舞美は今まで通り彼に見とれ、その一瞬だけは今の状況を忘れることができた。
そして、目の前のアカギは、
「オレもあんたも、馬鹿なんだ」
と呟いてから、強引に舞美の唇を奪った。
17.海岸線〈完〉
別れよう、とアカギは発したものの、それはいわゆる男女の別れを表すというより、別々に別れて生きよう、といった意味での言葉に聞こえた。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 急に何? わたし何かした?」
冗談でもそんな言葉、聞きたくなかった。
舞美は一旦落ち着こうと首を振る。
「……アカギ、今日はもう寝た方が良いよ。ごめんすぐ気づかなくて。疲れてるんだよね」
笑いかけると、アカギは首を振った。
「あんたがいなくなってからゆっくり寝るよ」
「……え」
瞬間、頭が真っ白になった。
「アカギ、あの、わたし」
「オレは、あんたを置いて消えるなんてことはしない。ちゃんと自分の足で出て行きな」
「……えっ、えっ? わたし、……。わたしただあなたの側にいるだけで……」
「悪いけど、“そういうの”、もうできねえ」
「えっ」
冷たいどころか、急に出ていけなんて。
「ひどい……」
自分にだけは優しくしてくれてると思ったのに。勝負の熱が冷めたと同時に、舞美への気持ちも無くなったのか。それとも、気持ちなんてとっくになくて、これほどの大金を得るまでは舞美を追い出せなかったのか。
急に態度が変わったわけじゃなくて、元々舞美への気持ちなんてなかったのか。もう、そうとしか考えられなくなってきた。
「アカギの嘘つき……。あなた、わたしのことオレの女だ、ってさっき……」
舞美はアカギを軽く睨んだが、それでもやっぱり赤木しげるが好きで仕方がないので、憎みきれず、それどころか大人しく彼の言うことに従うことしかできなかった。これだけの金を出され、アカギから「出て行け」と言われれば、もう他の選択肢など選びようがない。
舞美も極限状態を切り抜けてきた直後だった。そんな人間に、冷静な判断は下せない。既に軽いパニック状態に陥っていた。
ここで泣き喚いてますますアカギに嫌われるくらいなら、もう、綺麗に出て行って、それから——。
「アカギが優しくするから、わたしはもう捨てられないんだ、って……勘違いしちゃったじゃない」
舞美は鞄を引っ掴んだ。
アカギに冷たくされることが耐えられず、あとはもう衝動的に動いていた。
本当は出て行きたくなんかないのに。
舞美は外へ続く扉の前でアカギの方を向き、最後は綺麗に終わろうと思って、今までありがとうだの、なんだの言おうとしたのだが。
アカギが冷淡な目のままスタスタとこちらへやってきて、舞美を威圧する。
「……アカギ」
あまりの悲しさに眉を下げると、アカギは素早くこちらへ体を寄せ、驚く舞美の顔を両手で固定した。
「なっ、」
アカギの顔を間近で見ることになった舞美は今まで通り彼に見とれ、その一瞬だけは今の状況を忘れることができた。
そして、目の前のアカギは、
「オレもあんたも、馬鹿なんだ」
と呟いてから、強引に舞美の唇を奪った。
17.海岸線〈完〉