15.一辺倒
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案外、序盤は静かに進んでいった。とりあえず差し込み。これなら安全に思えるが。
が。アカギは黙ってそれに甘んじる男ではない。やはりと言うべきか、急に危険牌と思われるものを強打していった。仰木の咎めるような視線にも屈せず、ただただ我が道をゆく。
通る……また通った。凄い。流石だ。
「なかなかやりおるの。第2の河に気付くとは」
鷲巣は余裕そうにアカギを褒めた。
舞美には一瞬、なんのことか分からない。
が、目線を変えてようやく分かった。
鈴木の持っている牌をアカギは切り飛ばしているだけのことなのだ。そしてそれは鷲巣が立直を掛けない理由とも結びつく。
(それさえも罠だったら、っていう可能性、アカギにもすぐ思いついたはずなのに……。そんなことはないって、決め打ってるんだ)
常人技じゃない。ああ、これだ。
アカギが赤木たる所以は、この博徒魂にある。
(勝てる。危険牌を切ってまでテンパイしてるんだから)
と、思った刹那。
対面からまさかの「ツモ」の声。
しかも手を見ると、満貫。
え? といった表情が出てしまったかもしれない。ああ、そうか……ツモならアカギにもどうしようもない、けれど。
「最善を尽くしてなお死ぬ……。死ぬ時は、どう抗っても死するが麻雀。そうだろう、アカギ」
舞美は頭の中で計算する。これで鷲巣とは、14000差……。まずい。この麻雀で直撃はほとんど取れないと言っていいんだから、この点差を埋めるのは相当きつい。鷲巣を上回れなかった時点でアカギの死が決定してしまう。
そして。
「ボーナス払いの時間だ……」
鷲巣が言うと、舞美の目の前に置かれた注射器ポンプが動き出した。舞美は目を見開く。
「一気に400cc……!」
2000cc、いや、1500ccでほとんど死ぬというのに、この序盤で400cc。それも、アカギがミスをしたわけでもなく、ただツモられただけ。
すぐそばの注射器にアカギの赤い血が貯まっていく。目が離せない。アカギの流血は何度か見たことがあるけれど、この量は……。
「あ、アカギ」
珍しくうろたえる舞美に、アカギは冷たい視線を向けた。
「なにを騒いでるの。東雲、あんたが」
「……あ、そう、よね。ごめんなさい」
だって、アカギが強いのと、相手がツモるのと関係がないから。あとこれを何回かやられてしまえばアカギが死ぬと考えると……。
(でも、アカギは死にたくないなんて考えていないんだ)
どうしてか、この状況下でもアカギは少し笑っているように見える。やっぱり、これこそが彼の望んだ勝負そのものなんだ、と舞美は思った。そう思うと、精神が安定してきた。
「ここからが本番だ」
重苦しい空気の中、南入する鷲巣麻雀。
精神が安定してくると、舞美はぞくぞくといつもの興奮を思い出してきた。大好きな人が血を抜かれて死にかける経験、他の女の子には一生できない。わたしだけが特別。
なにを平凡ぶって、たかが400ccでアカギを心配したのだろう。そんなこと勝負する前から覚悟していたことだ。アカギもそれが分かっていたから、慌てる舞美を冷たい目で見たのではないか。いつものあんたはどこへ行ったの、と。
そう、舞美は地獄の底までアカギと共にすることを誓った唯一の女。
もう後は、何が起ころうと関係ない。
そこから先、舞美は特段アカギに話しかけることなく、後ろから彼の勇姿を眺めるだけだった。そしてそんな空気の中、アカギはそれに満足しているようでもあった。
が。アカギは黙ってそれに甘んじる男ではない。やはりと言うべきか、急に危険牌と思われるものを強打していった。仰木の咎めるような視線にも屈せず、ただただ我が道をゆく。
通る……また通った。凄い。流石だ。
「なかなかやりおるの。第2の河に気付くとは」
鷲巣は余裕そうにアカギを褒めた。
舞美には一瞬、なんのことか分からない。
が、目線を変えてようやく分かった。
鈴木の持っている牌をアカギは切り飛ばしているだけのことなのだ。そしてそれは鷲巣が立直を掛けない理由とも結びつく。
(それさえも罠だったら、っていう可能性、アカギにもすぐ思いついたはずなのに……。そんなことはないって、決め打ってるんだ)
常人技じゃない。ああ、これだ。
アカギが赤木たる所以は、この博徒魂にある。
(勝てる。危険牌を切ってまでテンパイしてるんだから)
と、思った刹那。
対面からまさかの「ツモ」の声。
しかも手を見ると、満貫。
え? といった表情が出てしまったかもしれない。ああ、そうか……ツモならアカギにもどうしようもない、けれど。
「最善を尽くしてなお死ぬ……。死ぬ時は、どう抗っても死するが麻雀。そうだろう、アカギ」
舞美は頭の中で計算する。これで鷲巣とは、14000差……。まずい。この麻雀で直撃はほとんど取れないと言っていいんだから、この点差を埋めるのは相当きつい。鷲巣を上回れなかった時点でアカギの死が決定してしまう。
そして。
「ボーナス払いの時間だ……」
鷲巣が言うと、舞美の目の前に置かれた注射器ポンプが動き出した。舞美は目を見開く。
「一気に400cc……!」
2000cc、いや、1500ccでほとんど死ぬというのに、この序盤で400cc。それも、アカギがミスをしたわけでもなく、ただツモられただけ。
すぐそばの注射器にアカギの赤い血が貯まっていく。目が離せない。アカギの流血は何度か見たことがあるけれど、この量は……。
「あ、アカギ」
珍しくうろたえる舞美に、アカギは冷たい視線を向けた。
「なにを騒いでるの。東雲、あんたが」
「……あ、そう、よね。ごめんなさい」
だって、アカギが強いのと、相手がツモるのと関係がないから。あとこれを何回かやられてしまえばアカギが死ぬと考えると……。
(でも、アカギは死にたくないなんて考えていないんだ)
どうしてか、この状況下でもアカギは少し笑っているように見える。やっぱり、これこそが彼の望んだ勝負そのものなんだ、と舞美は思った。そう思うと、精神が安定してきた。
「ここからが本番だ」
重苦しい空気の中、南入する鷲巣麻雀。
精神が安定してくると、舞美はぞくぞくといつもの興奮を思い出してきた。大好きな人が血を抜かれて死にかける経験、他の女の子には一生できない。わたしだけが特別。
なにを平凡ぶって、たかが400ccでアカギを心配したのだろう。そんなこと勝負する前から覚悟していたことだ。アカギもそれが分かっていたから、慌てる舞美を冷たい目で見たのではないか。いつものあんたはどこへ行ったの、と。
そう、舞美は地獄の底までアカギと共にすることを誓った唯一の女。
もう後は、何が起ころうと関係ない。
そこから先、舞美は特段アカギに話しかけることなく、後ろから彼の勇姿を眺めるだけだった。そしてそんな空気の中、アカギはそれに満足しているようでもあった。