2.目覚め
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……なら、嬢ちゃん。おまえは向こうに行ってな」
矢木は舞美を見て言った。
「向こう?」
「赤木が言うには、これはオレと赤木の勝負らしい。つまり嬢ちゃんには関係ないんだろ。だったら、向こうの部屋にでも行きな」
「えっ……」
アカギの隣にいられなくなるなんて嫌で、舞美はアカギを見た。彼は何も言わずにこくんと頷く。
そこで、舞美はアカギを信じてその場を離れることにした。
というのも、これは元々南郷対竜崎の闘いだったところに互いに代打ちを立てた結果、現在アカギ対矢木になっているというもの。そしてそこに赤木を追う刑事が来たという状態。つまりこの中で舞美だけが唯一の傍観者だったのだ。それなのに図々しく居座ることはできない。
「アカギ、勝手に負けないでね」
言うと、アカギはにやっと笑った。
「ま、“がんばる” よ」
舞美は応えるように頷いて、先ほどまで竜崎が籠っていた部屋に入る。中は暖かかったが、それは舞美の求めていたものではない。
そんなことよりアカギと一緒にいたかった。
飲み物を手に取り、とりあえず時間が過ぎるのを待つ。チクタクと時計がうるさい。
今、アカギは矢木に勝っているだろうか?
それとも、苦戦しているだろうか?
様々な思いがめぐり、舞美はある結論にたどり着く。
——もしかして、矢木はイカサマをするためにわたしを追い出したんじゃないの?
ぞっとした舞美は、自分の論理に破綻がないか思考をもう一度辿ってみた。
まず、矢木はプロの代打ちなんだから、卓の後ろにいるだけの南郷や刑事に見られないようなイカサマを仕掛けることは、可能であるはずだ。
そんなことは慣れているだろうし、周りには味方もいるのだから、目隠しだってできる。
では、舞美に対してはどうだろうか。
普通なら、麻雀を打っている者の隣に誰かが座ることなど滅多にない。だからそんな状況に矢木は慣れているはずもない。舞美にはイカサマを見られてしまう危険性があった。
舞美がいるとイカサマができない。
だから追い出された。
「しまった」
もう少し粘れば良かったのか、と後悔する。
しかし、今更戻ることもできない。
舞美はただアカギを案じた。
それでも、きっとアカギならなんとかするだろう。
そう信じるしかない。
それから少し時間が経過した。
もともとこの部屋は仮眠室。
することもない舞美が布団にくるまることは、何もおかしいことではない。そうなると、こんな時間まで神経をとがらせ続けた少女がうとうとし出すのも無理はなかった。
舞美は、まるでひとりぼっちにされたことに拗ねているかのように、そこで眠りこける。
彼女が目覚めたのは、夜明け前のことだった。
矢木は舞美を見て言った。
「向こう?」
「赤木が言うには、これはオレと赤木の勝負らしい。つまり嬢ちゃんには関係ないんだろ。だったら、向こうの部屋にでも行きな」
「えっ……」
アカギの隣にいられなくなるなんて嫌で、舞美はアカギを見た。彼は何も言わずにこくんと頷く。
そこで、舞美はアカギを信じてその場を離れることにした。
というのも、これは元々南郷対竜崎の闘いだったところに互いに代打ちを立てた結果、現在アカギ対矢木になっているというもの。そしてそこに赤木を追う刑事が来たという状態。つまりこの中で舞美だけが唯一の傍観者だったのだ。それなのに図々しく居座ることはできない。
「アカギ、勝手に負けないでね」
言うと、アカギはにやっと笑った。
「ま、“がんばる” よ」
舞美は応えるように頷いて、先ほどまで竜崎が籠っていた部屋に入る。中は暖かかったが、それは舞美の求めていたものではない。
そんなことよりアカギと一緒にいたかった。
飲み物を手に取り、とりあえず時間が過ぎるのを待つ。チクタクと時計がうるさい。
今、アカギは矢木に勝っているだろうか?
それとも、苦戦しているだろうか?
様々な思いがめぐり、舞美はある結論にたどり着く。
——もしかして、矢木はイカサマをするためにわたしを追い出したんじゃないの?
ぞっとした舞美は、自分の論理に破綻がないか思考をもう一度辿ってみた。
まず、矢木はプロの代打ちなんだから、卓の後ろにいるだけの南郷や刑事に見られないようなイカサマを仕掛けることは、可能であるはずだ。
そんなことは慣れているだろうし、周りには味方もいるのだから、目隠しだってできる。
では、舞美に対してはどうだろうか。
普通なら、麻雀を打っている者の隣に誰かが座ることなど滅多にない。だからそんな状況に矢木は慣れているはずもない。舞美にはイカサマを見られてしまう危険性があった。
舞美がいるとイカサマができない。
だから追い出された。
「しまった」
もう少し粘れば良かったのか、と後悔する。
しかし、今更戻ることもできない。
舞美はただアカギを案じた。
それでも、きっとアカギならなんとかするだろう。
そう信じるしかない。
それから少し時間が経過した。
もともとこの部屋は仮眠室。
することもない舞美が布団にくるまることは、何もおかしいことではない。そうなると、こんな時間まで神経をとがらせ続けた少女がうとうとし出すのも無理はなかった。
舞美は、まるでひとりぼっちにされたことに拗ねているかのように、そこで眠りこける。
彼女が目覚めたのは、夜明け前のことだった。