17.海岸線
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舞美は海の底よりも少し上に漂っていた。
これは幻想か、それともこんなものが走馬灯なのか。
目を凝らせば深海魚が水の中を泳いでいるのが見える。
そう言えばアカギは深海魚にも喩えられていたんだった。
アカギに会いたい。
そう思って舞美が目線を下げた瞬間、この空間にもう1人の人間がいることに気がつく。
「あ、えっ……?」
海の底に横たえられたその青年。舞美はあまりのことに喉が詰まってしまう。これが自分の見せる幻なら本当にタチが悪い。彼の隣には白骨も同じように横たわっていた。
「アカギ!」
彼の隣に移動したいけれど、この先には行けないようだった。舞美はこれ以上、下へは沈めない。深く重い事実がのしかかり、息が苦しくなる。
「ねえ……!」
舞美が呼びかけても、アカギはそちらを見ようともしない。彼の目はどこかずっと先を映している。
「わたしのこと、見えないの……?」
無性に哀しくなった。自分は彼と同じ場所にいると思っても、住んでいる世界はまるで違う。どうあがいても彼ほど深いところへは行けない。こちらからは見つめることしかできない。2人は決して、交わらない。そんな残酷な事実を、わざわざ死に際に教えにきたというのか。
「ひどいったらない」
かといって海を恨むのはお門違いだ。舞美の怒りの矛先はどこにも向かない。ただ哀しみだけが胸に溜まっていく。この哀しみはアカギによってしか打ち払えない。
それが無理となれば、アカギなど諦めて、きっぱり忘れてしまうのが合理的だ。
(でも)
それでも舞美はアカギに惚れているから、例え自分がここで異形の魚に変えられようとも、アカギを見つめ続けるに違いない。この先、彼が一切こちらを見ようとしなくても。
「アカギ、それでもわたしあなたのこと好きなの」
ぽろっと漏らすと、海底でアカギがぴくりと動いた。それから目を少しだけ見開いて、「東雲?」と言葉を発した。その声ははっきりと舞美の耳に届く。
「え」
「……あんた、どこにいるの」
相変わらず、見えてはいないようだが。
「あ、アカギ⁈ わたしは、ここに……!」
急に言葉が聞こえるようになったらしい。
そして舞美はその意味がなんとなく分かった。それから嬉しくなった。というのも、彼女はその仕組みを理解できたからだ。
別世界の人に自分の存在を気づかせる為には、相手に「好き」だと想いを伝えることが必要であると。そして相手が振り向いてさえくれれば、きっと願いは叶えられる。
「アカギ。こっちに来て……」
舞美は深くに行けなくても、アカギはこちら側へ浮遊してこれるだろう。もうこのアカギが幻だろうが関係ない。とにかくこちらへ来てほしい。
舞美はその一心で彼を呼んだ。
これは幻想か、それともこんなものが走馬灯なのか。
目を凝らせば深海魚が水の中を泳いでいるのが見える。
そう言えばアカギは深海魚にも喩えられていたんだった。
アカギに会いたい。
そう思って舞美が目線を下げた瞬間、この空間にもう1人の人間がいることに気がつく。
「あ、えっ……?」
海の底に横たえられたその青年。舞美はあまりのことに喉が詰まってしまう。これが自分の見せる幻なら本当にタチが悪い。彼の隣には白骨も同じように横たわっていた。
「アカギ!」
彼の隣に移動したいけれど、この先には行けないようだった。舞美はこれ以上、下へは沈めない。深く重い事実がのしかかり、息が苦しくなる。
「ねえ……!」
舞美が呼びかけても、アカギはそちらを見ようともしない。彼の目はどこかずっと先を映している。
「わたしのこと、見えないの……?」
無性に哀しくなった。自分は彼と同じ場所にいると思っても、住んでいる世界はまるで違う。どうあがいても彼ほど深いところへは行けない。こちらからは見つめることしかできない。2人は決して、交わらない。そんな残酷な事実を、わざわざ死に際に教えにきたというのか。
「ひどいったらない」
かといって海を恨むのはお門違いだ。舞美の怒りの矛先はどこにも向かない。ただ哀しみだけが胸に溜まっていく。この哀しみはアカギによってしか打ち払えない。
それが無理となれば、アカギなど諦めて、きっぱり忘れてしまうのが合理的だ。
(でも)
それでも舞美はアカギに惚れているから、例え自分がここで異形の魚に変えられようとも、アカギを見つめ続けるに違いない。この先、彼が一切こちらを見ようとしなくても。
「アカギ、それでもわたしあなたのこと好きなの」
ぽろっと漏らすと、海底でアカギがぴくりと動いた。それから目を少しだけ見開いて、「東雲?」と言葉を発した。その声ははっきりと舞美の耳に届く。
「え」
「……あんた、どこにいるの」
相変わらず、見えてはいないようだが。
「あ、アカギ⁈ わたしは、ここに……!」
急に言葉が聞こえるようになったらしい。
そして舞美はその意味がなんとなく分かった。それから嬉しくなった。というのも、彼女はその仕組みを理解できたからだ。
別世界の人に自分の存在を気づかせる為には、相手に「好き」だと想いを伝えることが必要であると。そして相手が振り向いてさえくれれば、きっと願いは叶えられる。
「アカギ。こっちに来て……」
舞美は深くに行けなくても、アカギはこちら側へ浮遊してこれるだろう。もうこのアカギが幻だろうが関係ない。とにかくこちらへ来てほしい。
舞美はその一心で彼を呼んだ。