15.一辺倒
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「なんだこのガキは⁉︎ 誰に口を利いている? おい! おまえが説明しろ。わしが誰であるか」
流石に腹を立てた鷲巣は、杖を手にとり、アカギにその先を向けたので、舞美はアカギが殴られやしないかと心配に思った。
彼の完璧な顔に傷でもついてしまったら……!
いや、そうなったら傷まで愛すだろうが。
「そして、この勝負が遊びではないことを!」
アカギの顎の下に杖を滑らせ、鷲巣はアカギの顔をくいと上に向けた。彼は抵抗することもなく、その先を見据えている。
すぐに、官能的だな、と思ってしまったのを反省する。
すると、今度は仰木が言った。
「アカギの無礼な口の利き方は謝ります。がしかし、今夜の勝負を誤解なさっているのは、鷲巣様のようです」
「……誤解?」
「そうです」
仰木はアカギを鷲巣殺しの刺客と表現し、今や鷲巣の財産が雀の涙とまで豪語しながら、10倍レートを受けるよう強く主張した。その間アカギは透明になっている五萬を弄んでいる。
とうとう鷲巣は激昂し、杖を叩き割った。鷲巣とアカギは自らの破滅を賭けていながら、仰木は何も賭けずに高みの見物だというのが許せないようだ。
(それは、わたしにも言える……の?)
鷲巣は何か思いついたかのように、急ににやりと笑みを浮かべた。これほど悪い顔は見たことがない。そして彼は驚きの言葉を口にする。
「腕だ。おまえは腕を賭けろ」
ぞくりと背中に寒気が走った。アカギも「腕一本」と発したことがある。この2人、やはりどこか共通する部分があるのだ。
「アカギが絶命した瞬間に、おまえは腕を落とすのだ」
凍った空気の中、「かまいません」と太い声が聞こえた。アカギは静かに口元を上げる。
続いて、部下に「金を用意しろ」と言う声。鷲巣は10倍レートの勝負を受け入れたのだ。
しかしなんだかんだ、白服が「保険は必要」などと言い出し、半荘2回で続行するかやめるかの決定権を鷲巣がもつように要求してきた。
舞美はアカギたちと共に席を外し、作戦会議に参加する。
「ああ言ってるが……どうするんだ?」
アカギは煙草をくわえ、ライターで火をつけた。それからその様子をじっと見つめる舞美に目をやり、ふうと息を吐いてから笑った。
「どうもこうもない。多分同じこと。」
「同じ……⁉︎」
「一回勝負が始まっちまえば、やめられっこない。行くとこまで行く」
心配するどころか、フフ、と鼻で笑うアカギ。
「まるで無駄な取り決め。いや、むしろ逆」
「逆?」
「首が絞まった。鷲巣にとって、この特例は墓穴。自ら勝ちの目を摘む、暴挙」
ぼうきょ?
気がつけば、アカギの語尾の単語を反復してしまった。今の自分はとても頭が悪そうだっただろうな、と舞美は少しだけ赤くなる。
もうアカギの考えていることが分からない。
「フフフ……久々に見たな、あんたがそんな不思議そうな顔するの」
「わたし、他の人よりはアカギのこと理解 ってるって思ってたんだけどね……」
「ま。それも強ち、間違いじゃねぇだろ」
「え……?」
「オレがこれだけ一緒に長くいたの、あんただけだぜ」
ふっと煙を遊ばせて、アカギは舞美に微笑む。
「オレの後ろは、あんたの指定席だ」
流石に腹を立てた鷲巣は、杖を手にとり、アカギにその先を向けたので、舞美はアカギが殴られやしないかと心配に思った。
彼の完璧な顔に傷でもついてしまったら……!
いや、そうなったら傷まで愛すだろうが。
「そして、この勝負が遊びではないことを!」
アカギの顎の下に杖を滑らせ、鷲巣はアカギの顔をくいと上に向けた。彼は抵抗することもなく、その先を見据えている。
すぐに、官能的だな、と思ってしまったのを反省する。
すると、今度は仰木が言った。
「アカギの無礼な口の利き方は謝ります。がしかし、今夜の勝負を誤解なさっているのは、鷲巣様のようです」
「……誤解?」
「そうです」
仰木はアカギを鷲巣殺しの刺客と表現し、今や鷲巣の財産が雀の涙とまで豪語しながら、10倍レートを受けるよう強く主張した。その間アカギは透明になっている五萬を弄んでいる。
とうとう鷲巣は激昂し、杖を叩き割った。鷲巣とアカギは自らの破滅を賭けていながら、仰木は何も賭けずに高みの見物だというのが許せないようだ。
(それは、わたしにも言える……の?)
鷲巣は何か思いついたかのように、急ににやりと笑みを浮かべた。これほど悪い顔は見たことがない。そして彼は驚きの言葉を口にする。
「腕だ。おまえは腕を賭けろ」
ぞくりと背中に寒気が走った。アカギも「腕一本」と発したことがある。この2人、やはりどこか共通する部分があるのだ。
「アカギが絶命した瞬間に、おまえは腕を落とすのだ」
凍った空気の中、「かまいません」と太い声が聞こえた。アカギは静かに口元を上げる。
続いて、部下に「金を用意しろ」と言う声。鷲巣は10倍レートの勝負を受け入れたのだ。
しかしなんだかんだ、白服が「保険は必要」などと言い出し、半荘2回で続行するかやめるかの決定権を鷲巣がもつように要求してきた。
舞美はアカギたちと共に席を外し、作戦会議に参加する。
「ああ言ってるが……どうするんだ?」
アカギは煙草をくわえ、ライターで火をつけた。それからその様子をじっと見つめる舞美に目をやり、ふうと息を吐いてから笑った。
「どうもこうもない。多分同じこと。」
「同じ……⁉︎」
「一回勝負が始まっちまえば、やめられっこない。行くとこまで行く」
心配するどころか、フフ、と鼻で笑うアカギ。
「まるで無駄な取り決め。いや、むしろ逆」
「逆?」
「首が絞まった。鷲巣にとって、この特例は墓穴。自ら勝ちの目を摘む、暴挙」
ぼうきょ?
気がつけば、アカギの語尾の単語を反復してしまった。今の自分はとても頭が悪そうだっただろうな、と舞美は少しだけ赤くなる。
もうアカギの考えていることが分からない。
「フフフ……久々に見たな、あんたがそんな不思議そうな顔するの」
「わたし、他の人よりはアカギのこと
「ま。それも強ち、間違いじゃねぇだろ」
「え……?」
「オレがこれだけ一緒に長くいたの、あんただけだぜ」
ふっと煙を遊ばせて、アカギは舞美に微笑む。
「オレの後ろは、あんたの指定席だ」