14.新天地*
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アカギは勝負を承諾し、安岡と仰木は席を外す。それからしばらくして、舞美の目に涙が浮かんだ。平山が死んだことに対して、自分は思っていたよりもショックを受けていたらしい。
「……泣いてるの」
アカギが顔を覗き込むので、舞美は「泣いてない」、と目を擦った。
「でも、泣きそうな顔してる」
「……だって」
正直、最初は、嬉しい面もあった。新しい、大きな、今までとは違った勝負の話が舞い込んできたこと。
アカギの活躍を思うと、興奮する節がないわけじゃない。
それなのに、平山幸雄はもういないと聞くと、勝負は別として、悲しいという気持ちに感情を支配される。平山とは酒も酌み交わした仲だった。特別な気持ちこそなかったが、アカギの偽者を務めていた彼の、“アカギじゃない”時の姿は悪くなかったと思う。
若者が殺されたと聞いた時は、「可哀想」とは思えど、そこまで「悲しみ」には蝕まれなかったというのに。
(わたし……)
心情を察したのか、アカギは「おいで」とベッドの掛け布団を上げる。
舞美は素直にアカギの隣に座り、足を布団に入れ、頭 を垂れた。
アカギは何も言わないまま、舞美を片腕で抱き寄せ、ただただ体温を共有してくれる。
舞美はアカギの胸を借り、彼の優しさに溶かされて、一粒だけ涙を零した。アカギは舞美が心に仕舞い損ねたその液体を、割れ物でも扱うかのように、そっと指ですくってやる。
これ以上、アカギの前で泣きたくない。
舞美は今の気持ちを消してもらいたくて、アカギに顔を近づけ目を閉じた。
もちろん、アカギはそれに応えてくれる。
まず頰に片手を添えられ、それからゆっくり近づかれる。だからいつもよりも鼻先を触れ合わせる時間が長く、じれったく、くすぐったい。けれど、愛されているのがよく分かるこの時間が好きでもある。目を閉じているから彼の気配がよく感じ取れるし。
彼は両手でこちらの顔を挟むようにして、ゆっくりと唇を重ねた。
舌は入れずに、ただお互いを押し付けあうだけ。
密着していると、じんわりと熱をもってきた。
アカギは怪我人なので強く抱きしめることができないけれど。
それでも、いくらか気分は良くなった。
全部、アカギのおかげ。
慰めのキスなんてものは初めてだった。
もう泣くものか、と舞美は涙を封印する。
次は平山の仇との勝負。
悲しんでいるようではきっと彼と同じ側になってしまう。
「……勝ってね、アカギ」
舞美は心から、彼の勝利を願う。
かつてないほど、強く強く。
「……泣いてるの」
アカギが顔を覗き込むので、舞美は「泣いてない」、と目を擦った。
「でも、泣きそうな顔してる」
「……だって」
正直、最初は、嬉しい面もあった。新しい、大きな、今までとは違った勝負の話が舞い込んできたこと。
アカギの活躍を思うと、興奮する節がないわけじゃない。
それなのに、平山幸雄はもういないと聞くと、勝負は別として、悲しいという気持ちに感情を支配される。平山とは酒も酌み交わした仲だった。特別な気持ちこそなかったが、アカギの偽者を務めていた彼の、“アカギじゃない”時の姿は悪くなかったと思う。
若者が殺されたと聞いた時は、「可哀想」とは思えど、そこまで「悲しみ」には蝕まれなかったというのに。
(わたし……)
心情を察したのか、アカギは「おいで」とベッドの掛け布団を上げる。
舞美は素直にアカギの隣に座り、足を布団に入れ、
アカギは何も言わないまま、舞美を片腕で抱き寄せ、ただただ体温を共有してくれる。
舞美はアカギの胸を借り、彼の優しさに溶かされて、一粒だけ涙を零した。アカギは舞美が心に仕舞い損ねたその液体を、割れ物でも扱うかのように、そっと指ですくってやる。
これ以上、アカギの前で泣きたくない。
舞美は今の気持ちを消してもらいたくて、アカギに顔を近づけ目を閉じた。
もちろん、アカギはそれに応えてくれる。
まず頰に片手を添えられ、それからゆっくり近づかれる。だからいつもよりも鼻先を触れ合わせる時間が長く、じれったく、くすぐったい。けれど、愛されているのがよく分かるこの時間が好きでもある。目を閉じているから彼の気配がよく感じ取れるし。
彼は両手でこちらの顔を挟むようにして、ゆっくりと唇を重ねた。
舌は入れずに、ただお互いを押し付けあうだけ。
密着していると、じんわりと熱をもってきた。
アカギは怪我人なので強く抱きしめることができないけれど。
それでも、いくらか気分は良くなった。
全部、アカギのおかげ。
慰めのキスなんてものは初めてだった。
もう泣くものか、と舞美は涙を封印する。
次は平山の仇との勝負。
悲しんでいるようではきっと彼と同じ側になってしまう。
「……勝ってね、アカギ」
舞美は心から、彼の勝利を願う。
かつてないほど、強く強く。